22歳上の彼女と暮らして見えた母の姿②
母と僕との関係性
僕の実家は田舎で自営業をしている。父は比較的優しくて、子どもに対して指示をするタイプではない。その一方で、母は「あれしなさい」「これしなさい」と常に指示をするタイプの人だった。
兄弟は4人、僕は2番目。
特別、仲が悪い感じもなかったし、大きな問題もなかった。
所謂、一般家庭そのものだったように思う。
ただ、僕は小さいときから、なんだかわからない違和感を覚えていて、それを上手く昇華できずにいた。
母に対して、中学校ぐらいまで反抗していた。
「なぜ、外の世間への対応と家の中での対応がまるで別人なんだ?」
そんな風にいつも思っていた。
印象的なエピソードがある。
母の家での言動を、小学校の時の部活のチームメイトやその親に話したことがあった。
そのことを家に帰って言うと、
「自分の家の中のことは、外では言わなくていいの!!」
母と姉に激しく怒られた。
家でのいつもの会話を話しただけで、そんなに激しく怒られる理由がどこにあるのか、さっぱり分からなかった。
母は、自分がいいと思ったものは絶対押し通す。たとえ僕がどんなに嫌でも、それをしなければならなかった。
塾や勉強、進路のことまで過干渉で、あれもこれもと決められる関係だった。
そんな指示で育ってきた僕は、自分の感情で、心の底からこれがしたいと思うことがなかった。
幼稚園の時、プラモデルを組み立てるのが好きだったから「ものづくりが好きだろう」という親のアドバイスをそのまま鵜呑みにして、大学は就職に有利と言われている機械工学を専攻していた。
結果的に、全くその職種では働いていない。
でも、こういう家庭って多いんだろうと思う。
親の決めつけや思い込みによって、子どもの意見や考えを全く尊重せず、親が意思決定しているようにも見える。
ただ、僕は親になったこともなければ、教育の現場で働いたこともない。
だから、子育てはこうあるべきだ、なんて偉そうなことは言えない。
だけど、一つわかることがある。
そういう親の元で育った子どもの本当の気持ち。
どんなに良い子に見えても、
どんなに礼儀がしっかりしているように見えても、
どんなにニコニコしていても、
親や周りの人に嫌われないために合わせているだけ。
そして、本当に自分がしたかったこと、やりたかったことが何なのかを、忘れていく。
大学生まで友達はたくさんいたと思うし、気が合う人はいた。
ただどんな時であっても、絶対的に信頼できる人はいなかった。
親も、もちろん信用はしていない。
そんな人間不信だった僕が、「この人なら信用できる」と思ったのが、彼女だった。
僕だけでなく、彼女に出逢った人はみんな言う。
「こんな人に初めて会った。」
(続く)