口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑦ 悲しきヒモ編

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今思えば、何故素直に聞いていたのであろう・・・。

今の自分であれば暴動を起こしていてもおかしくはない・・・。

今であれば、ジャンヌ・ダルク のようになっていたであろう・・・。


「素直な子になりなさい」

という教育が裏目に出た瞬間だった…


そういった罰金の積み重ねで、

結局、携帯料金も払ってもらう様な状態だった。


もともと養ってもらうのが目的で、

好きでもない女の子と一緒にいるのであれば、なんとも思わなかったと思う。


しかし、その頃私は確かにYの事が好きだった。

だんだんと負い目を感じる様になってきていた・・・。



Yはその後も、その当時のホストが好んで着用していたブランドのスーツを買ってくれた。

少し起毛した、ウールというのか・・・Pコートの素材の様なスーツ。

細身のネイビーの少し生地が変わった柄のスーツ。

そこのブランドのネクタイ、ワイシャツ・・・。


ビックリしたのが、仕事が終わる前の時間に電話があり


Y「今日、仕事終わったら東京迎えに来て」

(友達と会うといってYは東京に行っていた。今となっては真偽はわからないが・・。)


と言われ


私「まじで言ってんの?お金無いよ?」

Y「私払うからいいよ、とりあえずなんとか来て。」


とかなり強引な感じで言われ、ベロベロの状態で一人新幹線にのり、東京へ向かった。

(今思えば、周りの視線が痛かった!)


東京駅に到着して、Yと合流したら


Y「ちょっと付き合って」


と言われ、

「修学旅行以来の東京で土地勘0」

プラス

「酔いであまり記憶がない」

という理由でタクシーでどこを走ったかは全くわからない……

表参道?かな?


どこかのTOKYOのグッチの路面店へと連れて行かれ、

何着かスーツを着せられ、


Y「うん、これいいじゃん。あとこれに似合うワイシャツとネクタイお願いね。

靴はこれでいいや。」

と、

光沢があり、濃い目のグレーの細身のスーツ。


明るいピンクに近い紫のワイシャツ。


ワイシャツより少し濃い紫のGの柄のはいったカワイイ感じのネクタイ。


オーソドックスな黒のビット付きの皮のローファー。


今で言えば遊び人のIT社長がしていそうなコーディネートに仕上がった。


試着していて


(う~ん。さすがグッチ。細身で苦しいですな・・・。)


と思ったらいきなりお買い上げなさった!!!


金額ははっきり覚えていないが、とりあえずスーツだけで20万は超えていたので、総額は30万以上払っていただろう。


私「ちょっと!大丈夫なの?!!!」

Y「臨時収入があったから大丈夫だよ。」


その後も


Y「この時計つけてないから着けてていいよ。」


とその当時流行っていた、カルティエのパシャCという時計を貸してくれた。

(YはYでショパールというダイヤがカラカラとフェイスの中で動く時計を持っていた。)

自分の彼女に一人前のホストとしての全ての外見をそろえてもらっていた事もあり、


自分では


(これでいいのか?)


という自問自答がしばらく付きまとっていた・・・。

罪悪感は最後まで消える事は無かった…


Yは、

ホストでお金を稼ぎだせるようになって欲しかったのか、

それとも年下の彼氏を成長させたかったのか・・・

ただの着せ替え人形の様に考えていたのか・・・・


今となっては確かめようもない・・・



ブランドスーツに身を包み、人からパクったギャグを駆使して頑張った。


細かいお客さんはできるが、なかなか売上は上がらない。


一向にホストで自立する道は見えなかった。


正攻法だけでは、なかなか売上は上がらないのは、

実はYもわかっていたのかもしれない・・・


それでも、しばらくはこの砂上の楼閣の様な暮らしは続いた。

都合の悪い所に、お互い目を背けるかのように・・・。


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