私が0歳のときに自殺した、父との想い出

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私にとってこの母の言葉は思いがけないものだった。

母は私の大学入学と一人暮らしをすることを応援してくれていたが、お金もかかるし寂しいはずだった。

だから、当然受け入れてくれるものと思っていたのだ。


今思えば、母はこのとき私のタメを思って突き放したのだ。

でも、当時の私にはそれがわからず、ショックな上に裏切られた気持ちになった。


そこから私の生活は、自堕落なものになった。

大学には行かなくなり、母に内緒でアルバイトを始めた。

生活の為でなく遊ぶためだ。


大学をサボって、バイトをしながら、友人と過ごす。

私の思い描いていた大学生になった。

友人もたくさんできた。

でも、一方ですっかり自分に自信をなくしてしまった私は、上辺だけの付き合いしかできずにいた。

アルバイトをして、バイト代で洋服を買い、大して仲良くない友人と遊んで、オールナイトで過ごす。
そんな日々が続いた。


ある日、数少ない大学の友人からメールが来た。


「元気ー?大学に全然来てないみたいだけど大丈夫?このまま休んでると、卒業できなくなるよ?」


心の隅には大学のことや母のことがいつも引っ掛かっていた私に、この聞きたくなかった言葉が鉛のように押しかかってきた。


それから数日、何をしても心が重く気が晴れない。

上辺だけの友人ばかりで、相談する気にもなれない。

母にも言えない。


そんななか、随分前から誘われていた知り合いのイベントに参加した。

クラブを貸し切ってのイベントで、飲んで踊って朝帰り。

始発で帰った私は、疲れて化粧も落とさず眠りについた。


すると、私はなぜか遊園地にいた。

どこの遊園地かも、誰と来ているのかもわからないが、とにかく楽しい。

なんだか懐かしい気持ちも入り混じっている。


   


誰かと手をつなぎながら、メリーゴーランド、ジェットコースター、コーヒーカップと片っ端から乗っった。

観覧車に乗ろうとした時、手を繋いでいた人が私に話しかけてきた。


ある人
楽しいなー。
お前はいつもそんな笑顔でいなきゃ。
辛いこと、苦しいこと、たくさんあると思うけど、お前はお前らしく、自分の思った道を進みなさい。
えっ!?

思わず顔を挙げて、その人を見ると・・・

写真でしか見たことのない父がそこにいた。

それも満面の笑みを浮かべていたのだ。


次の瞬間、父はふっと消えた。

とともに、私は夢から覚めた。


しばらく何が起こったのかわからない。

でも、何度も何度も頭のなかで、聞いたことがない父の声と、父がくれた言葉、そして見たことのない父の笑顔が繰り返される。

繋いだ手のぬくもりも確かにそこにあった。

そして、それは手から体全体に伝わって、私は暖かい気持ちになった。


次の日、何かに動かされるように、大学へ行った。

それも、いつも大学に着ていっていたキレイな洋服ではなく、スウェット上下しか着る気にならず、

そのままの格好で電車に乗り、登校した。


案の定、みんな変な目で私を見ている。

でも、不思議と気にならなかった。

久しぶりの授業は、内容は全くわからないものの、なぜか楽しい。

先生にはすっかり無視をされてはいるものの、怒られることもなくなっていた。

しばらく私が通っていない間に、お気にい入りの生徒だけと会話をするようになったようで

先生の興味がない生徒は、ただ授業を聞くだけでよくなっていることにも気づいた。


それからというもの、自分のペースではあるが大学に通うようになった。


すると徐々にクラスメイトの服装も話題も変わっていった。

さすがにスウェット上下で登校するのは私だけだったが、今までデニムを着るなんて高校生みたいと言ってバカにしていた子たちが、デニムで来るようにもなった。


私だけでなく皆、無理をしていたのだ。


私は思った。

無理をして、その環境にいる必要はなかったんだ。

自分が自分らしくいれば、どこだって自分の居場所をつくれるし、楽しめる。

そして周りも自分を認めてくれる。

どんな自分だって、自信を持って自分らしく生きることが、自分の人生を歩くのに必要なことなんだ。



私はアルバイトをしていることも母にを説得してカラオケ店でアルバイトをしながら

大学にも通って、なんとか大学を卒業した。


結局授業には最後までついて行けず、勉強はほとんど身につかなかったが、とても大切なことに気付き、そして貴重な経験ができたと思っている。


父が私に教えてくれたおかげで、私は気づくことができた。

そして、父と一緒に遊園地で遊んだ想い出も、まるで昨日のことのように今でもはっきり思い出すことができる。



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この2つの不思議な体験は、父が起こした奇跡なのか、私や母が願望として夢を見たことなのかは

わからない。

でも、確かに父が私を救ってくれたのだ。


自ら命を絶った父だが、私のことを、大切に想ってくれている。

父と一緒に過ごしたことはないが、父はいつでも私を見守ってくれている。

そう思うことで、私は勇気が湧き、今日も笑顔の一日を過ごしている。


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