心と戦う日々

 突然目の前が真っ暗になった。
 私がうつ病になるなんて思いもしなかった。

 昨年の春、桜が咲き祝いに包まれた空気の中、私は晴れて大学生となった。高校生の3年間はアルバイトと部活動に明け暮れ、突然と思いついた夢。
「好きな人を救えるようになりたい。そうだ。看護師になろう。」
 その夢を叶えるための道を歩み始めた。

 初めてのスーツ、初めての大学、初めての生活、初めての・・・
 いろんな初めてで包まれたわくわくした日々。
 これが大学生なんだ。
 授業を講義っていうんだ。講義、教授、キャンパス・・・なんかかっこいい。

 解剖学、看護学、哲学、倫理学・・・なんか大学って感じ。
 覚えること多いな。
 レポートだ。提出の締め切りまで時間がない。早く仕上げなきゃ。
 レポートが二つになっちゃった。大変だ。
 次回テストって急すぎる
 大変だけどがんばるぞ。

 誰がどう見てもちょっと大変だけど楽しそうな大学生生活。
 でも私は・・・

 はぁ。気づくといつもため息をついている私。
 私はなにがしたいんだろう・・・
 いつしかそんなことを考えるようになっていた。
 それでも私は勉強にはとても熱心に取り組んだ。
 それはそれは熱心に。
 その結果、成績はトップ。

 ちなみに私は高校が定時制だった。
 中学生で不登校になったからというのもあるが
 不登校でも成績はトップクラスだった。
 だから定時制でなくても進学校でもどこでも行けた。
 でも自由になりたかった私は
 定時制の高校を選んだ。

 定時制の高校から私立大学へ進学し
 しかも大学でトップの成績
 頭がよかったわけじゃない
 手が腱鞘炎になってでも勉強した。
 とてつもない努力を積み重ねた。

 でも・・・

 私は頑張った。
 とにかく頑張った。

 その結果、心も体もボロボロ・・・
 でも頑張らなきゃ。勉強しなきゃ。大学行かなきゃ。

 あれ?
 身体がだるい・・・

 次の日の朝。
 あれ?
 足が・・・動かない・・・なんで・・・

 私の様子がおかしいと感じていた大学の教授が、私のもとへやってきた。でもその頃にはもう歩けなかった。
 そのまま病院へ。
 そして医師からこう告げられた。

「あなたは重度のうつ病です。」

 え・・・なんて言ったの・・・うつ病?私が・・・?
 講義でうつ病は増加しているとか、うつ病は一生ものだって聞いてたけど
 まさか…

「治療の必要があります。
 しばらく休養してください。」

 休むの?大学は?成績はどうなっちゃうの・・?

 こうして重度のうつ病と診断された私は、しばらく大学を休むこととなった。
 一日、二日、三日・・・一週間、二週間・・・
 いつになったら治るの・・・?

 私のうつ病との闘いは、私の将来との闘いだった。
 このままでは私の将来はどうなるのだろう。そんな不安で押しつぶされてしまいそうだ。

 私は何度も時間を見計らって大学へ通った。
 学生と会うことができないから、講義中に廊下を通った。
 何度も教授と面談を重ねた。
 「私はこれからどうしたらいいですか。」と。

 時には、弱音を吐いてしまった。
 「いつになったら治るの。
  私はもう終わりだ。」
 「すごくしんどいよ。つらいよ。助けて。」と。

 何も答えが出ないまま、時間だけが過ぎていった。
 そして、もうすぐ定期試験。
 これが受けられなければ、私の夢への道が途絶える・・・
 私の今後を決める試験だ。

 だが、それは絶望的だった。
 私にとって大学はお化け屋敷。
 教室は出口のないブラックホール。
 同級生はみんなミイラ。
 同級生の声は恐怖の叫び声。

 バカみたいって思うでしょ?でも私にはそう感じていた。
 うつ病はそういう病気。
 
 あなたも考えてみて。
 あなたの学校や会社がお化け屋敷。その中はブラックホール。
 同級生や同僚はミイラ。常に叫び声が飛び交っている。
 そんな場所に行ける?
 お化け屋敷なんて怖くないって考えている人もいるかな。
 そんな人は真っ暗な病院の廊下か、真夜中の盆地とか
 とにかく大学っていう場所が恐怖でしかなかった。

 そのうえ、体はだるくて、いつも微熱があって
 すごくつらい。
 しかもそれが毎日24時間続く。

 そんな病気に耐えれる人なんているのかな。
 

 うつ病になるのは弱い人だからだ。
 心の病気なんて病気じゃない。

 そんな風に考えてる人は多い。でもほんとは違うんだよ。

 心の病気になる人はみんな頑張りすぎて、
 心に逆らって頑張り続けて
 心がもう限界ってなったときに
 身体をいじめる。
 そういう病気。だから決して弱い人じゃないんだよ。
 ただ頑張りすぎちゃっただけ。

 心の病気はすごくつらい。そしてすごくさびしい。
 誰かに助けを求め続けてる。
 でもね
 心の病気は、医者にもお薬にも治せないの。
 ならどうやって治すの?って思うよね。
 それはね
 自分自身なの。自分で自分のことをわかってあげるしかないの。
 だから自分をわかってあげて。
 自分は何もできないと思っていても
 それがあなたなんだよ。
 
 偉そうにそんなこと言ってるけど
 私は自分に言い聞かせているだけだから。

 でもそんなことわかっててもつらいんだよね。
 たくさん泣いたし、たくさん暴れたりもした。
 たくさん傷つけてきたし、たくさん・・・

 病気になるってことは頑張りすぎたんだよ。
 身体が休みたいって言ってるから休まなきゃ。
 もしかしたら、違う道に進むべきって教えてくれてるのかもしれない。

 そう考えたら病気をちょっとは認めてあげられるから。

 心の病気は外から見てもわからない。
 だからどこまで周りが認めてくれるのかってとても大事。
 誰か一人でも自分をわかってくれる人を見つけられたら
 それだけでも気持ちがすごく楽になる。
 唯一の居場所。
 
 居場所は待っててもやってこない。
 だから自分で探すしかない。

 私は二つの居場所を作った。
 一つは彼。もう一つは教授。

 話を聞いてくれて、「休んでいいよ」って言ってくれる。
 いろんな心の変化にも対応してくれる。
 泣いてもしゃべらなくても。
 そんな居場所なら、つらいってことも
 いつもは隠してるような心の変化も素直に出すことができる。
 だから泣いててもとても心が楽な場所。

 居場所を見つけたら
 ゆっくりゆっくり休んで。何もしない生活をする。
 そうしてるうちに
 ゆっくりゆっくり回復していくから。

 これも全部自分に言い聞かせていること。

 こんな心の変化をしているうちに、ついに試験が目前となった。もう期限が近い。試験を受けるのか。受けられるのか。
 私は答えを決めた。
「試験を受けて見せる。」

 試験を受けてからその先を考えればいい。
 とはいっても試験を受けることは簡単ではない。勉強に集中できない状態なのに勉強をしなければならない。試験では恐怖の大学へ行かなければならない。
 課題は山積みだ。
 
 試験の後、ゆっくり考えてみよう。
 これからのことを。
 ゆっくり。ゆっくり。
 きっと私に合った将来があるばずと信じて。

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