口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑮ 脱出編

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一方で、

私生活の方であったが、もう限界だった。


そのタイミングでの、

N美の登場が余計にそう思わせたのかもしれない。


電話も見れない。

電話が鳴る事がストレスになる。

電話が鳴るのはほぼ90%お客さんしかない。

出なかったら出なかったらで出ろと言われる。

さらに詮索される。

うかつな事は話せない。

ケンカになる。

ケンカといっても私が一方的に怒鳴られているだけだ。


何百万というお金をYが使ってから、


私達の関係は決定的な上下関係が出来てしまっていた。


あまりにも我慢の限界がきて、

初めて女を蹴った。


以前書いたが、

蹴った後に家を飛び出そうとしたら包丁を持ち出された。

Yを蹴った後の、お互い興奮している状態での包丁は、

とてつもなく恐怖を感じさせた。


そうしてさすがに、


(俺、なにやってるんだ?

毎日毎日毎日我慢して・・。

こんな付き合いに意味があるのか?

これが自分の求めていた年上のお姉さんとのハッピーライフなのか?

こんな付き合いがハッピーな訳が無い。

こんなにも我慢する付き合いが正常な関係だとは思えない。

こんなのヒモでもない!

ヒモでもなく奴隷だ!

もう限界だ!)


その様な決断から一週間後に、

私は荷物を持ってYの家を出た。


今では汚点なのが・・

Yから買ってもらったスーツ類も、

キッチリ持っていったのがセコかった・・・。


まぁ、Yから買ってもらったスーツ類が無ければ、

全裸で出勤しなければいけない様な依存っぷりだったので

許して上げて欲しい・・・



荷物は服だけだったので、

大きめのカバンに詰め込めるだけ詰め込んで。

Yが寝ている間に、Yには何も言わずに家を出た。

その時の隠密行動は、

CIA並だったと記憶している。



悟られないように、

短時間で衣類を詰め込めるようなポジションにカバンを置き

Yの眠りが深いタイミングで、

布団から転がるように離脱・・・。



・・・包丁が完全にトラウマになっていた。


Yの家を出るという決断下すまでにも

自分の中でとても悩んだ。

家を出た所で、店で働いている以上、

Yが来たらどうしようもない。


かといって、Yの家でそのまま暮らすのも限界でそれしか選択肢はなかった。


Yの家を出てタクシーに乗った時の開放感は忘れる事が出来ない。

思いっきり名古屋なのに、

まるでハワイへ来たような開放感であった。

ハワイには行った事はないが・・・。



その日からまた寮暮らしが始まった。



その頃Bの寮には、

グループの他店から移動してきたS君が寮に住んでいた。


S君のホスト歴は私とほぼ同じで歳は私の一つ上だったが、

いつの間にか大の仲良しになっていた。


S君は背こそ低かったが、

甘い顔立ちであり性格もさっぱりとして男らしかった。

事実、モテていた。


移動前の店では、入店数ヶ月ですぐにナンバーに入ったという、

負けん気が強く、

ホスト向きな性格だった。

そして、私は近くで見ていたが、

努力家だった。



私とS君は2LDKの寮の、

5畳程の和室の部屋に二人で寝る様になった。


・・そしていつしか恋人関係に・・・


すいません、

冗談です。嘘ですよ(笑)



2LDKの一人部屋は、

社長がアリバイ作りの為に部屋を確保しており、

リビングには不定期に酔っぱらったホストが、ごろ寝できるスペースになっていた。


リビングは、世紀末の様な汚さだった…


S君と私の和室は布団を二枚引いたら、

もうほとんど歩けないぐらいの広さだった。

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