口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ③ スタートライン編

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アイスを取りに行って、丸椅子でお地蔵さんになって、アイス取りに行って、お地蔵さんになって・・・の繰り返しだった。

 

鉄パイプとはまったく違ったつらさだった・・・・。

 

目の前では楽しそうにお客さんと会話をしている同年代。

お客さんはもちろん目当てのホストとしゃべりにきているので、新入りのお地蔵さんなんかには興味はない。

 

目の前で繰り広げられる宴。

目の前との差が分かり過ぎて余計に惨めさを感じさせた・・・。

 


 

店に来店する女性の年齢層は平均的に若かった。

ほぼ20代であった。

店の作り・レベル・ホストの年齢・ノリ的にも自然とそうなっていったのかもしれない。

入店前のホストのイメージとしては、お金持ちのおばちゃんが多いと思っていた。

 

「ちょっとドンペリ持ってきてちょうだい。

その代わり店が終わった後は・・・わかってるわね?」

 

入店前はそんな事も覚悟していた。

 


だが違った。

なぜそんな若い年齢でホストにくるお金があるのかというと、おわかりだと思うが、

「キャバクラ」「クラブ」「ヘルス」「デリヘル」「ソープ」

で働いている女性達だった。

たまに

「SMクラブの女性」「女性社長」

「未亡人でお金持ちのおばちゃん」

珍しいところだと

「美容師」「OL」そのまたさらに希に、

単体ではないがAVに出演したことのあるヘルス嬢なども来店していた。

 

普段は高い料金を支払わせて接客する側の女性たちだからこそ、

お金を払う側になった時に、接客というものに対してなおさら厳しかったのかもしれない。


・・・そんな厳しさに直面している自分がいた。

 

二日目も営業が終了し、片付けをした後、やはり外はもう明るかった。

その朝日を浴びると非日常から日常に戻るような感覚に陥っていたのはきっと、私だけではなかったであろう。

 

 

そんなお地蔵さん状態に四苦八苦しながらも、1週間程度経った頃だった。


S「今日また新しい子が面接にくるからな。」

私「ほんとですか!?」


そんな心細い状態だったのでことさら嬉しい知らせだった。

 

(どんな人がくるんだろうな?ファンキーな人だったらどうしよう・・・)

 

その時期にその人がきたのはとてもラッキーだったのかも知れない・・・・

面接にきた人は大学生だった。

とても常識がある人だった。

私のホスト人生の中で、とんでもなく破天荒な人間をさんざん見てきたので余計にそう思う。


新人さんは、知り合ったホストや女の子の中で、数少ない本名も知っている人になった。

 

源氏名はMさんになった。

Mさんは名古屋では有名な国立大学の学生であり、初めに学校名を聞いた時、びっくりしたぐらいの大学だった。

 

髪は茶髪のミディアムヘアでパッチリお目目の甘い顔だった。

浪人したのか忘れたが、歳は私の一つ上の20歳だ。

ほぼ同時期の入店という事もあってすぐ仲良くなった。だいぶ私の心は救われた。

 

Mさんが入店してからさらに一週間程度経った頃・・・

Rさん、Nさん、Aさん、も徐々に話しかけてくれるようになってくれていた。

 

初対面の時の冷たい態度の理由も、働いていくうちにわかるようになった。

 

人の入れ替わりがとても激しいのだ。


前に書いた通り、お客さんの女の子たちは、いわば接客のプロ達だ。

漫画やドラマであるような、

入ったばかりの接客もままならない新人君にお金を使う物好きなどそうそういない。


「B」に入店して一日で来なくなる人間などザラにいた。

入店前の想像とかけ離れていたのかもしれない。

 

そして、例え続いたとしても保証期間、つまり

三か月以内にお客さんを掴めるホストは5人中、1人いるかいないか

ぐらいの割合だった様に思う。

そのお客さんを掴めない4人の辿る道は、


1 保証期間が終わる

2 給料が無くなる

3 携帯代金が払えなくなる

4 携帯電話が停まる

5 女の子に連絡が出来なくなる、女の子の着信ももちろんなくなる

6 頑張ろうにも電話もできなければ話も出来ない、店にも呼べない

7 ナンパ(キャッチ)しても番号も聞けない

8 店に新規のお客さんが来ても、電話が止まっている新人ホストなど相手にされない。

 

そしてどうしようもなくなって

飛ぶ=無断でやめる 

という事だ。

 

だからRさん、Nさん、Aさんも、新人が入ってきたとしても

(どうせすぐ飛ぶだろう・・・)

と思っていたのであろう。

実際、私も経験を積む内にそう思うようになっていた。

 

そんな中で私は、本当に少しずつだがBでの私の居場所というものができていった。

知り合いがいた店でもない、知り合いに紹介してもらった店でもない。

まだほんの少しだったが、自分自身で切り開いたフロンティアだった。

 

Bには多少なじんできていた私だったが、やはり接客はからっきしだった。

新人ホストに対して気遣ってくれるようなお客さんには相手にしてもらえる、というぐらいのレベルにはなっていたが、その気遣いがまた自分を焦らせていた。

 

(どうすりゃいいんだ・・・?

こんなままホストを辞めたら地元に帰れないぜ・・・。

毎日実家に帰ってるけど・・・・。)

 

と自分に突っ込みながらも考えていると一つ気付く事があった。

 

(あれ?さっき俺がヘルプに付いてたお客さん・・・・

悔しいけどMさんの方が、俺の時より喋っている。

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