平凡に生きてきたつもりが、一億分の一を引き当てていた話。~あと血液のがんになった話~
「過去にあったことを思い出さないで。まだ起こってもいない未来を想像しないで。」
「ただ、今この瞬間、息を吸って、吐いて。それだけに集中して。」
そうして診察は終わりでした。
たったそれだけですが、効果は絶大で、私は少しずつ眠れるようになりました。
先のことばかり考えるから、不安になる。
今この瞬間にだけ意識を向けること。
この時の体験は、ちょうど1年後また私を助けてくれることになります。
「治療終了と追加治療」
泣いたりふて腐れたり立ち直ったりしているうちにあっというまに一年は終わりました。
同時に、果てしなく長く感じていた8か月の治療も、なんとか終わりを迎えました。
これでようやく解放される。そんな安堵感と、
もし、これで治っていなかったらどうなるんだろう。
そんな不安もありました。
2017年3月。会社の休職申請が切れる時期でもありました。
与えられた休職期間を使い果たせば、退職を余儀なくされます。
突然休職に入った私は、やりかけていたこと、やりたかったことをいくつも会社に残したままでした。
「会社の皆も、担当していたお客さんも、復帰を心から待ってますよ」
と、同僚からそんな言葉をかけてもらっていました。
これだけ頑張ったんだから、治っていないはずはないよね。
そう信じて臨んだ、3月3日。
PET検査の後、主治医から結果を聞かされます。
「…病変、残っちゃいましたね。」
検査画像には、小指の先ほどの小さながん反応が出ていました。
「追加治療です。」
あっけなく、会社の退職が決まりました。
「予兆」
3月7日、放射線科に呼ばれました。
ひょろっとした感じの、眼鏡をかけた先生です。
「18回かけて、36グレイの放射線をあてます。平日にだけやるから、約3週間とちょっとですね。あてるところが胸のあたりだから、どうしても食道や肺にあたるなぁ…」
「副作用があるんですか?」
「食道が荒れたり、ものが飲み込みにくくなったり、息がしづらくなったり。まあ、個人差はありますがね。」
「痛くはないんですよね?」
「痛くはないです。」
治療で一番嫌なのは、痛みでした。
一生分の点滴はしてきたと自負している私ですが、ホントは採血注射すら嫌なんです。
痛くないなら大丈夫。しっかり終わらせて、今度こそ自由になろう。
前向きに治療を受け始めました。
治療を始めたばかりの頃は、副作用なのか少し頭がくらくらしたり、体のだるさを感じましたが、変わったことはそれくらいでした。
このままなら乗り切れる。そう感じて、毎日放射線科に通いました。
治療が進むにつれ、少しずつ、息のしづらさが出てくるようになりました。
ああ副作用が来たなと思いながらも、最初に説明を受けていたので疑問には感じませんでした。
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