口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑪ 刹那のNo. 1編

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後からの話では、周りの席のお客さんもびっくりしてみんな見ていたようだ。


その日は、

たまたま先輩のお客さんの、

ヘルスの女の子も来ていた。


正直、可愛いとはお世辞にも言える娘ではなかったが、

「先輩をナンバーワンにする!」

と意気込んでかなり無理をして高いお酒を下ろしていた。


その娘も途中までは、

負けまいと熱に押されて後を追うようにお酒を下ろしていたが、

途中で諦めて、Yの勢いを呆然と見ていたのは、覚えている……。


K野専務が


「K!百万円のお酒なんて飲めるもんじゃないぞ!飲んどけ飲んどけ!」


と笑いながら、上機嫌で言っていた。

私は


(どうにでもなれ!)


という気持ちで、

まずいとしか思わないブランデーを、

飲み方もよく分からないままストレートで何杯か飲み、泥酔していった。


(ぬるくてまずい)

というのが……

味の素直な感想だった。


まずい理由は、

気持ちの問題もあったのかもしれない……。


店はお祭り騒ぎになり、K野専務やR華社長は喜んでいたが、

私はほとんどしゃべらなくなっていた。


その他の仲のいいホスト達も、席を盛り上げようとしてくれていたが・・・

Yが喋っているだけで、


私は多分……ほとんど喋っていなかったと思う


夢みたいだった。


しかし決して楽しい夢ではなかった。

どちらかというと、悪夢の方だった。



その日の会計表をみると300万を超えていた……。


その会計の紙を見た時の事は今でも忘れていない……。

自分の身に起きている事とは思えなかった。


のちに、嫌というほど思い知らされる事になるが・・・。


私はその後、売上を抜かれる事はなくナンバー1になった。


その日には、さすがのYも即金ではなかった。


「一週間以内に払うから。」


とその日は幕を閉じた。



今思えば恐ろしいが、

Yと私が同棲しているのは、もちろん店は知っていたので、

払えなかったら、私とYがグループから追い込まれていたであろう・・・。

300万であれば、追い込む価値が十分にある金額だ・・・。



その忘れもしない日から1週間経たないぐらいに、

Yは300万弱、全額をBに支払った。


知り合いの中国人に借りたといっていたが、

本当の所はわからない。



その時の売上で入ってきた給料は、私には一円も入らなかった。

100万程度入ってきた記憶があるが、

全てYに払った。

受け取れる訳がない。


細かい金額なども、覚えていない。


Bでのナンバー1という地位は、

ホストの人数がそんなに多い訳でもないし、

激戦の店という訳でもなかったので、

とんでもなくすごい事だったとは思わない。


しかし、

Bではナンバー1になってしまった。

その事で次に、さらに問題になってくる事があった。


「ホストは一回ぐらいナンバー1をとった所ですごい事ではない」


という事だ。

なぜか・・・・・・?


「ナンバー1を維持し続ける」


という事がすごいのだ。


一度だけのナンバー1など宝くじが当たった様なものだ。

一度だけのナンバー1に対しては実際、

周りも宝くじが当たった様なものだと思われ冷ややかな見方だ。


ナンバー1を維持して初めて実力と認めてくれる。


半期だけしかナンバーに入れなかった場合は


「所詮、ラッキーでナンバー1になっただけだろ。」


と逆に恥をさらす状況になってしまう。

私はまだ、宝くじが当たっただけの様な状態だったのだ。




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