「元素の勉強」に驚きと感動を!!熱狂と興奮を!!とある塾長の実録奮闘記
ここで古代ギリシャ人登場。
タレス「全ての源は水だ!」
アナクシメネス「全ては空気からできている!」
ヘラクレイトス「火じゃぁ!火が根源じゃあ!」
クセノパネス「いや土じゃ。命は全て土から生まれる。」
ギリシャ人達の熱きバトルが繰り広げられる。もちろん証拠なんてない。哲学者達が観念的にぶつかりあっているだけ。当然子ども達も「は!?」「バカじゃねー」「確かにそうかも」とそれぞれの反応。そんなときに超人現る。
知の巨人にして万学の祖、アリストテレス様!!
彼がこうした議論に終止符を打ち、元素とは「火・空気・土・水」の4つであり、これを「四大元素」と呼び始める!(注:正確には五大元素説を唱えたのだがややこしいので正確さは捨て!)
アリストテレスの四大元素説は現代人にとってはバカバカしい話かもしれないが、当時の人にとっては画期的なプレゼンだった。
地球上で親しみのある現象、温・冷・乾・湿。この4つの現象と四元素は互いに密の関係にあると説明する。火は温かくて乾いた性質があり、逆に水は冷たくて湿っている。こうした身近な現象と四元素は相性がとてもいいのだ!
さらに!!
木に傷をつけると水が出てくるし、燃やすと煙が出てくる。そして燃えた後には灰という土が残る。だから木は「水・空気・土でできているのだぁ!!」と説明する。
これだけじゃない。他のものだって全て四元素で説明できるのだ!
溶岩は岩から出てくるから土の成分があり、火のように燃えさかり、水のように流れていく。こんな感じで四大元素は画期的な説明のように思われた。しかもポケモンのようで何だか馴染みやすい笑。
かくして!!!
地球の材料、この世を構成する素となるものは、四つの元素である!という教義が打ち立てられる。
ここまでくると子ども達もその威力に圧倒される。「これ信じる人ー?」という質問には、学年にもよるが結構な人数が手をあげたりするものだ。確かにこの説明、直感的でわかりやすい。さっきのアンチモンとかよりはよっぽどましだ!笑
しかしこの説得力があだとなる。アリストテレス以降、人類は約2000年もの間、この教義から離れることができず、真実は闇に葬られたままとなる。もはや、誰かがその暗闇へと勇気を持って踏み込んで、真実を覆い隠したベールを拭い去るしかない。
そんなとき!!!
ついに一人の勇者が現れたのだった!
大人なら「ボイルの法則」で知っている人もいるかもしれない。いったい彼はどのようにしてベールを拭い去ったのか!?
彼は四大元素のうちの一つ、空気に着目する。ここで子ども達にも元素について新情報を提示。
しかし空気が元素かどうか調べるといってもいったいどうやるんだろう?ボイルは空気を使ってある実験を試みる。いったいそれはどんな実験なのか?まずはボイルが使った実験器具を見てみよう。
ほほー!何やらわけのわからない道具だらけ。いったい何をしたのやら。ここでもし、気がつくような人がいたら大分センスの良い人だ。今すぐ科学者の道へ転職しよう。
実はこの実験道具、真空を作り出す道具なのだ!中央にある丸いのが瓶、その上にあるのがポンプだ。空気を調べるにはどうするか?ボイルのアイデアは「空気のない状態はどうなるか?」を調べることにより、空気とは何か、どんな性質なのかを推測しようと試みた!!
そして彼は、人類で初となる真空実験を開始する。まず彼が観察したのが、真空状態にある時計だった。
注:瓶の中は真空と思ってください。
この質問により、子ども達の頭はフル回転を始める。
ついにエンジン始動!!ガンガン乗り始めてきたぜぇ!!
なぜならこの瞬間こそが最高の学習体験に必要な、あの流儀が発動された瞬間だからだ。
1:「謎」が「問いかけ」られる。
そう!人間は、特に子どもは謎が大好き!意表を突かれるような瞬間に、心そそられる謎が問いかけられれば、それはもう手に取る以外にないのである。考えたくてしょうがない。実際にこのコラムを読んでいるあなたも問題を読んだ瞬間に「えっと、ちょっと待って、どうなるんだろう?」と考え始めたのではないだろうか?
しばらくすると、決まってでしゃばりな、しかも男の子が、手をあげて注目を集めようと動き出す。ちなみにこういうときの男子の心理は、自信があるから、ではなく、自分のアイデアに注目を集めたいから、ただそれだけだ。
でました!!珍回答その1:逆回転
とまぁこんな感じで、子どものテンションを下げないように注意しつつ、珍回答を拾い上げてあげる。この行動が呼び水となって、堰が切られる。
でました!!珍回答その2:停止
どうやら針の動きは関係なさそうだと悟り始める子ども達。すると何を思ったか、こんな珍回答が炸裂する。
でました!!珍回答その3:爆発
というわけで、正解は子ども達からは出てこない。ではボイルはいったい何を見たのか??実は、正確には見たのではない、聞いたのだ。
ここで高学年が相手だと、だいたいこういうリアクションがかえってくる。
そう、音は振動、その振動を伝える空気という触媒がなければ音は伝わらない。その事実は、歴史的にはこんな風に発見されたのだった。
ところで、なぜ子どもから正解が出てこなかったのか?感のいい子ならわかりそうな問題なのになぜだろう?実はここには周到に用意された罠があったのだ。思い出して欲しい、問題の文章を。
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