『祖父のチャーシュー』

 

祖父は、その昔、銀座でラーメン屋(5店舗)を営んでいた。

 

ボクが産まれた時にはそのラーメン屋はヤメていたので

実際のお店は見たことは無いのだが、当時、新聞に取り上げ

られる程、行列が出来るラーメン屋であったそうだ。

 

お店は見たことが無かったが、食べたことは何度もあって、

正月に一家が集まる度に麺を打ち、スープを仕込み、

チャーシューを作って子供や、孫、親戚に振舞ってくれていた。

きっと、みんなが来るのを楽しみに、数日前から仕込みをしていたのだろう。

 

味の方は、ラーメンは勿論美味しいのだが、それ以上に

チャーシューが抜群に美味しかった。

 

元日の朝9時に一家全員が必ず集まる、という風習を

ずっと守り続けていた我が一族であったが、

お昼ご飯に必ず出てくるチャーシューが正月の楽しみだった。

 

しかし、そんな抜群チャーシューが、もう食べれない・・・

 

祖父は、92歳363日で他界した。(2日後の誕生日に告別式…)

 

もう、ずっと寝たきりであったし、そろそろ、そろそろと

言われていたので、覚悟も出来ていたし、93歳なので大往生だとも

思うのだが、いざ、顔や姿を見ると、悲しくなる、寂しくなる。

 

強面で、厳格な祖父には孫が10人いるが、他の孫との会話とは違い

ボクが行くと、笑顔で話を聞いてくれたり、普段は無口なのに、

よく喋っていたらしい。(祖母とかに聞くと)

ボクがいない時(他の孫と話す時)の祖父を知らないので、

比較が出来ないのだが、そういう話を聞くと、純粋に嬉しかった。

 

学生の時はラグビーの話を、社会人になってからは仕事の話をすると

興味深く聞いてくれたり、聞いた話に対して、

意見やアドバイスをしてくれたり・・・

 

祖父から何かを "学ぶ" というよりかは、"感じる" ということが

多かったな、と思い出される。

 

今、悔やまれるのは、チャーシューの作り方、ラーメンのスープの作り方を

聞いておかなかったこと・・・これはカナリ悔しい。

 

もう直接本人には聞けないので、長男(ボクの叔父)に受け継がれている

はずなので、教えて貰って、自分でも作れるようにしたい。

 

元日に集まる習慣のような、一族で続けてきたことや、今まで守ってきたことは、

チャーシューだけじゃなく、シッカリと受け継いでいかなくては

いけないな、と改めて感じさせられた。

 

これが、祖父からのボクに対する最期の教えかもしれない?

  

 

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