口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑤ 崖っぷち編

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と、問いかけたくなる程だ。

 

実際の所、評判は悪かったが、そんなに悪い事をやっているわけではなく、従業員も男前が多かった。


噂に尾ひれがついて大げさになっていったのと、恐らく自分が入店する前の方々が色々そういった噂の元になるような事をしていたのであろう。

 

私が入店した頃には、私が見た風俗誌に載っていたホストはもう社長しかいなかったので推測にすぎないが……

 

しかし罰金や給料に関してはそんな噂も当たっていた。

その頃はそんなに深く考えていなかったが、旅行積立金を考えてほしい。

1月に入店して12月に旅行。そして一か月2万円の積み立てだったら22万である。

かなりゴージャスな旅行に連れて行ってもらわないと割に合わない。


しかも10月とかに入店した従業員はどうなるんだ?

という疑問もでる。

 

そんな噂を聞くたびに自分自身が、

 

(ファック!!

なんでそんな所に入店してしまったんだ!?

無知とはなんて恐ろしい事なんだ!!

よりによってネオンの中でもとびっきりの所に入店しちまった!!!)

 

と後悔をしていた。

 

 

 

(保証期間が切れる・・・)


もちろん他人事ではなかった。

私も、もうすでに一か月以上経過しており、保証期間も残り二か月になっていた。

 

(このままだったらまじで飛ぶしかなくなるな・・・・・。

なんとかしねぇと。)

 

と考え始めていた。

 

 

 

ちょうど給料日(雀の涙)が終わった頃ぐらいに、

私とMさんはR華社長に連れられて、キャッチに出るようになっていた。

 

キャッチとは・・・

平たく言えばナンパである。

 

ホストのお客さんの来店予定が少ない営業中の暇な時間に、店外に出てひたすら女の子に声をかけるのだ。


そして

「新規は安いよ!」

という感じで、上手くいけば店に連れてくるのだ。

 

今までにBに来店した事がないお客さんの事を新規という。

その頃のホストは、どこの店もお客さんを増やす為に、新規料金という設定があった。

Bは新規であれば、

「5000円で飲み放題!」

(店によって3000円~10000円ぐらいの幅はあった)

だった。

(それでも声を掛けたその日に店に来る子はほぼいなかったが。)

 

以前の私はナンパなどできる様な男ではなかった。

実際キャッチし始めの頃はもじもじしているだけでなかなか声をかける事ができなかった。

(無視されたり、汚い言葉で罵られたりしたらどうしよう・・・。)

(さらにそれを周りに見られていたら恥ずかしいな・・・。)

 

とダメな政治家並の保身に走っている自分がいた。

 

しかしそれらを克服しキャッチ(ナンパ)が出来る様になった!

それにはいくつかの理由があった。

 

①R華社長に行けと言われる、怖いのでいくしかない。

そして以外と話を聞いてくれたりする子がいる、こんなもんかと自分に言い聞かせる。

 

②無視されるのが恥ずかしかったが、数をこなす内に所詮無視や、ウザイとか言われても二度と会う訳ではない。

うまくいけば二度目があるだけで、二度と絶対会わないであろう人にどう言われようか気にしていてもしょうがない。

といい聞かせる。

 

③明るく「ニーハオ。」と声をかけると10人中2人ぐらいは笑ってくれる。

そして最初に笑ってしまうと相手も一回笑った手前、ツンケンしづらくなる。

(もちろん残りの8人にはいつも以上に生ゴミでも見るような目で見られる。)

 

という理由だった。

 

結局は、自分の気持ちをどういう風にコントロールするかという事だった。

恥をかくよりも、恥をかくのを恐れて行動しない方が格好悪かった。


何度ニーハオを言った事であろう。

その期間だけは本場の中国の方よりニーハオと言っていたかもしれない・・・・。

 

しかし、やはりそんなに甘くなかった。

100人に声をかけて10人が電話番号を教えてくれて

その中のやっと1人の女性が店にきてくれればいい方

というぐらいの確率。

さらにその1人が新規以降も店に来てくれるかと言ったらその確率はさらに低くなる。

 

それはそうだ。

新規だったら一人飲み放題で5000円だが、二回目以降は座っただけで15000円はかかる。

新規と二回目では金額が違いすぎる。

(今思えばBは店の雰囲気に対して値段設定が高過ぎたように思うが・・)

 

 そんなキャッチの日々から一週間ぐらい経った頃、私はMさんと一緒にさらにキャッチをするようになっていった。

 

まず店が終了する。

昼ぐらいに起きる。

ナンパして連絡できる女の子を蓄える。

14時頃に少し休憩する。

16時頃また再開。

20時頃に終了。

0時から営業開始。

1時から3時ぐらいまで暇な日は店外にキャッチにでる。


というキャッチ漬けの日々であった。

その時間にはちゃんとした理由があった。

まず昼。

昼過ぎから出勤のヘルスの子などをキャッチする。

夕方は17時から19時ぐらいまでは夕方出勤のヘルスの子かキャバクラの女の子狙い。

 

21時頃にはヘルス・キャバクラ、どちらの子も店に入ってしまっているのでキャッチしてもあまり意味はない。

そして、出勤後の1時から3時はヘルスの仕事が終わった子をキャッチ、という理由である。

今思い出しても本当に頑張ったと思う。

毎日毎日そのような行動パターンである。

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