40才からの成り上がり 第2話

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何だろう、貧乏だったけれど、僕が小さい頃感じた、家族全員でいることの安心感や幸福感



そんなときだった、

少しずつボクら家族の歯車が狂い始めたのは




「LINEで退職勧奨」

ボクは田舎から出てきて、まだ創業したばかりの会社で働いていた

純粋に会社を大きくしたい一心で、身を粉にして寝る間も惜しんで働いてきた



しかし長年の無理が祟ったのか、数年前から持病の椎間板ヘルニアが悪化し、

痛み止めの座薬を使っても効かず、椅子に座っているのもつらい状態



そしてある夜、寝ているときに背中から腰にかけて、電流を流したような激痛に襲われた


結局、救急車で病院に運ばれ入院。そのまま手術することに




入院してから手術するまで約2週間、退院して仕事に復帰出来るようになるまで約2週間

合計1ヶ月ほど会社を休むことになった



しかし初めは心配して、しっかり体を治すまで休むようにと言っていた社長が、手術後から


社長
いつまで、会社を休んでいるつもりですか?
社長
今月は、給料払わないから傷病手当を申請しろ



何度も何度もLINEを送ってきては、復帰の催促を迫る



1日でも早く会社に戻って、仕事が出来るようにボクはリハビリを頑張った



そしてある夜、社長からLINEで

社長
いつまで、好き勝手休んでいるつもりですか?
仕事が出来ないなら、会社を辞めてください




ボクはあまりの悔しさに涙が出た



今まで、家庭も顧みず体を壊すまで死ぬほど働いてきたのに


「結局、自分も社畜の一人に過ぎなかったのか?」

「20年近く、会社の為に働いてきた時間は全て無駄だったのか?」



自問自答を繰り返したボクは、退職することを決意する

すぐに転職を考え、右往左往するがなかなか思うような仕事が決まらない



寝ていても、仕事をしていた頃の夢を見るようになり、大量に汗をかいてハッと

夜中に目が覚める



この頃のボクは、ちょっと鬱ぎみだったかもしれない




時間だけがあっという間に過ぎていくなか、

あるとき家族でご飯を食べているときに、末っ子


末っ子
家族っていいな~
お姉ちゃん
なに?いきなり
お兄ちゃん
面白いこというね!
末っ子
だってさー、今まで皆そろって、ご飯食べたことないじゃん
いつも、パパ家にいないしね(笑)



食卓は家族みんなの笑い声に包まれる



僕はこの時に思った

この20年近くずっと仕事ばかりで、たまの休みも寝てばかり、

子どもたちのことは彼女に任せきりで、どこか遊びに連れて行ったことさえない



失業してから自由な時間が増えた分、今後の人生について

どう生きていこうかと考えるようになった



「せめて自分の家族だけでも、幸せにしたい」

「死んだら終わり、生きてさえいれば何度失敗してもやり直せる」




そう考えた僕は、失業保険が切れる月に、自分で起業して生きていくことを決断した





しかし、我が家に降りかかる災難は、まだ続く




「家族の死」

19歳のとき田舎を飛び出した僕らが、彼女の寂しさを紛らわすために、飼ったのがまだ生まれたばかり子猫だった



この19年間変わらず、夜は僕と彼女のそばで寝ている


大きな病気や怪我もなく、親孝行な娘だ


あの細い眼で、一番近くで家族を見守ってきた彼女は、どんな風にこの家族のことを見ていたのだろう?



そして、その日は突然やってくる



いつかその日が来ることを覚悟していたとはいえ、あまりにも突然だった



いつものように、ボクらの布団でいっしょに寝ていた彼女は、眠るように静かに息を引き取った



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