校内で噂の男子生徒が毎日「おなら」が止まらなかった話
学生時代が苦い思い出、などというのはよくある話だと思います。
僕の辛くて苦い、ちょっと例を見ない思い出をお話しさせていただきます。
僕は毎朝5時に起床し朝ごはんを食べ、7時半に家を出てバスと電車で一時間かけて学校に通っていました。
まだ入る部活も決まっておらず、あれにしようこれにしようと悩みましたが結局地味な美術部。これといって部活も楽しくなく、一週間としないうちに行かなくなってしまいました。
一緒に登校する友達がいなくても中学時代に比べたら、毎日いじめてくる人がいないというだけで充分幸せでした。
そんなある日校門の前を通りかかった時、知らない女子生徒が複数で
「ねぇ、あの人!あの人!」とこっちを指さして笑っていたのですが、その時は心当たりもなかったので気にもしませんでした。
その後2か月は本当にただ学校に行って、授業だけ受けて帰ってくる毎日でした。
でも僕にとっては充分に幸せでした。
高校最初の夏休みを迎えようという頃、文化祭の決め事でクラスは一段と盛り上がっていました。
僕は足が遅かったので、走る競技以外なら何でもと思いクラス委員に任せっきりでした。
そんな時、クラス委員の男子が突然「お前らいい加減にしろよ、俺に何でもかんでもやらせやがって。」と大声で言い放ち、咄嗟のことで僕は動揺してしまいすぐに謝りました。
「ごめん、僕が何にもしなかったから…」
そうすると「ああ、○○君のことじゃないよ大丈夫」と言われ最初はよくわからなかったのですが、どうやら仲良かった男子グループと喧嘩してただけだったようでした。
そんな状態でクラスの雰囲気は最悪な中、幸いにも夏休みに入りました。
部活には行かなかった身でしたが文化祭の準備のため、クラス委員の喧嘩のことも気になって夏休みも何日か行きました。
今まで僕に喋りかけて来る人なんていなかったですが、どうやら僕は上手いこと中立的な立場だったようで夏休みに入ってからは急にクラスメイトに喋りかけられるようになりました。
特に先ほどのクラス委員の男子は喧嘩で一人孤立していたらしく、その内プライベートでも遊ぶよう誘われたりするほど仲良くなりました。
僕も久しく友達という友達が出来たので、学校がより一層楽しくなっていきました。
ですが実はそのクラス委員が結構なヤンキー、勧められたのは喫煙だけでしたが。
元々胃腸が弱かった僕にとって、喫煙は非常に大きく影響しました。
一時はどうなることかと心配した文化祭でしたが、まぁまぁな結果で気分良く終われました。
ですがその帰り道、突然お腹が痛くなったり鳴りだしたりし出しました。
よくよく考えたら、もう1か月ほど通じが来ていません。
まぁ数日来ないことはよくあったし、大丈夫だろうと思っていました。
その翌週、文化祭の浮かれムードが漂っている授業中、突然違和感を感じました。
何だか多くの目線を感じるというか、僕の方を見てみんなが笑っているような雰囲気がしました。
何が原因なのか全くわからず戸惑っていると、席が後ろの男子が「…ぅぅっぇぇー」と小声で言っているのが聞こえました。
うっさい?と最初は思いましたが、よく聞くと「くっせぇー」と言っていました。
臭い?何が?。汗でも匂うのか?と思って持っていた整汗料を付けて、その日は帰りました。
ですがその日の夜、部屋でおならをすると信じられないような臭いが部屋中に充満しました。
あぁ…。これのことか、と。
おならなら我慢すれば出ないだろうと、思いましたが後ろの男子は相変わらず「ぅぅっぇ…」「くっぇぇ」などと言っていました。
ならば整汗料で臭いをごまかせばいいやと思い、やたらと体に塗りたくりました。
しかし翌日も翌々日も、後ろの席の男子とクラスメイト数人が授業中にずっとコソコソしています。
原因は本当に自分なのだろうか?何か流行りのネタなんだろうとも思いましたが、確信になったのは移動教室で別の男子が後ろの席に着いた時。
その人が「これやべえな、お前の言ってた通りだ。死にそうw」と聞こえた時、やっぱり自分が原因だったと理解しました。
冷や汗が止まらなくなりました。
自分のおならはなぜ我慢しても臭うのか、今までなら我慢出来たのに。
気になって家に帰ってズボンの辺りの臭いを嗅いでみたら確かに自覚なくおならが出ていました。
ならば通じをよくしようと、もの凄く頑張りましたが通じが良くなることは全くありませんでした。
また学校で臭い臭いと言われるのか、と思うと頭が真っ白になりました。
それからは毎日が地獄でした。
バスや電車で隣の席に付いた人も降りるわけでもないのに離れていくわ、コンビニに寄っても後ろに立ってる人たちが急にソワソワし出して「やだぁ、なんか変な臭いしない?」「うわぁ何この臭い」と言われすぐに立ち去りました。
