キューバなんて行かなきゃ良かった。

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…このクソババア。
徐々にイライラし始めるぼく。

「まだ着かないのか?」
身振り手振りでババアに伝える。

するとババアが家を指差し、
「この家の2階だよ。いってみ」
みたいなことを言ってきた。

僕「サンキュー。行ってみるわ。その前にダウン返して」
ババア「寒いからこのダウンちょうだい」
僕「いや無理。感謝してるけどそれは無理」
ババア「あれ?よく見たらこの家じゃなかったわ」

こんな感じのやりとりをした。
このやり取りから、僕はババアに不信感を持ち始めた。

その後も2、3回同じやり取りを繰り返した。

…怪しい。
そう感じた僕は、チップを要求しないと言われているキューバ人の
ババアに対して1CUCを差し出し、

「もういいわありがとう。夜遅いんであなたの家に帰ってください。
あとダウンを返してください」

と必死のジェスチャーで伝えた。
時刻は1時を回っている。

僕がババアを連れ回したのか、ババアが僕を連れ回したのか。

ババアは浮かない顔をして、
「カモン」的なジェスチャーをしてきた。

…お、やっとちゃんと誘導してくれるのか。
これで着いて行くのは最後と決め、ババアに着いて行った。


歩くこと約10分。ボロボロのマンションのような建物に着いた。
それからエレベーターに乗り、10階に到着。
僕がエレベーターを降りた途端、ババアは扉を閉めようとしてきた。

僕は驚異的な瞬発力を発揮し、扉の閉まる前にエレベーターに乗り込んだ。

このババア、僕を巻こうとしている。
僕は平常心を保ちつつ、エレベーターが1階に到着するのを待った。

ババアは何事もなかったように僕の前を歩く。

僕「もういいわ。自分で探すわ。ダウン返して。はい、お礼に1CUC受け取ってよ」

ババアはやっとダウンを脱ぎ、僕に返してきた。
そして、
お金は良いからパンを買ってほしい。的なことをスペイン語言ってきた。

こんな時間にパン屋なんてやってるか?
と疑問に思いつつ、ババアが指差す方を見てみると、

あった。
しかも道端に。

日本の駅前にある、バスの定期券売り場みたいな建物で、
たしかにパンが売っている。

(日本人であそこでパンを買ったことがあるのはおそらく僕だけ)

1CUCでフランスパンを2つ購入。
ババアにフランスパンを渡した。

すると次の瞬間、

僕の財布目掛けて手を伸ばしてきた。


おっと?それが狙いか?
てか、目つき変わってない?


ババアは人が変わったように僕の財布を狙ってくる。

さすがに怖い。

僕「わかった。こうしよう。お金渡すよ。はい、10CUC」
ババア「ノー。足りない。全部出せ。」

おいおい。話違うじゃん。なにこの展開。
旅に出る前に親と交わした約束、抵抗しないこと。

僕は空港で両替した日本円1万分の100CUCを差し出した。

キューバ人の年収は2万。年収の半分を一瞬で手にしたんだからもういいでしょ。
そもそも、キューバでは観光客に手を加えることは厳しく罰せられる。

「もっとあるだろ。出せ」

え、まだ?笑

「ノーノー。もうないよ。財布みるか?ほら、ないだろ?」

財布を3つに分散させていたので、見せた財布は本当に空っぽ。

しかしババアは
「エウロ!エウロ!」
と言ってくる。

さすがに頭にきたので
「うるせえ!エウロってなんだくそばばあ!」
と日本語で言い返した。

僕は今、キューバ人と深夜2時に喧嘩をしている。

「エウロ!エウロ!」
「うるせえ!何言ってるか分からないから日本語で言って来いアホ!」

(恥ずかしながらエウロがユーロの意味ってことは帰国後に知りました)

「警察呼んでやるよ!お前困るだろ!」
そういって僕はiPhoneをポケットから取り出すと、
ババアは僕のiPhoneを奪い取った。

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