年間3,500万円掛かる高額医薬品って?

これは日本の製薬会社である小野薬品が開発して販売したガン治療薬オブシーボ。画期的な医薬品ではあるものの何でこんなに高額になったのか?

このオブシーボという薬。今までの抗がん剤と効き方が全く異なる。

人間の体には本来Tキラー細胞という免疫細胞がありガンなどの異物を殺傷する力を持っている。

ところがガン細胞がこのTキラー細胞の機能を阻止する物質を作り出す事によって増殖。

オブシーボはガン細胞が作り出すこの物質を無力化して免疫細胞の働きを回復させる。


但し、問題が幾つかある。

一つは副作用。良薬口に苦しでは無いが重篤な副作用が報告されている。

もう一つは効果。実は完治事例もあるが多くは延命効果。平均的には3ヶ月とも言われています。

かつ本当にその患者さんに効果があったかは事後的に延命効果があったかどうかで分かるだけ。

そして現在問題になっているのが高価格であること。100gで約73万円。

体重60kgの人だと一回180g投与する必要があって、4週間に一回投与。

よって年間約3,500万円になる。

そんな金額払えないよ、と言われるでしょうが、日本には高額医療費制度がある為に、この大部分は保険で賄われることになる。

それにしても我々の保険料と税金で賄われる事には変わりが無い。


そもそも何でこんな高額になったのか?

一つにはメーカーが長期間にわたっている高額な開発費を負担しており、それを回収させる為。

小野薬品は10年以上の年月と1,000億円以上、一説には3,000億円もの開発費を費やしている。

そして薬価の決まり方は基本的に利潤を含むコストを積み上げたものを予想される需要量で割る事による。

ここでオブシーボのコストが高い事については既に説明したが、数件億円の開発費が掛かることはオーブシボに限らない。

それでは何故オブシーボの価格が高いのか?

それは需要を見誤った為。

オブシーボは当初、悪性黒色腫という皮膚ガンの一種に対する保険適用があったのみであった。この時の想定適用患者数は500名弱。年間で175億円。

ところがその後、肺がんの一部に効果が認められて保険適用。この潜在的な患者数が6万人。

全員が使用すると2兆円というとんでもない金額に達する。


流石に厚労省を危機感を抱き次回の薬価見直しである2018年を待たずに、売上高の大きさによる既存薬の薬価見直しのスキームを適用して価格を25%下げると共に、保険適用ができる病院の施設基準も厳しくする方向。

しかし海の外に目を向けると米国では100mg約30万円、英国では同約17万円。

25%下げた位では追いつかない。


保険財政が厳しい中、患者の社会復帰、QOLも含めた社会的なベネフィットと費用の検証に基づいた価格設定の視点が求められる。

これはオプシーボに限った事ではなく、他の高額医薬品。医療機器についても言えることである。



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