東芝がメモリー部門の売却に躍起になった訳

これまで日米韓連合への売却を進めて来て、提携先のWDからの売却差止めの提訴も無視して来た東芝が8月もあと残すところ僅かと言うところで急遽ウェスタン・ディジタル(WD)との売却の交渉の席に着いた。

東芝はどうもWDを嫌っていた様だ。

そもそも東芝はメモリー分野で急進するサムソンに対抗するためにサンディスクと開発、製造を共同で行ってきた。

そのサンディスクを後になって買収したのがWD。

東芝にしたら一緒になったら知らなお父さんが出て来た様なもの。

アメリカでのM&Aでは交渉中の守秘義務が厳しく、サンディスクも事前に東芝にWDによる買収について話しがされていたか疑問である。

WDはかつて日立グループに属していた日立グローバルストレージズを2011年に買収。本社はアメリカに置き、日本にはHGSTという日本法人を作り活動している。

その運営を見て完全に主導権を奪われることを怖れていたのかも知れない。

それに比べて「日米韓連合」は、日米産業革新機構、日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタルに韓国半導体大手SKハイニックスからなる陣営。東芝としては組み易しと判断したのかも知れない。

それ故、WDによる売却差止めの提訴があっても当初は正面突破で乗り切れると踏んだ様だが、他の連合の参加社の方がこれをシリアスに捉えて一挙に交渉のスピードが落ちた。

また日本陣営は、独占禁止法への抵触を避ける為にSKハイニックスからの出資を出来るだけローンにして経営への関与も弱くしようとした様だが、SKハイニックスにしてみれば金は出すけど口は出せないのでは何をしているのか分からないので役員会の承認を得られないとの主張。この点は日本陣営の読み違いがあったと言えよう。

ところが東芝側は交渉が進まないのは自分たちのせいではなくWDのせいだとして他人事の様に時間が過ぎていくのを看過していたと言って良い。

その内、年度内の売却がスケジュール的に困難になってくると、今度はメモリー部門の分離、上場を検討することになる。


これが銀行団の逆鱗に触れたと思われる。

銀行団が東芝に対して設定しているシンジケーション・ローン残高2,500億円超は貸出の条件として「財務制限条項」と言うものが付いている。この条件に抵触すると借手である東芝は期限の利益を失い要求があれば全ての借入金を返済しなければならない。

現在、この条件に抵触した状況で、銀行団との合意で返済を猶予されている。

銀行団とすれば危ない東芝に融資を続けて焦げ付いた場合、株主から訴訟を起こされる可能性がある「アブナイ」融資だ。

その為、返済原資としてメモリー部門の売却資金が当てられる仕組みになっているはず。

その返済原資が今期中に入って来ないととなると融資の根幹に関わる大事件だ。

東芝はこの銀行側のシリアスさを読み違えて、どうせ銀行はメモリー部門の分離、上場迄待ってくれると高を括っていたのでは無いだろうか。

お金を借りるのに頭を下げたことの無い連中に有り勝ちな間違いだ。

よく言われる様に「銀行は晴れの時に傘を差出し、雨が降ると傘を取り上げる」と言うやつだ。

企業の調子が良い時にはいらない資金も貸し付けようとするが、業績が悪くなると担保の確保や貸し剥がしに奔走する。

私も一部上場会社の財務課長として銀行の相手をして来たが、この掌返しには唖然としたものだった。

実際、東芝の場合も地銀のいくつかは融資を引き揚げている。

そしてもう一つ致命的なのがローンについている「クロス・ディフォルト条項」。

これは先の銀行団のシンジケーション・ローンの条件として付いていると思われるもの。

このローンが返済不能になった場合に、他の借入金も全て返済しなければならないというもの。

東芝は今年の6月末で1兆1千億円以上の借入金がある。

流石に銀行のシリアスさに東芝も本気にならざるを得なかったという訳である。



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