フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第34話

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前話: フツーの女子大生だった私の転落に始まりと波乱に満ちた半生の記録 第33話



「私をパテオの本当のナンバーワンにしてください」



「本当の?」



確認するような顔つきの川崎にに私は頷いた。


彼はもう一度苦笑し、そういうことかと言って私の頭を撫でた。


「いいよ、何にだってしてやるさ」





あの明け方の家路へと向かうタクシーを今でも忘れない。


私はさっきまで、すぐ横でいびきをかいていた男のことを考えていた。

寝顔は正直なもので、ただの初老のそれだった。

でも私を掴んで離さなかった力強い腕とギラギラした目つきは

男の欲望そのままだった。


車の窓ガラスには

焦点の合わない目をしたボンヤリした顔が映っている。


これのどこが綺麗な目だって…?


綺麗なんかじゃない  少しも


これは淀んで濁って薄汚れた目


そうだよ


ガラスの中の私は薄笑いを浮かべると力なく一つ息を吐いた




あの日の玲子に哀れみを感じることはなかった。


月に一度のオーナー参加の月例会

いつもの当然のように取り仕切っていた玲子は

隅に追いやられ、スタッフ全員も前でクビを言い渡された。


玲子は驚く様子もなく

もう薄々感づいていたかのようにフッと笑って口元を歪ませた。

そして、静かに私に目を向けた。


私はその視線を跳ねつけるかのように、視線を逸らした。


この瞬間、勝ったと思った。


表向きには玲子は別の店へ移動すると発表されたが

どこで噂が漏れたのか、玲子がグループ全体から退くことは

すぐに大きな波紋を呼んだ。


ーーー玲子さんてさぁ、オーナーの長年の恋人だったんでしょ?

急に捨てるとかヒドくない!?

ーーーていうか玲子さんてオーナーと知り合う前

メッチャ荒れてたらしいよ。援交とかもやってたって。

… でオーナーに見初められたらしいんだけど

そこからずっと内縁の妻みたいな関係で結ばれてたんだって。

ーーーでも、散々いい思いしてきたんだからもういいんんじゃない?

玲子さんて若く見えるけど、実は相当な歳らしいよ


玲子の失脚はホステスたちの話の恰好の餌になった。


中には玲子の本性も知らず慕っていたホステスもいて

泣き出してしまう者もいた。


馬鹿なコたち…

 あの女の本性も分からないなんて


まるで昔の私みたい





前の晩、私は川崎の背中越しに甘えた声で念を押していた。


「ねえ!本当?嘘じゃないですよね?」


「ああ、言っただろ?俺はぁ一度決めたら絶対やるんだって」



川崎はウイスキーのグラスを傾けながらパソコンを見ていた。

私は、その背中に体を密着させて


「本当にいいんですですね?

   本当に未練とかないんですよね…」


川崎は、僅かに振り向きバーカと言って

私の口元にグラスをあてがい、これでも飲みなと言った。


そして立ち上がり新しいウィスキーを注ぎながら言った。


「誰が!あんなババアに未練だよ?!

あいつには店の経営任してたしよ、使えると思って

ずっと優遇してやってたんだ。

ただの 腐れ縁て奴よ。でもな、そうもいかないだろ。

淀んだ水は取り替えるんだよ!ビジネスの世界も常に

新しいものに目を向けなきゃ通用しないからな」


ウィスキーを煽りながら、川崎は言葉を続けた。


「知ってんだ、佐々木や他の男とできてたって話も。

ちょうどいい、もうあいつはいらねえ、お払い箱だ」



そういうと川崎は私の横に腰を下ろし体を引き寄せた。


「それに俺には、お前がいるからな」


その顔に僅かに拗ねた子供のような面影が映っているのを

私は見逃さなかった。




そして全ては一転した。


私はこのパテオの全体を率いる立場になった。

前代未聞の弱冠22歳で。

しかもナンバーワンホステスという称号もそのままだ。


オーナー以外は誰1人私に逆らえるものなどいなくなった。


この在籍ホステス含む従業員60人余りのパテオの頂点で

私は絶対的な女王となった。




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