大好きなディズニーランドのウェルカムセンターでバイトするために辻調の正社員をやめた妹。そのために一時期姉の私と二年同居した話。

正社員をやめても、一度働きたかったらしいディズニーランド。妹は小学校時代に一度ディズニーにきてから虜になり、大人になって正社員になっても夢は捨てきれなかったらしい。


 



妹は辻調理専門学校へ入学。 中華料理人のアニメをみて、料理の鉄人をみて、プロの料理人にあこがれ、夢に向かって突き進み、重い中華鍋を振るい、腱鞘炎になりかけ、料理人の道を断念した。


 講師時代、どっちも料理ショーの裏方、上沼恵美子の3分クッキング、四川料理の陳健一のアシスタントなどをした妹は、口で言うに終わらず、実行していく猪突猛進の女だった。



 退職を決めたときも、何度も学校側からも引き留められたが、とにかく妹は私たち家族の言うことにも耳を貸さないし、自分で決めたことは何を言われてもやってしまうところが、彼女の凄いところ。怖いところでもあるけど、姉の私は気が弱く、泣いては妹に守ってもらっていた幼少期。大人になって力関係は変わり、私が気が強くなって、妹は優しくなった。姉の責務を果たしてない私が言える義理ではないけど、妹はまさかの正社員を一時期辞め、ディズニーランドでバイトしていた時期がある。



お姉ちゃん、私、ディズニーで働きたい。あと、お姉ちゃんうちに遊びにおいでよ。2Kで広いアパート借りたんだ、和室で。
今まで家にこいなんていったことあまりないのに・・。

妹は、アパートに私を呼ぶと「ね、家賃半分にして一緒に住まない?」


 と聞かれ、ここから結婚が決まるまでの二年間、なんと妹と同居することになり、母親ではなく、妹に料理、掃除、洗濯と叩き込まれ、まるで花嫁修業のような日が始まるのである。


 妹は男女ともに友人がおり、友人の数は私の何倍もいて、消極的で図書館通い、本が友達のような私にたいして、スポーツ大好き。ソフトボール部。バレーも剣道も出来て、小学校時代は成績は5段評価でオール5の、中高もそれなりに優秀。辻調理専門学校も成績優秀で学校に残れてしまうような、なんで姉妹なのにこんなにキャラが違うのかという妹だった。


 手際がよく、仕事も早いので男性には煙たがれる、という点でのみ、私が勝っていたかもだけど、妹は友人たちには「お姉ちゃんはお姉ちゃんらしいことしない、怖い」と言っていたようで、あるときに妹の友人に「怖くないじゃない」と言われて発覚するけど、妹は妹で彼氏ができる姉をうらやんでいたのかもしれない。


 実家にいた頃も、妹とはよく喧嘩をした。アナ雪?!はあ?!である。姉妹はそんな仲良し姉妹ばっかじゃねえわ。気が合わない姉妹もいる。野良猫の喧嘩みたいにひっかきあってぎゃあぎゃあ言っていた時期もあった・・が、社会人になって別々に暮らすようになって、調和のとれた姉妹になっていくのである。 






 それでも妹には何度も救われた。


 2年付き合った彼氏に振られたときは、呆然と人を信じられなくて、無気力になったことがあるけど

妹はディズニーランドに誘ってくれて、1日振り回されて、ぐったり疲れて、帰り道で言うのだ。

「また、恋したらいいよ。泣いてもいいよ。ここにくれば無償の愛をくれるミッキーマウスもいるんだし。」


 何気ない一言だが、泣けた。


 失恋してから、一度も泣いてなくて、悔しくて、強がっていた私の鎧を脱がすのは妹だった。


 そんな妹がディズニーランドで働くから、一緒に家賃半分だせという。


「わかった」



私は2つ返事で答えた。両親が心配した。実家にいた頃に野良猫の喧嘩のような毎日あえばフーギャと唸りあっていた姉妹が、また一緒に住んで無事に済むのかということが、きっと心配だった。案の定、喧嘩も何度もする。


 几帳面の妹は、洗濯物もきちんと畳み、干し方も服の形を崩さないようにするし、料理もまずいものは食べたくないからおいしいものを手間暇かけて作る。掃除は行き届き、カビなど許せないし、畳に落ちた髪の毛が気になるようで仕事が終わってかえってくるとコロコロとテープで髪の毛を取り出す。


 坂上忍とまではいかないが、彷彿させるキャラの妹。私は祖父母に病弱な孫で、よく熱を出して学校の休む子で、蝶よ花よと甘やかされ、料理も「包丁なんて危ない」と祖父がやることを許さず、ダメな子に。


 妹はそんな私を見て要領よく育つ。


 妹が「お姉ちゃん、ここで料理や洗濯をちゃんと覚えなよ」という。


 外見で惚れられても時期がきて振られるのは、

恋人ならいいけど、結婚に向いてない

 と思われるから、とでも思ったようだった。


 



おかげで人並みの料理をおぼえ、その後料理教室にも短期間通った。


 

妹のバイト生活で家賃を私が半分出す、という形だけど、結局私がまた妹に助けられてしまっていた。


 契約更新の月になって、また些細なことで喧嘩をしたときに、私は

同居を解消したいと、妹に言ってしまう。妹にも正社員を勧めていた。20代も後半で、バイトの生活で気ままに暮らしていくのは甘いと、これだけお世話になっていたけど、言ってしまった。


 

「・・・お姉ちゃんは一度でいいから、妹の為に家賃だすよって言えないの?!私がお姉ちゃんみたいだねって周りにいわれて恥ずかしくないの?私も妹としてお姉ちゃんに甘えたりしたいよ」


 

と言って泣かれた。


 妹の言い分はわかる。私は姉らしくない。妹のようなポジションで妹に守られて生きてきて、先に生まれたのに病弱という理由で両親も祖父母も健康体でなんなくすべてをこなして、健康体の妹は「ほっといても安心」といわれて放置だった。それでも、妹はなにも言わなかったけど、泣いた妹をみて自分が恥ずかしかった。

 

が、そんなときに東北大震災がおき、

「正社員であることの大切さ」

 は、すぐに証明されてしまうのだけど。



  ないものねだり、で同じ同性。姉妹とは複雑。だけど、今後は姉らしくしようとそのとき決意した。


 あれから、私は母親になって、妹が私に与えてくれたすべてのことに感謝している。


 性格は相変わらずでお互いに嫉妬してしまうこともいまだにある。


 やりたいことに果敢に進む妹。慎重に先のことまで考えて安全な橋を渡る私。

どちらの生き方も間違いじゃない。


 アナ雪だと、私はエルサで、妹がアナなんだろうけど。結婚したのは私だから、私がアナ?アナ雪では例えることが出来ない姉妹の私たち。妹にもう姉の役割をさせないように頑張ります。






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