素顔10代な平凡OLが銀座ホステスとして売れっ子になるまで(11)
接客と内部事情
大島との待ち合わせの店は、銀座八丁目はずれの商業ビルにはいった一軒のこじゃれた居酒屋だった。
そこには狐目の部下、小林も来ていた。
小林を見た瞬間、私の胸によぎったのは困惑だった。
『サキ姉に、知らせなくてよかっただろうか・・・』
いくらママを中心に雰囲気のいい店であるとはいえ、女性同士の付き合いは慎重にならなければいけない。それは、自分自身が前の店、銀花で学んだことだった。
不安な気持ちをふりはらい、私はとりあえず初めての同伴に集中することにした。
隣で力む私の様子を見て、おかしくなったのだろうか。大島がわたしのほうをむいてフチなし眼鏡の奥からふっと微笑む。
その笑いを見て、私は背中が縮むような気持ちになった。正直なところ、平凡な顔と体型をした自分が、銀座の自信に溢れたそうそうたる美人にかなうわけもないことは知っている。それなのに初めての同伴で、自分がそんな人たちと一緒のラインに立っているつもりになっていたことに気が付いて恥ずかしくなったのだ。
同伴の席でしゅんとなってしまった私に気づかないのか気づかないふりをしているのか、2人は仕事の話をしたりしている。運ばれてきた食事も緊張のあまり口にすることができないまま、店に行く時刻になってしまった。
カランカラン・・・店の黒い扉を開けると、扉についた鈴が音を立てた。
サキ姉はそう言って、そのあとに続く小林の顔を見て、最後に私服の私に目を留めた。
聞いてないわ、というような雰囲気は一瞬で、彼女はすぐに笑顔に戻った。私は着替える為に更衣室に向かい、サキ姉が2人を店内に導く。私はやはり、やってしまったかと心の中で後悔した。
もっとちゃんと、事前に同伴の事情を聴いておくべきだったのだ。
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