口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ① 決意編

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遠くに見える、昼間なら交通量が多い名古屋市と地元を繋ぐ橋も車はまばら、

もちろん人なんて歩いていない。

とても一人ぼっちを感じた。


空からパツキンの女性が降ってこないかな・・・などと考えたりもした。

もちろん降ってくる訳がない。

降ってきたとしてもコンクリートの堤防だ、打ちどころが悪ければ死ぬ・・・。

 

「今日も昨日と同じだったな・・・。

 

溜息と同時に出た言葉だった


「こんな俺を好きになってくれる子なんかいるのかな・・・?」


「自殺なんかする度胸なんかないけど…自殺する人の気持ちが今ならちょっとわからんでもないな…。」


「俺って必要な人間なのかな?俺がいなくたって周りは少したったら俺がいない状態にすぐ順応するに決まってる…。

工場のラインの人がちょっと困るかもな……。」


そして堤防に座っている時によく考えた事は、

 

「人って何が目的で生きているんだろう?」

「何の為に俺は生きているんだろう?」

 

つきない自問自答。

答えのない問題だった。


そして、うっすら遠くの空が明るくなり始めていた。

 

そんな日々を送りながらも着実に目標(モテる車)に向かって貯金をしていった。


しかし、相変わらず彼女は出来ておらず、彼女ができない理由を愛車のジョルノ(50CCの原付)のせいにして、

自分をごまかしていた。


そして……

やはりそんな日々でも時は流れる……。


そんな私も12月で19歳になっていた……。


誕生日は鉄パイプと迎えた。

正確にいうと工場の食堂だった。


最低の誕生日だった。



キュートでラブリーな彼女から、


「誕生日おめでとう!

今週の土日は予定いれちゃだめだよ?

もし土日会えなかったら浮気してると思うからね?」


「おいおい、そんな訳ないだろ、マイハニー?

もし核戦争が土日に起きたとしてもお前と一緒に誕生日を祝っちゃうよ。」

 

さすがである。

鉄パイプに鍛えられた高度な妄想だった。


「そうすることで彼は自我を保ってきたのであろう」

(FBIプロファイリング担当刑事談)

 

いつも通りの平日が終わり。

いつも通りの土日が終わった。



その週だけ早送りになってほしいような最低な誕生日の週だった。

 


年末にはいつから始まったか忘れたが、地元の友達たちが、

私の実家から徒歩15分程度の場所にある神社に集まるというのが恒例行事になっていた。


さすがに周りもたった1年で劇的に変化した友達もいるわけもなかった。

そして自分も劇的に変化をしているわけではない一人であった。

 

 

「そういえば、井出は仕事なにやってるの?」

「・・・・自動車部品の工場で働いてるよ。車欲しくてさ。」

 

その時の自分にとっては、お世辞にもかっこいいと思える返答ではなかった。


明確な自分のやりたい事があるわけでもない。

崇高な目的なんてもっとない。

よくいるちょっとウブな19歳の自分がいた。


その夜、友達たちと徹夜でたわいもない話をしている間にも、たまに自分の存在理由を考えている自分がいた。

 

(また今年も去年と同じ様になっちゃうのかな?)

(人間が生きる理由ってなんなんだろう?)

 

そんな事を考えながらも、友人宅で年越しの桃鉄で熱くなっていた。

 

年明け少ししてから、いつも通り休日にたまり場へと顔をだした。


私「麻雀やる?」

I「駄目だ、麻雀やるとしても三人打ちしができねぇ・・・・。」

私「なんで?どうしたの?」

I「面子が集まらないんだよね。」

私「みんな、何やってるの?」

I「SとHはコンパ、Iは大学の飲み会、Mは仕事の先輩とコンパだってよ。」

私「まじかよー!?」


今思えばどれだけ暇人が多かったんだと思うが、結構麻雀の面子に困る事もなかったのだ。


私「誰かがうまくいったら女紹介してもらうしかねぇな・・・・。」


I「そうだな。・・・でも、誰か彼女とかできたらどうしよう?」


私「ブサイクな彼女なら許す。」


とにかく後ろ向きな会話であった。


結局、麻雀は人数が集まらない為できず、たまり場で二人はテレビを見たり音楽を聴いたり……

傍からみたら確実にホモだと思われるような過ごし方をしてその日は終了した。

 

その日の帰り道、愛車のジョルノを飛ばし、なぜか堤防へ一人で向かっていた。

その時はとりあえず家に帰りたくなかったのかも知れない。

堤防へ腰かけ、川を眺めながら考えていた・・・

 

(みんないいなー。誰かうまくいったら女紹介してくれるかな?)

(誰か彼女できたらうらやましいなぁ・・・。

でも友達の彼女の友達も悪くないな…。)

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