人格が優れていると

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非常に興味深い話を耳にした。孫橋は観察がとても好きでいつも観察から気づきを得ている。中でもグループを観察するのは面白いのだという。


今回孫橋が観察したのは、同窓会に参加したあるメンバーたちだ。メンバーは十人でテーブルを囲み、それぞれ会話を楽しんでいた。観察を行なった孫橋も同じテーブルの参加者だ。


積もる話もあり、話はいつまでも尽きることはなかった。同窓会など久しい場となれば、特に珍しいことではなかろう。孫橋もそのことを特に気にする様子は持たなかった。会も中盤に近づいてくるにつれて、話も盛り上がってきた時、孫橋はとあることに気がついた。


それは話し手が二、三名いて、あとは聞き手に回っているということであった。特に珍しいことではない。よくある話だ。


ただ、孫橋が気がついたことはその点だけではなかった。孫橋はその話し手の中でも聞き手の反応が大きく異なっていることに気がついた。


面白い話には皆食いつき、つまらない話の時は反応も薄くなる。当たり前のことだが、その内容がとても興味深かった。



どうやら上手くいったというような成功体験を含んだ話には人気が集中していたが、悩み相談のような内容には盛り上がりに偏りが生じていたようなのだ。


孫橋が特に気に掛けたのはこの偏りだった。


同じように悩みを相談しているように見えるのに、盛り上がりに違いがあるのは何故なのだろう?


興味を惹かれた孫橋は観察に精を出した。

違いを探るために話し手たちに同じ内容の質問もした。


何度か繰り返すうち、孫橋は面白い話し手の特徴とつまらない話し手の特徴を掴んだ。



面白い話し手は悩みを相談しつつも、周りで聞いている人のためになるように話を広げているように見えた。自己を主張する一方で聞き手の意見を取り入れ、内容に花を咲かせている。つまり、双方向のコミュニケーションになっていたのである。


それに面白い話し手はその場を楽しんでいるようにも見えた。悩みを話しているはずなのに、その表情はとても明るい。まるで話を聞けて幸せだと言わんばかりの表情を見せ、何度も「これは、運がいいな」とつぶやいていた。


厳しい意見も飛び交うことがあったが、その口振り、表情は何一つ変化しなかった。それよりもますます楽しんでいるように見えた。「やってみる。自分でも勉強してみる。」そんなことを言いながら、話している。自分が変わることに負担がないようだ。



反対につまらない話し手は本当に自分の相談をすることでいっぱいだった。周りの状況など御構い無しに自分の問題を聞き手に聞き回り、自分の意見だけを押し通していた。聞き手が何か教えても、受け入れずさらに自分の意見を述べるだけだった。


聞き手もはじめのうちは真面目に話を聞き、まともに受け答えしていた。だが、少しずつ面倒になり、話を早めに切り上げて別の話題を持ち上げたり、話の上手い人に振るようになっていった。


そのことに気がつかない話し手は「聞いてよ!深刻なんだよ!」ともっと話をしたそうにしていたが、聞き手は煙たそうな顔をするだけでやはり真面目に聞こうとはしていなかった。



帰る頃になり、孫橋が帰りの電車に乗り込むと煙たがられていた話し手と同じ車両になった。その話し手は孫橋にずっと語りかけてきた。


「俺はさ、自分に自信がないんだ。さっきの俺の話もつまらなかったのかな?なんて思ってしまうんだよね。人と話した後っていつも落ち込むんだ。批判もたくさんされちゃったし。」


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