口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ② 初日編

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「そうなんだ~。」


話をしながらも、おしぼりを袋から出しては広げ、またキレイに巻き直すという作業をし続けていた。


太っている方の人が


「俺Sって名前でやってるから、よろしくね。」


七・三の人が


「俺はTっていうから、よろしく。」

「はっ、ハイ!よろしくお願いします。」


(…よろしく?面接は?

顔でOKという事か?それならそれで悪い気はしないが…。)


違った。

ホストという職業は最近の面接だとどうなのかはわからないが、

顔ではない。

態度でもない。

99%受かるものだった。


少なくとも私がホストをやっていた期間の中で面接で落とされたやつはいなかった。


それは何故か・・・?


ルックスがある程度良くても、しゃべりや接客が伸びず、場の空気も読めず使いものにならないやつもいる。


逆にブサイクでも、色々なお客さんに揉まれたり、おっぱいを揉んだりしながら、巡り合ったお客さんにより自信をつけ、本当に恰好よくなっていくやつもいる。

つまり・・・

使ってみないとわからないのだ。


さらに言えば、

どうせ渡す給料なんてものは、お客さんがいなければ

雀の涙どころか雀のドライアイ

という表現をしたくなるぐらいだ。


もちろん、その時の私はそんな事は知らなかった。


S「なんでこの店選んだの?」

私「写真で格好いいと思う人が多かったからです。」

S「そっか~。確かにそうかもね・・・・。まっ色々大変な事も多いと思うけど頑張ろうよ!」


(やっ、やっ、優しい!)


もっと怖い人だらけだと思っていた私は少し安心していた。

当然ヤ○ザな方とも繋がりが無いわけはないだろうと思っていたからだ。


結局そんな考えが大甘だったと思い知らされるのは・・・

まだまだ先のことだった。



そして、おしぼりの巻き方をちょうど覚えた頃におしぼりは全て巻き終わった。


S「あれっ、そういえば今日からもう働けるの?スーツは持ってきた?」

私「はいっ、持ってきました。」

S「やるじゃん。じゃあ、今日から働いちゃおうか。」

私「はいっ!お願いします!!」


私は店のカウンターの前で私服を脱ぎ、兄から無断で借用してきたスーツに身を包んだ。


今思えばさすがであった。


私は兄より若干身長が高かったのでスーツの丈は短い。

ブラックスーツなのに靴下は白。

髪型はちょっと長めの茶髪のウルフカット。

そう、まったくスーツが似合っていなかった。


(大丈夫かな?)


外見も含めて大丈夫ではなかった。

トークに自信はない、ウブ、ピュア、童貞、家庭環境も普通、雑種の犬、猫が一匹・・・。


目標はベンツに乗る、お金持ちになる、ではなく女のみ・・・・。



それでも、ホスト一日目が始まろうとしていた。




まだお客さんの来店していない店内には有線のユーロビートが鳴り響き、ブラックライトが店の照明として使用されており、紫色に近い、濃い青色のソファーが怪しく光っていた。

(本来はメインの照明にブラックライトは法律の関係でダメだと聞いた事がある)


時間も深夜1時に迫ってきた頃。店のドアが開いた!


「おはよーさん。」


背は高くないが、長髪に縁無しサングラス、黒いロングコートに太めのスーツで、そのスーツも高級そうだ。


(ムムッ!ちょっと怖そうな人だぞ!)


S「おはようございますRさん。こいつ今日面接にきた井出って新人です。」

私「お願いします!」

R「ふ~ん、そうなんだ。」


冷たかった。

初対面でこんなに素っ気なくされた事はなかった。

道端に落ちている石ころの様な扱いだった!


(寂しい!!!)


それから5分程度たった頃だったか・・またドアが開いた。


「おはよっす~。」

「おはよー。」


またしても二人出勤してきた。

一人はNさんという名前で茶髪の中分けのミディアムヘアーでとても甘いマスクをしている。

もう一人の名前はAさん。ほとんど金髪に近いショートヘアーで顔は薄いが整っている顔だった。


S「Nさん、Aさん、今日から働く井出って新人です。」

私「よろしくお願いします!」

N「おぉ・・・よろしく。」

A「よろしく。」


やはり冷たかった!


(なんでこんなに冷たいんだ!?

もっともっと優しくしてくれよ!!

もっと愛をくれよ!

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