勇者(ヒーロー)にあこがれて

プロローグ

生きていくということは、すべからく戦うことなんじゃないかと思う。

たとえば、今ステーキが食べたいとする。ステーキを食べるには、どうすればいいか。

そのままなけなしのお金を持ってステーキ屋さんに行くか。いきつけのスーパーまで走り、ステーキ肉を買っていくか。もしくは、家族とか友達の家に上がりこみ、「ステーキを食べさせろ」

と強引に迫るか(笑)。

食べに行くにしても、お金をどうやって調達するか。今食べられるものよりも、もっと上等のいいステーキを食べたいと思えばもっとお金が必要になるし、もっと働かなくてはならない。そのためには、もっと時間がいる。

スーパーまで手軽に肉を買いに行くにしても、ひょっとしたら外は雨が降っていて、自転車をこいで買いに行くには少しハードルが上がるかもしれない。そのためには、バスや電車を乗り継がなければならないし、肉を探すために歩き回らなくてはならないかもしれない。歩き回るためにも、雨が降っているのだから傘やカッパも必要になる。

家族や友達を頼るにしても、家族のいる実家まで時間をかけて帰らなければならないし、友達にしても、いきなり上がりこまれて迷惑だと思うだろう。そんな実家まで帰ってまでステーキが食べたいか。友達に迷惑をかけてまで、自分のステーキを食べたいという欲望を押し通せるか。


どうだろう。ステーキひとつとってみても、まさに大小硬軟、戦うことの連続なのだ。

自分のお金、経済力との戦い。

今自分が使える、許される時間との戦い。

自分に課せられた条件との戦い。

そして、家族や友達、ひいては先輩や恩師、上司や後輩、そしてさらには見たことも聞いたこともない全く知らない人に、自分の想いを伝えよう、自分の希望を遂げさせよう、という戦い。


「戦い」というには、少しおおげさだという部分もあるかもしれないけれど、でも、人生というのは、やはりそういったあらゆる部分での折衝、つまりは戦いの積み重ねなんじゃないかと思う。


僕の人生自体も、やはりそんな戦いの連続だった。

小中学生の頃に、雑誌やテレビで見た格闘技。

そこから高校、大学と進学していき、今社会人になってからも、自分の人生の軸、真ん中に、いつでも格闘技は存在していた。

K-1やPRIDEといったメジャー格闘技の隆盛から始まって、そこにからむプロレス、さらには国内海外問わず、世界中に存在している無数の格闘技団体・イベント、そして格闘家たち。

そしてそれを愛する、見る側の人たち。

自分なりのアプローチではあるけれど、その、ここ20年くらいの間で、僕はそういう人たち、そういうものたちにいっぱい関わってきたという自負がある。

戦うことや、戦う人へのあこがれは、きっと小さいころからさりげなく持ち続けてきたものだったのだろう。

今、社会人として年齢も30歳を迎えたけれど、それでも格闘技や格闘家に対するその思い、というよりもその熱自体は、自分の中で消え失せてしまったことはないように思う。

自分のこれまでの人生の中で、何か、大きな転機を迎えるときは、僕の場合、たいていは判断の基準としてやはり格闘技が関わってきた。


僕が小中学生だった頃から、今社会人として齢30歳を迎えるまでのほぼかれこれ15年から20年のあいだ。

見る側として、やる側として、自分は格闘技に関わってきた者だ、格闘技を通じて人生を歩んできた者だ、という自負は僕にもある。

でも、自分の中にある思いや考えを伝えようにも伝えられない、遂げようにも遂げられない。

この歳月のあいだ、むしろそんな思いに駆られてしまうことの方が多かった。


K-1、PRIDE、DREAM、戦極、UFC。

そして最近だと、RIZIN、巌流島、パンクラスMMA、レベルス、新生K-1 WORLD GP、女子格闘技、そして時代の嗜好性の変化に伴って変容してきたプロレス。

地上波のテレビや、最近になって盛んになってきたインターネットのネットテレビなどでほぼ無料で見れるものだけでも、僕がこの歳月のあいだに見たことがあり、今確認できるだけでもこれだけある。


これまでのこの格闘技界の栄枯盛衰の中で、自分が伝えたかったけれどいまいち伝えられなかった。

遂げたかったけれど、遂げることができなかった。

そんな過去を清算して、これからの未来のために今を伝えたい。


その思いから、このたびこのSTORYSを書かせてもらおうと思い立った。


ただ単に、僕自身のはけ口のようなものになるだけではなく、これを見てくれる、読んでくれる皆さんにとっても、これからの僕のこのSTORYが、皆さんにとっても僕にとっても、これまでの中で、そしてこれからの中でも「最高クラスにおいしいステーキ」、もしくはそれを食べるための手段や一助になってくれたら嬉しい。

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