最愛のビッチな妻が死んだ 第32章 対話と邂逅

前話: 最愛のビッチな妻が死んだ 第30章

「北原さんの快楽や楽しみはなんですか?」
心理カウンセラーの専門学校で仲良くなった友人にこう聞かれた。

「昔はデートとか一緒に体験するすべてが快楽だった。今は時間を潰しているだけで快楽や楽しみはないかも」
「楽しんじゃいけないんじゃないかってのがあって、楽しい状況でも楽しいって感情は湧かない」
「苦痛の方が嫁に近づけてる感じがして心が合う感じ。今現在は、だけれども」
「たまに、音や幻覚、幻聴や夢でも、嫁と会えた時はうれしい」
求められていた答えとは違うのは分かっていたが、僕はこう返信した。

「ほー
嫁さんは楽しんでもらいたいと思っているんじゃないかな?
一緒にいる時は楽しまないといけなかったのでしょう? 」
その通りだと思う。いつだって、あげはは全力でいまを楽しんでいた。うまく場を楽しめない僕に不思議そうに「キョウスケは感情出すのがホントにヘタね。楽しい時は自分なりに楽しんでいいのよ」、そう笑っていた。

「なぜ、後を追わないのか怒ってるかもしれないし、心配してるかもしれないし、僕には分からない。だから、心や感情がフラフラ不安定」

「でしたら
好きなことをして楽しんだ方が嫁さんもいいと思うと思いますがね
そうなのかな」
「前と違って違和感が抜けなくて、心から楽しめなくなってる」

「そのままの自分を受け入れましょう
違和感もあなたの感覚なので大切に」

「わかった。大事にするよ」

「自分だけは信じてあげて」

「ありがとう。やり過ぎだよって苦笑させたいから、まだ少しやり残したこと、やりたいことがあるし」

「(*˘︶˘*).。.:*♡
思い通りに生きなよ」

「余生はそう使うつもり」

「私の様に縛りがないのだから」

「そうだよね。比べるものではないけれど、自由さはまだマシだから」

「自由に生きなよ
私にできないこと、やってくださいよ」

「ありがとう
薬は毒にもなるしね」 

「毒は毒で制す
がしょせん毒」

「だね」

「毒
今なにげに死にたがり」 

「なんかあった?」

「いつもの死にたい症候群的なもの
んー
死にたいより切りたい
何か痛みがほしいなーって思ってる」

「代わりに僕を切るかい?」

「どうやって
人にやるならトコトン人体実験したい」

「車で迎えに行くよ」

「こなくていいわ」

「ナカタさんが自分を切るよりマシだ」

「いやいや
私の精神安定剤が痛みなのでね
全身人体解剖はやったことあるので、他の楽しみをやってみたいですね」

「なんでもいいよ。たとえば?」

「暗闇の中で次亜塩素酸を人の頭に一滴づつたらしてみたい
熱した油を臓器にかけてみたい」

「痛そ」

「精神を壊したい
私が自分にやろうと思ってることを人にやってみたい
目をえぐってみたい。麻酔なしでね」

「終わったら、スミ入ってる部分と右腕切り落として妻の祭壇に捧げてくれるならいいよ」

「そこまで私はお人よしではないのでね」

「メンド臭い注文だろうしね」

「わらわら」

「僕たち、何話してるんだろうねw」

「さあー
私のやりたいことではないですね」

「僕が先に行ったら、ぜひお願いしたいことではある」

「何を?」

「さっきの注文」

「あースミね
無理」

「早」

「面倒くさいです」

「そこをなんとか」

「私はお人よしではありません
気分によります」

「気分が乗った時でいいから」

「あと、死人に口なし」

「痛いとこ付くねえ」 

「痛くも痒くもないですよ私はね笑笑」

「お願いします」

「では手間を省いて奥さんに貴方の身体丸々捧げておきますよ
できればの話ですけどね🔯」

「助かるよ
楽しみにしてる☪️」

「まあ〜現実的にはわかりませんけどね」 

「まあまあ、気が向いたらで」

「そうですね
楽しそうならやりますよ」

「楽しいよ、きっと
お人よしじゃなくても」

「その時考えますよ」

「よろしく」

「私が死んでたら無理ですけどね」

「そら、そうだ
その場合、何かしてほしいことは?」

「ない」

「刃物がないから切れないし
ハサミなんて意味ないし」 

「痛みがほしくてたまらない。今日はオールだしね
狂っているのに狂いそう
滾ってしまいそう」

「止めはしない。が、止めたい」

「何をとめるのよ」

「狂うのを」

「狂ってるから平気ですよ
言葉もしっかり打ててるから、まだ吹っ飛んでない」

「そうかもしんないけど、止めたい気持ちが湧き上がるのは仕方ない」

「お人よしですなー」

「当然、心配するさ」

「なぜ?」

「僕にとっては恩人だからね」

「何かしました?
私何かしましたっけ?」

「お話してくれたよ、いっぱい」

「それは、恩ではないでしょう?」

「僕にとっては恩人だ」

「話す人など多くいる
誰にでも聞くことはできる」

「全部を受け入れて受け止める人は少なかった」

「そうね
ほとんどが受け入れずに文句を言う
感謝だけでも、すればいいのになーって思う」

「聞く耳すら持たない人ばかりだった」

「そうか。
私はホラ吹きだから知らんがな
自分から真実を語ろうとは思わない」

「たとえホラ吹きだったとしても、聞いて返してくれたから感謝してる」

「そうですか」

「そうだよ」

「んー
面白い」

「何が?」

「いやーなんで赤の他人にここまで心を開けるのだろうと思って
しかもお人よしですからね」

「なんでだろね。
うれしかったからじゃないかな」

「そうですか、うれしかったんですね。
どの様に? 他の人にもいたでしょうに
自分の周りに少しいるのでは?」

「2人だけだ
あげはと太一さん。妻とお義父さんだ」

「2人もいるではないですか
私がなんてまだ完全に心を開ける人なんていませんよ」

「もうお義父さんは彼女さんに返した」

「では今は1人に話しているということですね」

「そうだね」

「ほーなら、私に話したいということですか」

「妻は返事をくれない」

「そうね」

「もしくは僕が妻のとこに帰るかだけだ」

「話が通じる人と話がしたいってことですかね」

「そうかもね」

「嫁さんのとこには簡単に行けませんよね」

「みな気味悪がって遠ざかる」

「ふーん
で、私は遠ざからなかったと」

「苦痛を味わうことで妻の追体験ができるしね。
もっと苦しまなければ届かない
だから、恩を感じてる。変かな?」

「おかしくはないと思いますけど。
ん〜?
要するに私は嫁さんに似ていると」

「半分くらいはね」

「他は話が合うからと
それで私の痛みを止めたいと」

「そうだね。止めてもムダなのはわかっても、止めたい」

「スゴいな。
お人よし過ぎて私が付き合ってていいんだろうか」

「大丈夫だよ」
相手は僕より干支一回り以上に年下の少女だった。心を開ける3人目ができた。

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