大学時代(1)
大学に入って、自分の性格に大きな変化が訪れました。
人見知りだった自分が、急に人恋しくなったのです。
3月の終わりに大阪に引っ越してから入学式までに10日ほどあったのですが、その当時大阪には当然誰も知り合いがいませんでした。
それまでは学校で休み時間に一人でいても別に何とも思わなかった私が、なぜか急に部屋で一人でいることに不安を覚えるようになったのです。
大阪に着いてすぐに風邪を引いて、誰にも看病してもらえずにぽつんと部屋にいる。。
「せきをしても一人」という自由律俳句があるそうですが、そんな状況に大きな虚しさを覚えました。
高校までは、専業主婦の母親と幼稚園の妹がいたので、学校では孤独でも家に帰ると必ず私を気にかけてくれる家族がいたのです。
そういった家族がそばにいなくなったことが何らかの影響を及ぼしたのかもしれません。
そこで私は、無意識のうちにそれまでの性格とは正反対の行動を取りました。
誰彼構わず話しかけ始めたのです。
家の近くに大学があったので、大学に一番近い弓道場に行ってそこにいる先輩に適当に話しかけたりしていました。
極端な例だと、近くの池で釣りをしている人に「何が釣れるんですか?」と訊いたことさえあります。
今思えば随分大胆というか挙動不審でした。
そんなことをしているうちに、偶然1年次のゼミでクラスメイトになるFと知り合います。
Fは四国出身の法学部生で、入学したばかりなのにもう司法試験の勉強を考えているという大変真面目な男でした。
このFとはなぜか深い縁で繋がっているようで、その後大学4年間定期的に会っていましたし、就職先が違うのにも関わらず、会社の寮が近くて定期的に食事に行くという関係が10年ほど続きました。
大学に入学するとサークルオリエンテーションというものがあるんですが、私はこのFと一緒に回ることにしました。
著者の藤 勇午さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます