あの時、ここで変わらなくては死んでしまうと思った(最後)
いつもは都心に向かう電車の反対ホームに立ちやってきた電車に乗った。ちょうど空いた座席に座る。
都心から離れる電車であっても通勤時間帯はやはり混んでいた。これから私は一言で言うなら堕胎手術をしにいく。
お腹の子はもう息づいていないのに胃はムカムカして明らかに悪阻とわかる。
この数か月は何だったんだろうか。喜んで戸惑って、仕事をキャンセルし、旅行を取りやめた。
子供服を見て高まり、やめられない煙草を吸っては後悔した。
目の前に赤ちゃんを抱いた若いお母さんが立っている。
普段、私は子育てをする人々に友好的な人間である。きっと大変に違いないと、必ず座席を譲る。子供が騒いでも嫌な顔はしない。温かい目で見守る。
この女と私は何が違うのか。
暗い思いが胸の中いっぱいに溢れた。この女には子を育てる資格を持てた。私にはそれが与えられなかった。何が違うのか。
私は寝たふりをした。
その時、向かいの席から甲高い声が聞こえる。
「あなた、そこのあなた!こちらの優しい方が席を譲ってくださったわよ、良かったわね、お子さん抱いて大変だったわね」
【こちらの優しい方】
胸に刺さった。私は今、鬼なのだろうか。私には何が足りなかったのだろうか。先生はよくあることだと言ってくれた。あなたは悪くないですよと一生懸命伝えようとしてくれれた。
それでも私は自分を責めずにはいられなかった。
本当に心から喜べたの?
仕事を断ったこと後悔したんじゃないの?
煙草吸ってたよね?
遅くまで仕事してコーヒーばっか飲んでたよね?
寝たふりをして閉じた目から出ることのできない涙は鼻の奥を通って喉に落ちてきた。
しょっぱい涙をごくごく飲みながら、ちっとも優しくできないダメな私を、子供の為に何もかもを変えることができなかった私を悔いた。
分かっている。これは私の生活のせいではない。
でも、後悔するこの心は私の生活の乱れから発生するものだ。
長年吸い続けた煙草で常に胸の奥はがらがらしていた。残業続きで肌は荒れ放題だった。
口の中は口内炎がしょっちゅうでき、私の体はカッスカスだった。
降りたことのない駅で地図を頼りに知らない病院を目指した。
屈辱的なあのベッドに寝て、点滴の針を刺す。
「数字を数えてください」
いち、にい、さん、と声に出しながら、私は自分を変えないといけないと思った。
また、来て、お願いと心でつぶやいて、目の前が暗転した。
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?

著者のぢょー 姉ちゃんさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます