口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑯ ボケる! 編

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Yの家からスティーブ・マックィーンばりに大脱走した頃、


N美から電話がかかってきた。





N美「ねぇ、今度二人でご飯行こうよ!」



私「もちろん!!」




Yに対しての罪悪感は感じていたが、

その罪悪感を上回るほどN美が気になっていた。

事実、


(N美からの電話があったらどうしよう・・・)



と思っていた事も脱出の理由の一つだった・・。



N美からご飯の誘い・・・



その時はまだ自分に起きている事が信じられなかった。

つい約2年前まで鉄パイプとランデヴーしていた自分なんかに、


綺麗で、全身ブランド物で身を固めている

こんな派手な子からご飯の誘いがくるなんていう事が・・・。



私は電話を切った後に、5畳の和室でスキップをしていた。



当日、栄でN美と待ち合わせをしていたが、

酒もないので、緊張をほぐす手段もなかった。


タバコをとてつもなく吸っていたのを覚えている。

副流煙が周りの方に迷惑極まりなかったであろう。


N美「お待たせ~。何食べよっか?」


N美はいつもと変わらず全身白でまとめたゴージャスな格好であった。


私「・・・・何食べようか?でもあんまり高い物は・・・」



ダサイ!すこぶるダサかった!


しかしそれもしょうがなかった。


財布の中には1万円程度しか入ってなく。

ヴィトンの長財布も見せかけだった。


Yから


Y「本当に、お金を持ってる人は小銭入れが付いている財布は使わないよ。」


というレクチャーを受け、長財布で二つ折りの、

小銭入れが付いていないヴィトンだった。

その時の私は・・・


小銭でいいから欲しかった・・・。






話は戻るが、

何も言わず高い店に入ってしまったら、


皿洗い等で料金の超過分を支払わなければいけなくなり、

N美を待たせる事になる・・・


というか待たせるという問題ではなく、


ダサすぎるし、
警察のご厄介になってしまう可能性もある。



なにより、N美が身に着けているものから推測した時に、


(とんでもない高級店を提案されたら、ヤバイな・・)


という不安もあったからだ。


N美「はぁ?何言ってんの?
私が誘ったんだから今回は私が払うよ。」



(なんていい子なんだ!!そしてなんて私はダメな男なんだ!!)




と思いながらも、内心は胸を撫で下ろしていた。


その時、良くぞ自分を嫌いにならなかったと褒めてあげたい・・・。



N美は


「蟹が食べたい!」


と連呼しだしたので、蟹を専門で扱っている店へと向かった。


まだ20歳、

中の下の家庭の子。

雑種の犬と雑種の猫が共に一匹づつ。

現在5畳の和室に二人暮らし、


の人間には、とてもじゃないが行った事が無い店だった。


仲居さんに案内され和室の個室に通された。

その時は料金を払えない自分の情けなさを

あれこれ考えてもしょうがないので、

割り切って料理を楽しむ事にした。


・・・・・いや、私も蟹は大好きだった。

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