友達が自殺未遂しました、たかが婚活で。 〜中編〜

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     新しい年を迎えた。


     相変わらずパソコンは開くものの

     徐々に諦めの気持ちが、奈々子の中に浸透していった。



   33歳の誕生日が迫ったある日

   奈々子は意を決して

   申し込んできた会員のうちの1人とお見合いをした。


  条件も悪くない人で

  見た目も優しそうだった。

  歳も35歳と近い。



当日、早めに着いた一流ホテルの化粧室で奈々子は

鏡に向かい化粧の仕上げをしていた。


何しろ初めてにお見合いだ。

緊張と焦りで上手くいかず、

手が震えマスカラが下まぶたにベッタリとついてしまった。


焦ってこすると、パンダ目になった。



どうしよう…


あと数分で待ち合わせ場所へ行かなきゃならないのに



奈々子は思いきってメイクを落とした。

まだスッピンの方がマシだ。


奈々子は口紅だけ塗って化粧室を出た。



相手に男性は小柄で銀縁のメガネをかけていた。

写真より老けていて神経質そうだったが


それはお互い様だろう。


彼の方だって、奈々子を一目見た瞬間

目に落胆の文字が浮かんだような気がした。



会って数分後にこう言われた。

「いや、なんか写真と雰囲気違いますよね」



ホテルのラウンジでその男性とは1時間くらい話した。

その人はお見合い慣れしてるのか

それほど緊張もしてなさそうだった。


政治や経済の話と、自分の地元の話をしていた。

奈々子に語りかけるというよりも

ブツブツと呪文を唱え、自問自答しているようにも見えた。

滑舌のあまりよくない人なので、よく聞こえない上に

緊張で何を話していいか分からず

彼の話に相槌を打つのが精一杯だった。


彼が一つ話し終えるたび沈黙が訪れた。


とにかく落ち着かないままお見合いは終了した。



最後に彼は少し苦笑いしながらこう言った。

「大人しい方なんですね」



お礼を言って別れ

相手の姿が雑踏に消えて見えなくなると

奈々子はその場にしゃがみこみたいほどだった。


お見合いってこんなに疲れるものなんだ…


奈々子は帰宅してから、少し迷いパソコンを開いた。

お見合いの返事はなるべくその日のうちにと

担当カウンセラーから言われていた。


奈々子は昼間の男性の姿を思い浮かべた。

すでにもう、どんな顔だったかすら霞んでしまっていた。

そんな男性と一生添い遂げたいとまでは、どうしても思えないが

もう一度会ってみたらまた印象が変わるかもしれない



その旨を相談所にメールしてその日は眠りについた。




しかし次はなかった。

その男性も、またその日のうちに担当者に返事を送ってきたそうだ。


ただし、お断りの返事としてだ。


奈々子が無理言って相談所側に理由を問いただすと


「写真と違って地味、フィーリングが合わない」


男性会員はそう答えたそうだ。


写真なんて、どの女性会員だってみんな

実物と違うのに…


ああ  やっぱりスッピンがよくなかったのかな…

奈々子は、すっかり落ち込んでしまった。


会社でも、家族の中でもあまり話さなくなり

休日も一日中家でパソコンに向かって、あまり外に出なくなった。


相変わらず申し込んでも申し込んでも

お見合い成立にはならなかった。




それでも時の流れは容赦なく過ぎ


気がつけば

奈々子は33歳になっていた。


そしてこの頃から

奈々子は自分の中で何かが音を立てて壊れていくのを

感じるようになるのだった。







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