友達が自殺未遂しました、たかが婚活で。〜後編〜

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奈々子は、せいせいしたというように周りの視線を無視した。


地下鉄は夜なのか昼のかさえわからない

暗い電車の窓に映る奈々子は

疲れて虚しく佇む、若くもない地味な女だった。


頰がたるんだ気がする。ほうれい線も濃くなった気がする。


私このまま1人、オバさんになっていくんだろうか…


「誰がアンアなんかに…」


さっきの男の声が聞こえてきた。

そうだった


私みたいな女、痴漢なんかされるわけなかった…

結婚する相手すらいない女なんか…

奈々子は頭を抱えた。


少し離れた席から3人組の女子高生が面白そうに奈々子を見ている

…ような気がした。

みんなが自分をバカにしているような気がしてならなかった。



今日は通院中の精神科の帰りだった。

うつと診断されて、半年近く経つ。


過度のストレスのせいだと医者は言った。


婚活のストレスと言うと

初老の医者は、呆れた様に肩をすくめ

「なんでそんなものに一生懸命になるの」と笑った。


この医者はダメだと思った。


でも、家族からの強い勧めで通い続けている。




結婚相談所に入会してもうすぐ2年

奈々子からのお見合い申込みで組めたお見合いはたった一回だ。


もちろん交際には至らなかった。


1年目の更新の時もう止めようかと迷った。


当時、退会の相談も兼ねて更新の面談に行くと

一年ぶりに女社長が姿を見せた。


ピンクのラメを散りばめたド派手なスーツに

花のゴテゴテついた帽子を被り、

老婆の様な肌の上に白粉をこれでもかと塗りたくっている。



でも、あの独特のテンポの良い話し口調とテンションは

奈々子をおとすのに十分だった。



「あら!やめちゃもったいないわ!今までの努力が全て水の泡よ〜

考え直しなさいな。あなたなら、まだまだ可能性あるわよ!

とりあえず私のオススメのこの男性とお見合いしてみない?

この男性ならあなたと釣り合うはずよ!!どう!?」



写真の男性は、今までの申し込んできた

どの相手よりも条件の良い男性だった。


年収1200万円 でイケメン


この会員は特別待遇なので、社長直々にお世話しているというのだ。


奈々子はその後も、社長に説得され、更新することになった。

結局のところ餌につられたようなものだ。

また一年分の24万円をローンで支払った。


契約更新が済むと、女社長はさっさとサロンを出て行った。



あとで噂に聞いたのだが、更新を渋ったり、退会を相談すると

社長が登場し、この奥の手を使うのだそうだ。



例の男性とは約束通り会ったが、やはりそれっきりとなった。



そして2回目の更新が迫っている。


奈々子は、その当時一人暮らししていた。


母や妹弟は、奈々子の苛立つ姿や不安定を心配してはいたが

それぞれの日常に忙しく、そう労ってやれなかった。


奈々子からも一切連絡を取らずいつも家に引きこもっていた。

すでに職場では、様子が変だと腫れ物に触るように扱われていた。


奈々子は同僚の前で、何度か過呼吸になっていた。


もともと、穏やかで優しい奈々子は

この2年間ですっかり人間が変わってしまった。


いつもイライラして神経質になっていた。




奈々子はパソコンの電源を入れ、コタツで小さくうずくまっていた。


お見合いの申込みも最近は月に3人くらいに激減していた。

しかも50歳近い男性や、年収も低い男性ばかり。



相手の年収だけは妥協しちゃダメ!

その後の人生のためにも絶対よ!男は保険‼︎



社長の鉄則であり、相談所のセミナーでも言われ続けてきた言葉だ。


そこへ行くと奈々子は完全に彼らに

結婚観を洗脳されていたのかもしれない。


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