奇跡、生きる〜小さな生命が私を救ってくれた〜パニック障害の私が命の危機に直面して少しだけ成長した話

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すると隣の分娩台にフーフーと苦しそうな妊婦さんが入ってきた。


看護師さんたちの

「これもうB病院送るでしょ」

「お産始まったし無理」

「血圧かなり下がってる」

「うちじゃ無理」

の言葉が聞こえて来た。

もう何考えたら良いのか、何が起きているのか、訳が分からなかった。


結局お産が重なったため、

A産婦人科では手術ができないとの判断で、

真っ裸のままB病院へ緊急搬送されることになった。


救急車には夫の他にA産婦人科の看護師さんが2人同乗してくれたらしい。

救急隊員の方が声をかけてくれているが、目を開けるのがやっと。

酸素マスクを付けられたが、息苦しい。

自分の身体が自分のものでないような感覚。


そんな中で聞こえてきたやりとり。

救急隊員「今日初めて来られたんですか?」

看護師「うちは…今日初診です」

(えーー!?初診じゃないよー!)

救急隊員「出血の時間は?」

看護師「えっと、9時…半?くらいかな?カルテに載ってません?」

(分かる人に乗って欲しかった…)

でももう何かどうでもよかった。



12:30

B病院の救急外来についた。

夫の職場でもあるが、以前私も働いていたので知っている顔がちらほら見えた。

(わぁー、産婦人科の先生みんな揃ってる!)と少し感動した。

夫の顔が一瞬見えた。

(怖いよ、助けて。そばにいて。)

手を伸ばして助けを求めたかったけど声も出ない。

夫はすぐICで呼ばれた。

周りは大声で何か叫んでる。

雰囲気でなんかヤバいんだろうなってのは分かった。

色々な検査をされている間、時々襲うお腹の激痛に悶えながら覚えているのは、

「O型入れるよ!O型!」

(血液型のこと?A型なのに?O型??)

「レントゲン撮ります!」

(レントゲンって寝たまま撮れるんだ。)

「麻酔で寝てる間に終わるからね!頑張ろうね!」

(意識下じゃなくて良かった…)

輸血だったのか何かの検査なのか分からないが、左腕に押し潰されているような激痛が走った。


「今からオペ室に移動しますねー」


オペ室に着くと、独特な緑色の空間。

明るいライトが見えた。

何か音楽が流れていた。

どのタイミングで麻酔をされたのか分からなかったが、

全身と脳みそがフワッとした感覚に襲われ、

(あ、やばい吐きそう…いや、これ死ぬかも…)

そう思った瞬間眠った。



ーーーーーーーーーー


「終わったよー、頑張ったね。」

遠くで聞こえてきた。


術後はICUに運ばれた。

夜かと思うくらい、とても暗い空間に感じられた。


まぶたが重くて目が開かない。

身体に力が入らない。

頭がぼぉーっとする。

輸血の反応で全身に蕁麻疹が出て、全身にひどい痒みがあった。


夫と父と母の声が聞こえた。

(お父さんとお母さんがいる!呼んでくれたんだ。)

母「お母さんがいけなかったね。症状いっぱい出てたのに見抜いてあげられなくてごめんね…」

(お母さんのせいじゃないよ。私がストレスだ、いつものことだって言ってたし。泣かないで。)

そう言いたかったけど、声は出なかった。


夫の「良かった…本当に良かった…」って言葉が何度も聞こえてきた。

(夫のこんな弱った声初めて聞いた…心配かけてごめんね。)なんて思ってたら、

夫「俺、救急外来いる時に身長と体重聞かれて165cm50kgくらいだと思いますって言ったんだけどあってる?」

(…いやいやいや!157cm43kgなんだけど…全然違う。緊急時でもどっか抜けてるなぁ。)

目が開けられなくて顔も見られなかったけど、両親と夫の声を聞いてたら落ち着いた。

ただこの時は、自分に何が起こったのか、手術をした事すらあまり理解できていなかった。



私に起きた事。

卵管膨大部妊娠

卵管破裂

出血性ショック


通常は子宮で着床する受精卵が、子宮まで行かずに卵管の途中に着床し、大きく育った為に卵管が破裂。

破裂した事により腹腔内に大量出血、ショック状態になった。

妊娠10週目だった。



後日、夫が話してくれた。

A医師の説明が全く緊急性がなさそうな軽い感じだったので、救急車の中でレベルが落ちていく私を見て怖かったこと。

出血が約2500mgだったこと。

「緊急性が高く、同意を取る前に輸血を始めてます」と言われたこと。

正しい血液型が判明するまで、異型輸血をしたこと。

「あと少し遅ければ間に合わなかった」と言われたこと。

手術中、私を失うかもしれない不安と恐怖で泣いていたら、上司が来てくださって「男がしっかりせんと」と励ましてくれた事。

手術が終わったと聞いた時に安心して力が抜けて全身が痺れた感覚に襲われたこと。



こんなことを私が逆の立場だったら耐えられただろうか。

きっと夫も不安で怖かったに違いない。

ごめんね、ありがとう。



12月27日

麻薬の影響でいくら寝ても眠気が取れず、ほとんど眠っていた。

全身の痒みが続き、何度も目が覚めたが、頭はぼぉーっとしたままだった。

血栓症の予防で下肢にマッサージ機が付けられていた。

定期的にふくらはぎが締め付けられ、解放される感覚がずっと続いていた。

看護師さんに促されベッドの上で歯磨きをした。

歯磨き粉無しでの歯磨きはなんだかとても気持ちが悪かった。


しばらくすると、抗不安薬を飲み忘れた時のような離脱症状、焦燥感や落ち着かない感覚が出てきた。

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