殿堂入り1位の顔芸が出来なくなる日

「赤くなったぞ! リンゴ!」

国語の授業中にクラスメイトから罵声と冷やかしの声が飛んだ!


それを聞いて先生は注意をしなかった、いや、軽く、そういうこと言わないのよ。

くらいは言ったかもしれない。


なぜ? 罵声と冷やかしの声が飛ぶのか?


それは、国語の教科書を読むと私の色白の顔が、

5秒程で顔はもちろん耳から首まで真っ赤になるからだ。


この時の私は顔がほてり熱くなりのぼせたようになり、

頭の中は少々パニック状態になっている。


小学校のクラスメイトからすれば、この突然の顔の変化は

興味深く面白いのだろう、大声で笑う、冷やかす、じっくり見て楽しむ、反応は様々だった。


同級生の私が酔っ払いのおっさんのような赤い顔になってしまうのだから

面白くてしょうがないのもわかる、でも、なる方としてはつらい。


「ゆでだこ! リンゴ!」


素晴らしい突っ込みじゃないかとも思うよ、でもストレート過ぎる。

私はこの真っ赤になる状態を ”顔芸” と呼ぶことにした。


「今から、お前らに珍しい顔芸を見せてやるから、お金を払え!」

そう言えたらどんなに楽だっただろうか。


面白いなら、お金を払ってもらう、正直にいって貰ってもいいと思う。

辛さに対する対価としてもらいたいくらいだった。


この顔芸は私生活で頻繁に起こる現象になっていった。


音楽の歌の試験の時もひどかった、出席番号順に一人づつ歌っていく歌の試験。


名前が呼ばれた、来た、悲劇の時間開幕だ。

真っ赤になりリズムも狂い歌い終るまで歌い続ける、ここでも冷やかしと笑いがおこる。

何を歌っているかもわからないパニック状態、でも歌うのは好きだった。


こんな顔芸をはっきり自覚したのは、小学校に入学した頃のことだったと思う。

授業で問題をやりなさいと指名されたり、前にでて発言したりするときに顔が火照ることに気付いた。


そして、他のクラスメイトがそうならないことにも気付く、自分だけがなる異常な現象なのだと考えるようになった。


顔芸の時に頭を怪我したら傷から血が噴き出し出血多量で命が危険だと心配したこともある。


元々の色白の顔が、5秒程で顔から耳から首まで真っ赤の顔芸になる状態は

防ぐことができないしコントロールもできない、そして止められない。


「赤くなるな! 冷静に! 落ち着け!」


私の心の叫びは全く顔芸には聞き入れられない、既読スルーで全部無視される。


小学校から30代半になっっても続いていた、この顔芸とはとてつもなく長い付き合いになっていた。


大人になったら治ると思っていたのは考えが甘かった、ずっと治したいとは思っていた、

身近な人に相談しても答えはでない、


いままで一番多くいただき、難しいアドバイスが、もっと自信もちなよだった。

医者にもいかなかったし対人恐怖性なんじゃないの、なんて言われたりもした。


いつのまにか治すことはあきらめるようになっていた。


今までの人生で幼少期から会ってきた人は何千人といると思うけれど、

そのなかで、私の顔芸よりすごい人にお会いしたことがない、

そう考えてみると私は貴重な顔芸の持ち主ということかとも思ってきた。


ある心理学の講座にいったときのこと6人がけテーブル対面で1人ずつの

自己紹介などがあった、こういうのが苦手できつい、必ず自己紹介は顔が熱くなり顔芸がでる。


シャイでおとなしいというラベルも張られる。


思っていることなんて主張しない、

頭に血がのぼりプチパニックになってるのだから言えるわけもない。


ただ、不思議なことに顔芸がでないこともある。


それは、18歳から5年ほど演劇をしていた時のことだった、

その時は自分とは違う人を演じることができる自分からの逃避だったのかもしれない、

稽古中は不思議と顔芸はでるときとでない時がある。


市民ホールで700人もお客さまが入った中で小さな役を演じている時なども顔芸にならない自分がいた。


演劇公演で大きなホールで演じたから治ったのかと思えばそんなことはなく相変わらず悩む日は続いた。


世間的に顔芸のことを赤面症ともいうらしい、

自分はそうじゃないと思いたいが事実としては赤面症。


私がいままで歩んできた人生では、私以上の顔芸人はいなかったのだから、もう、

これを認めて出会った人の中では赤面ランキング1位にしてあげようと思う。


赤面の顔芸ランキング堂々の1位。


人生でお会いした誰かにぬけるものなら抜いて欲しかった。


長~い付き合いが続き、30代後半になると赤面症という顔芸は私を危険から守るためになくてはならない存在だと気付いたしちょっと認められるようになってきた頃……、


もう守ってくれなくても大丈夫だと、思えた、人として少し強くなってきたから……。


どんな時でもOKがだせる、自分の味方でいる、フィードバックして修正するスキル、伝わる話し方スキル、上手くやらなくてもいいゆるさ、完璧じゃなくてもいいメンタル、色々と身に付いてきた頃。


だんだんと顔芸がでなくなっていた。


「あれ~、最近でないんだよな~?」


ちょっと心配にもなった。治そうと思っていたのに。


今までの堂々ランキング1位もキープが無理そうかも。


まさかの1位を誰かにゆずることになるかもしれないとは、物心ついたときからのずっと30年以上続いた現役顔芸時代。一生現役だと思っていたのに、治らないと思っていたのにまさかの引退かな……。


もうそろそろくるであろう同窓会案内ハガキ、


今度小学校の同窓会であやまらなければならないことがあるんだ。

もう期待に答えることができない、笑わせることができないんだよ。


クラスメイトにはとても申し訳なくないけれど、あんなに楽んでいたのに、もうできないんだ。「やれっ」て言われてもやり方が分からないんだよ、全自動顔芸だったから。

あの国語の授業のシチュエーションを創ってくれたとしてもできなそうだ。


すまない、ただ、

「今回クラス全員分まとめて封筒に入れてくれ! 何をって? 毎日顔芸で笑わせたギャラだよ!」と同窓会幹事に言うセリフは決めている。


「赤くなった! リンゴ!」と言われた日が懐かしく思う。



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