もう学校にも行きたくない、どこにも出掛けたくない、引きこもりがちになっていました。
そんな時、前見たあの女子生徒たちがまた「ねぇ見て2組の○○君、かっこいい!」と今度ははっきり僕の名前を言ってコソコソしていました。
いやそんなわけない、と周りを見渡しましたが誰もいません。
そういえば以前、かっこいいとまでは言われなかったにしても、
中学の頃女子しか友達がいなかったり、そもそも毎日人気のある女子グループが喋りかけてくること自体おかしかったのかと、その時初めて気が付きました。
本当に自分に自信がなかったので、それでもまだ信じられませんでした。
その翌月初めに、先ほどのうちの一人に告白されました。
素直に嬉しかった、でも断りました。もう二度と噂をしたりしないよう、冷たくしてしまったのは今でも後悔しています。
ですがかっこいいとまで言われた上に告白されて、いざ付き合ってみたらおならが臭い、なんてかっこ悪いにもほどがあります。もはや吉本新喜劇です。
それからは学校の中で噂になったことはなかったと思います、ですが思ったのはただただ精神的に楽になったということ。
かっこいいとか期待されてないだけ、裏切りもしないと。
それからは毎日「一時間でいい、一時間でいいから、東京スカイツリーのてっぺんに24時間座るのと代わってくれ。」とか
「授業があと30分、もうゴキブリでも食べるし、トイレ掃除を口だけでしてもいいから代わって欲しい。」
だとか、目を閉じてずっと今の状況より辛いことを考えたり、とにかく代わって欲しいとばかり考えていました。
後から考えると、そんなことして誰が代わってくれるのかわかりませんが(笑
あとは、電車で途中から乗ってくる他校の生徒にいわゆる逆ナンをされたり、大して仲良くもないのに二人っきりでカラオケに行きたいだとか、誘われることはありました。
エッチなことになるとしたら、相手の顔がお尻に近づく…と考えると耐えられず、僕はかっこ付ける選択肢を選びました。
断っていくうちに段々、誰に誘われようと何をされようと逃げる断るしかないので女の人全員が遠く手の届かないようなものに思えて来ました。
それからは嫌われていることがベーシックと考えるようになったので、今更嫌われようがマイナスにはならないと思っているうち、2年の文化祭が終わりました。
胃腸の調子と喫煙は相変わらずでしたが、唯一の友達が気にしないでいてくれたのが大きかったかもしれません。
それと2年は地味なクラスだったからか、直接咎められたりはしませんでした。
こんな嫌われ生活からちょうど1年だなぁと思った時、不思議なものでふと突然「こんな辛い経験してる人、少なくとも校内にはいないだろうなぁ」と自分に酔い始めました。
全校集会では遅刻が多いことが問題になるほど平和な学校です、いじめなど噂さえ聞いたことがなかったので、校内一辛い生活を送ってる自信はありました。
というより、酔いしれだしたら次々と新しいことを思いつくようになったのが不思議でした。
もしかしたら自分に酔うことが自信に変わっていったのかもしれません。
それからは授業中考えることが、
「今ヤンキー100人に鉄パイプ持って囲まれても口説いて解決してやる」とか「卒業するころにはもう何も怖くないだろうな」などと極端に変わっていき、このころから通じも心なしか、よくなっていくように記憶しています。
そこから世界の色が変わって見えてきました。
1年以上行きたいと思わなかった買い物にも行けるようになり、
「異臭がする?嫌なら近寄るんじゃねぇ。」と心の中で威張り続け、少しはまともな高校生活になって行きました。
さすがに一日中威張ってると、なかなかしんどかったですが(笑
気付いたら3年生になっていました。
便秘に対して治療薬があることを知ったのもちょうどその頃、というより今まではそんな解決法が見えるほど余裕がなかったのだと思います。
精神的な改善も合い重なったため、どんどん回復していきました。
喫煙も原因だったと気付き、本数を減らしていったらパッタリやめれました。
というか、そんなものもはや苦ではなかったです(笑
夏休みに入る頃には完治していました。
もう嫌われなくて済むのだと思うと、どれほど嬉しかったことか今でも忘れられません。
その後はとても楽しいとまではいかなかったものの、一年生の最初に戻ったような感覚で何もなく普通の生活がただただ楽しかったです。
というか、もう本当に何も怖くない。それは今でも変わりません。
卒業まであっという間でしたし、思い出としては苦いですがとてもいい経験になりました。
今でも辛い局面ではこの経験を思い出して力にしています。
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