行き着いた場所…④

前話: ⑤行き着いた場所…
次話: ③行き着いた場所…

あれ?ウン?…どした?…

午後から女性陣の入浴を、同僚のNさんと、かなりいいカンジ、良いテンポで進んでいたのだが、上がって来たFさんのお着替えがない…しっかりチェックして、お着せする順番にしてココに確かに…

Fさんは、大学病院で長年、バリバリお仕事されてた元看護婦長さん…一生結婚されずにお仕事ひと筋だったらしい…今は妹さんの家に身を寄せておられる…そしていつも妹さんが用意されるのか、とてもお洒落な下着を着けられている…今日も紫色のレースが施された、かなり色っぽいやつ…

肩にタオルをかけただけの姿で、不機嫌そうにベンチに座るFさんに、私はかなり焦って回りを見回すのだが、何処にもない~!

……

何か、妙な物を目にした気が……

隣に座っているSさん…いつにも増して育っておられる様な…

『Sさ~ん!ちょっと見せて~!』

Sさんのトレーナー、Tシャツの下、ビングのFさんのセーターが!…そしてその下は…現れましたぁ~!肩紐片方だけ引っかかってる紫ブラ!それに引っかかってる紫バンティ~~~~!

『私のよぅ~!私の~!』と叫び続けるSさん…有無を言わさず、無情に剥ぎ取る私…

Sさん…きっとあんまり綺麗だから、着けて見たかったのよね…^_^;

ワカルヨ~!(笑)



ヘルパーの資格を取る為、実習で『特別養護老人ホーム』に行った事がある…認知症の進んだ方、寝たきりの方と初めて接して、かなり打ちのめされたのを覚えてる…


昼食の介助を命ぜられた私は、よだれかけの様なものをかけ、目を瞑って、身動ぎひとつしないおばあちゃんの担当に…目の前のトレーを見ると、白と、オレンジ色、グリーンの全て流動食の様なものが乗っていた…人によって、細かく刻んだもの、ほぼ原型の物とそれぞれ…どれも人の食べ物とは…

私はおそるおそる、スブーンでオレンジ色のそれを掬うと、寝ている様に見える、おばあちゃんの口元に持って行った…すると、目は瞑ったまま、いきなりカバッとその口は開き、オレンジのそれは消えた…喉を詰まらせては…と少しずつそれを繰り返すのに夢中になってた私に、ひとりのスタッフが『そんなに時間かけてたら、終わらないわよ!』と私からスブーンを取り上げ、凄い勢いで残りを詰め込み始めた…苦しくなったのか、口を開かなくなったおばあちゃん…すると…その鼻をいきなり摘まみ、口を開けたところに一気に流しこんだ…

絶句してる私に『これだけの人数、全て時間通りにやって行かないと回らないのよ!』

……ガーン(;□;)!!


そして、お隣で『うぅ~!うぅ!』と唸り、スタッフが持っているスブーンを振り払って怒っておられるおばあチャマが…

見ると骨と皮の様に痩せて、モハモハとわずかに残った白髪の髪が、生まれたてヒナの様に…ソシテ、歯を剥いて威嚇?『うぅ~!』

…と突然『キィ~!』と高い奇声を上げたられた…

思わず見ると、さっきとうって変わって、目はランラン、ゆだれが溢れてきて、こんなに嬉しい事はない!という顔で、テーブルを叩き始めた…

その目線の先には…

かなりのイケメンスタッフが、ゆっくりと近づいて来た…そ~ういう見極めは、出来ちゃうの?…(笑)

なんでも彼でないと怒りまくって、誰の言う事も聞かないんだそうだ…

『お待たせ~』と彼…ここはホストクラブか…(-_-メ)わっ!…オバアチャマ、なんかシナ作ってる?イヤ~ン…

ワタシモ…ショウライ…隆治君似のスタッフとか居っちゃったら…イヤ~ン!…(;^_^A…コワイ…

つづく…



著者の稲葉 薫さんに人生相談を申込む

続きのストーリーはこちら!

③行き着いた場所…

著者の稲葉 薫さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。