Life goes on, Chapter 3-4
主人が帰ってくる!
ご主人を何度となく戦地へ送り出し、涙すら見せないほどの強さを持った、主人の上司の奥さんから電話をいただいた。
それから、ウェルカムバナー(welcome banner)と呼ばれるものを作った。
目立つように黄色い布に、WELCOME HOME OUR HERO, HONEY!と黒い文字で太々と書いた。一番目立つように。
ようやく、ご飯も三食口にできるようになり、爪を塗ったり、お化粧もするようになった。
主人が戦地へ向かって7か月、私は完全に女を捨てていたから。
いかん、これじゃ、戦地から帰ってきた夫もあきれ返るじゃないか。ようやくどうでもよいことに笑えるようになった。育児ももう少し頑張れば、主人のサポートも得られる、そう思うと夜泣きのたびに、あとX日の辛抱・・・と考えるようにした。
主人が帰ってくる日。
朝早く起きて、とっておきのワンピースを着て、ようやく8か月になる娘にもかわいらしいドレスを着せ、まだほとんど生えそろってない髪を無理やり一つにまとめ(しとしとぴっちゃんのような頭、といえばお分かりいただけるだろうか?笑)、バナーをたたみ、バッグを用意して、さあ、お化粧!
とその瞬間に、一本の電話がかかってきた。
7か月半ぶりに聞く主人の声。
懐かしい、と思う暇もなく、
「もう着いた」
ええええ?
この頃はよく分からなかったが、軍人生活ではままあることで、時間とは決まっているようで、実は全く決まってない。
途中の輸送を行うバスや飛行機の都合、上官の都合、天候・・・ありとあらゆるものに左右され、時間通りに動くことなんて稀なのだ。
久しぶりに聞く彼の声、嬉しいはずなのに、化粧すらできずに、家を飛び出すことになった。
出迎えの場所につくと、一体、みなどうやってこんなに正確な情報を既に知っていたんだろう?と思うほどの人数が集まり、フードブースが設けられ、バナーはあちこちに貼られていた。
私が頑張って作った目立つ黄色のバナーを広げる場所すらない・・・・(涙)。
とりあえず、見慣れた歩き方をする男性を探す。
背はそんなに高くないけれど、少し首を前に傾げ、顎が少し前に突き出て、肩をいからせて大股で歩く・・・・あ、いたいた。
私は娘を抱っこしたまま走って行って彼に抱き着いた。
実に7か月ぶりの彼の肌の感触や匂い。懐かしい。
でも、彼の抱きしめ方は実にそっけなかった。
娘を抱き上げて、「大きくなったね!」と喜ぶさまは、まさにお父さんのそれだったけれども。
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