口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ② 初日編
初日ですよ?
もっとフレンドリーな感じできてくれよ!?
新人君が働きづらい環境になっちゃうだろ!?)
と・・もちろん言えるはずもなく、勝手に一人で気まずい感じになっていた。
話かけづらい、というか話しかけるなオーラ全開である。
そして石ころ(私)など気にする人間がいない様に、私はその場にいないかの様にRさん、Nさん、Aさんは話をしていた。
つらかった。
今までは、どこの職場(バイト先)でも大体は、初日の人間には周りが気遣ってくれ、話をしてくれていた。
工場勤務が関係あるのかはわからないが、工場の時は、相手も決して話上手ではないのがだいたい雰囲気でわかった。
なので相手も私と話そうと頑張ってくれているというのが、こちらにも伝わり、相手が友好的に接してきてくれるんだなというのが読めたからだ。
もちろんこちらも精一杯頑張って話をしてその気持ちに応えていた。
今回は違った。
理解できないドライ具合だった。
今まで体験した事のない従業員の方々の対応だった。
・・・・のちのちその理由を理解する事になるが。
そんな中でどうしていいかわからず、入り口付近に立っているだけだった。
そんな私に、蜘蛛の糸が垂れてきた。
先ほどおしぼりを一緒にまいていたTさん、ヤンチャなサラリーマンぽい人である。
T「こっちで基本的な事教えてあげるよ。」
私「あっ・・はいっ!」
(私なんかに気を遣っていただきありがとうございます!!)
妙に卑屈になっていた!
ビップルームと言われていた奥の方で皆様がトークをしていたのでボックスの方で仕事を教えてもらえる事になった。
お酒の作り方や、お客さんのタバコにライターで火を点ける時の注意点……
というか教えてもらったのはそれぐらいだった。
私「Tさんはどれくらいホストやってるんですか?」
T「俺もまだ二か月ぐらいだよ。」
私「そうなんですか~。」
T「一応、昼間に他のバイトもしてるからね。」
そんな会話をしていると、
「いらっしゃいませ~!」
お客さんが来た!!
女の子「なんだ~、まだ誰もいないじゃ~ん?」
女の子「まっ、いいじゃん。」
女の子「ねぇA、私達どこ座ればいいの?」
四人組の女性達だった。
そしてそれは信じられない光景だった。19歳の頃の記憶になるが・・・
全員結構かわいかった!
(お金を払ってなんでこんな子たちがくるんだい?ホワイ?信じられない…。
わからない・・。
逆にお金を出してしまう男が、君たちならたくさんいるんじゃないのかい?)
そんな事を考えながらも、アイスを容器に入れ、水をピッチャーにいれそのお客さんのテーブルへ運んだ。それだけで、緊張していた。
無理もない、今までの話相手は鉄パイプだったのだから・・・。
テーブルにアイスと水を運ぶと、NさんとAさんがその女の子達のテーブルに座っていた。
女の子「何この子?」
A「あぁ、今日から働く井出っていう子だよ。」
女の子「そうなんだ~。っていうか井出って本名じゃん!ウケる!」
(私めのなにがウケていらっしゃるんですか??)
何が起きているのかわからなかった。
そう、ホストとはだいたい源氏名を使うものなのだ。単純に言えば店用の名前である。
A「何か好きな名前とかないの?」
そんな事を考えた事などなかった!
私には親からさずかった名前がある。
名前を変えるには市役所に行って用紙を提出して・・・
といっている場合ではなかった。
私「えっ?いや~別にこれといって…。」
A「そっか~。まっ、明日までに考えときなよ。」
その後、私はカウンターのあたりでまた石ころに戻っていた。
そうこうしている間に
「いらっしゃいませ!」
また一人お客さんが入ってきた。
(えっ!!まじかよ!?かわいい…。)
信じられなかった。
私の入店前のホストのイメージとは、
「女の子を騙してお金を稼ぐ」
と思っていた。
騙されるって事は正直な所、
一般の男に相手されない女の子がホストに貢いで相手にしてもらう=
あまりかわいくない女の子ばかり、
だと思っていたからだ、
R「おう、そこ座ってろよ。」
私(かっ・・・かっこいい・・・!こんな可愛い子になんて上からの発言!)
その時の私の脳内BGMには、さだまさしの関白宣言が流れていた。
もちろん先ほど同様アイス、水をテーブルに運んだ。
私「いらっしゃいませ。」
女の子「・・・・・。」
(美しいバラには棘がある!!!)
アイスと水を運んだが、先程の席とはうってかわり、完全無視だった!
私の人生で初めてバラの棘が心に刺さった。
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