「浮きこぼれた子」が考えていること。

 私は高校生の頃は、高校の教師の言うとおりの受験英語を一生懸命に勉強した。名古屋大学に現役で合格したのだから、言われたことをマスターしたと思った。
 しかし、まったく英語が使えない。
 それで、大学生の頃は大学の語学センターに通いLL教室で学び、ネィティブの先生に英語を習った。
 しかし、まったく英語が話せる気がしなかった。
 そこで、民間のECCという英会話教室に通い、NHKの放送を聞き、リンガフォンという音声教材を購入して英語を勉強した。
 しかし、実際にネィティブの言うことを聞き取ることが難しかった。
 結局、私のたどり着いて結論は
「誰かの作ったカリキュラムや教材ではダメだ」
 ということだった。私の結論が誰にも通用するとは思わない。単に、私の才能が足りないだけかもしれないからだ。しかし、私は四日市高校、名古屋大学というコースをたどった勉強ができる方の子だった。
 私がダメなら、ほとんどの生徒にも使えない方法と言えるのではないだろうか。
 それで、結局30歳で英検1級に合格するまで独学をするしかなかった。アメリカに渡り、帰国後はネィティブについて過去問を徹底的にやり、英語で日記をつけ続けた。
 数学も同様だ。40代の文系出身だったから、数学Ⅲを習ったことがなかった。それで、オリジナル、1対1、チェック&リピート、赤本をそれぞれ2周ずつやった。
 それぞれの教材は、
「これをやれば大丈夫」
 というウリで販売しているものだが、そうはいかない。英語の勉強の時に嫌というほど思い知らされたので、
「そんなわけがないだろう」
 と思い、自分で納得のいくまでやることにした。Z会も8年間やり続けた。京大模試は10回。センター試験も10回。京都大学の二次試験は7回受けた。
 何かのカリキュラムをやれば数学がマスターできるなんて期待していなかった。自分の感覚が一番優先される。
「もう大丈夫」
 と思えたのは、
(1)、たいていの問題は解ける気がしてきた。
(2)、京大模試で偏差値60を超えた。
(3)、京大二次試験で正解率が7割を越えた。
(4)、四日市高校のトップクラスの子に質問されても慌てなくなった。
 こういう確認作業が済んだら、大丈夫と思えるようになったわけだ。誰かの作ったカリキュラムを完成させたからではない。
 これは、英語と数学だけでなく格闘技をやっている時も感じたことだ。少林寺拳法の二段、黒帯を得ても
「暴漢に襲われたら大丈夫か」
 と考えると、疑問があった。型ばかり習っても、実戦では使いものにならないと思った。ブルース・リーがジークンドーを始めたのも同じ疑問からだった。極真会がフルコンタクト空手を始めたのも同じことだ。
 英語は、使えないと意味がない。世間で流通している練習方法を全部やっても意味はない。数学も同じことで、チャート式を最初から最後までやったから京都大学に合格できるわけではに。
 私の塾生は本当に優秀だ。今年は、慶応大学の医学部、医学科に合格者がでた。京大理学部に合格者がでた。6年連続で、京都大学の合格者がでた。
 こういう子たちは、高校生にして上記の極意のようなものを身につけているので驚きだ。私など足元にも及ばない。将棋の藤井プロが師匠を破って、師匠を追い越したと騒がれているけれど、あんな気分。
 私が10年かけてマスターしたことを3年でマスターしてしまう。
 逆に、落ちる子たちは私の現役時代のように幻を追い求めている。河合塾や、駿台の提示するカリキュラムをやれば難関大に合格できると誤解しているわけだ。
 そんなものは、空手の型と同じであって、実戦では役立たない。素人よりは強くなるかもしれないけれど達人相手には使えない。実戦に強くなりたいなら、型ではなくて実戦の場数を踏むしかない。
 場数を踏むと、自分の中に「大丈夫」という感覚が生まれるのだが、それは相手に説明ができないもの。実行した人だけが分かるもの。
 私のような田舎の塾講師でも、大学受験の5日前にノイローゼで痙攣を起こし入院させられた。3日前に退院したけれど、ドクターストップがかかっている中で受験を強行した。
 アメリカに渡った時は、帰国後に無職、貯金ゼロ、資格ゼロ、彼女なしになることが分かっていた。英検をはじめとする資格試験を受ける時は、39通の不合格通知・合格通知を受け取った。
 京大を7回受ける時は、40代のオッサンだから受験会場で不審者扱いを受けて入場を拒否されそうになった。
 それくらいの覚悟が必要だ。誰かのひいたレールの上を走っていれば、何かが身につくなんて考えている人は、最後の失望する結果に終わるだろう。
 世の中、そんなに甘くないのだ。
 私の塾生の子たちは、高校生なのに上記のようなことを理解している子が多い。私が驚くのは、英語や数学の学力というより、この現状認識だ。文科省や学校の教師が何を言っても揺るがない。
 「ゆとり教育」や、強制クラブ。今は小学校から英語指導だ、センター試験に代わる新テストだと騒いでいる。教育とは何かを全く分かっていない人たちが制度設計をしている。
 賢い子たちは、呆れている。だから、教師の言うことなど適当に聞き流して内職に励む。クラブが好きなら続けるけれど、意味がないとなったら自主的に幽霊部員になる。躊躇などしない。
 だって、大人や制度が間違っているのだもの。付き合いきれない。ただ、日本社会は人と異なる行動をとると徹底的に叩くので、無用な摩擦を生まないように適当に演技をする。
 その大人の対応にも驚かされる。せめて彼ら、彼女らの邪魔をしないで欲しい。英検2級の講師が、英検1級の生徒を指導しているのを見たことがある。Cランクの大学を卒業した講師が、京大受験生を指導するのを見たことがある。
 微分・積分の難問にチャレンジしている生徒に、単純な計算の作業をさせるのは苦痛だと分かっているだろうか。みんなと同じことをやらせる必要があるのだろうか。
 浮きこぼれた子たちは、医者になって患者を救ったり、世界の経済戦争の先頭に立つ子が多い。そういう子の勉強する環境を整えてあげて欲しい。
 今は、落ちこぼれ対策の話ばかりで静かに日本脱出を考えているトップ集団を無視していると思う。これでは、日本の将来は暗い。

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