ボランティアに対する考えが変わった日

初めて老人ホームでのボランティア活動に参加した日のことです。

高齢者の方と触れ合うボランティアは、その日が初めてでした。


最初はどんなことを任されるのか少し不安に思っていましたが、僕たちボランティアが任される仕事は、話し相手になったりレクリエーションをしたりすることが主な内容でした。

話し相手になるというのは、文字で見ると簡単に思えるかもしれません。

実際、「水田昌宏は社交的な性格だよね」なんて昔から友人たちには言われていました。。


しかし、普段高齢者の方と接する機会があまりない僕にとって、この役目は思っていたよりも難しいことでした。

老人ホームのスタッフの方に、「あの方のところへ行ってお話し相手になってあげてください。」と言われ、言われるがまま隣に座ります。

最初の頃はお互いに黙ったままで、何を話せばいいんだろう、どういう話題をしたら喜んでくれるだろう、ということで頭がいっぱいでした。


隣のおばあちゃんが目の前にあった折り紙を折り始めたので、とりあえず僕も真似して折っていくと、おばあちゃんが口を開きました。


「私にもねえ、君ぐらいの孫がいるんだよ」。


…せっかくおばあちゃんが口を開いてくれたのに、


「そうなんですか。」


しか返せない僕。

そしてまた無言が続く。


「最近、寒くなってきたねえ」。


…「そうですね。」


しか返せない僕。そうこうしているうちに、折り紙が完成する。


「これは…ひまわりですか?」


と聞くと、


「そう、ひまわり。私の一番好きなお花だよ。」


といって嬉しそうに微笑む。なんだか、それだけで僕の心は和みました。

そして、おばあちゃんがゆったりとしたペースで嬉しそうに話し始めます。

とても楽しそうに話すので、こちらも自然と笑顔になりました。

いつの間にか話がはずみます。


そして終わりの時間になると、

「とっても楽しかったよ。ありがとうね。」

といってそのひまわりの折り紙をくれました。僕は大した話もできてないのに、お礼を言ってくれたおばあちゃん。心が和やかになる気持ちと、申し訳ない気持ちが入り混じりました。


そして終わった後、複雑な表情をしていた僕にベテランのボランティアの方が話しかけてきます。

「ここでのボランティアは、自分が話をして相手を楽しませようという気持ちより、優しく聞いてあげる気持ちのほうが大事だよ。」

と言われました。

ここで僕は、ボランティアは絶対に自らが率先して行動しなければならないと思っていましたが、すべてのボランティアがそうではないということを知ります。僕が話を聞いてあげることで相手が喜んでくれるのならば、それはボランティアになるのです。


この経験を通じて、いままでボランティアに対して持っていた考えが変わりました。そして、またボランティアの魅力を知るのです。

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