どこまで本当だったのかなあ・・・ももちゃん(風俗嬢に借金踏み倒された話)

俺は野々村太郎。バツイチの中年オヤジだ。寂しいから風俗には良く行く。ソープ嬢のももちゃんには、比較的長く通った。ももちゃんは、AKB48の込山榛香に似ている、といってもほとんどの人は判らないか。一応、こみはる、選抜入りしているんだけど。店を上がった後、いわゆるアフターで、何度かラーメンを食べに行って話したりしたせいもあり割と仲良くなった。ラーメンアフターは風俗嬢と仲良くなるのによく使う手で、出勤時間の最後の客として入り、上がったらラーメン食べようと誘うのである。ラーメンなら金額も高くないし、30分もあれば食べ終わるから嬢も帰りが遅くなるということはない。なのでだいたいOKしてくれる。

最初のラーメンアフターの際、ホストクラブ遊びに行こうかな、一緒に行く、と聞かれた。店に電話して男性同伴は初回5000円だと聞いていたから、そこそこ本気だったのだろう。12時近かったので帰りが深夜になってしまうので、お断りした(この当時はまだホストクラブの深夜営業が認められていた時代)。

ももちゃんは31才で昼間は休憩時間がかなり不規則な仕事をしている、今は妹と二人で生活しているがお金がかかるので平日の夜1回、土日の内1日を目途に店に出勤している、と言っていた。実際は当日欠勤が多かったので月4~5回の出勤という感じだったような気がする。ラーメン食べてから帰る時は、電車を使わず必ずタクシーだった。何回目かに店に行ったとき、てんかんの持病があって、しょっちゅう意識を失うので余裕がある時はタクシーに乗っていると説明された。また発作が起こった日は具合が悪くなって欠勤するとも。意識を失って階段から落ちた、と言って手足の痣を見せられたこともあった。

その内、店に在籍はしているが出勤しなくなった。念のために説明しておくと、こういうことは風俗店では良くあることだ。店側が在籍女性が沢山いるように見せたいとも、女性の気が変わって戻って来やすくしているとも、いろいろな説がある。インターネットの掲示板には、同一人物と思われるももちゃんのひいき客の投稿が何度かあり、俺とどこいったんだろうね、などとやりとりした。俺の他にも1人は親しかった客がいたんだなと思った。

1年近くたって、ももちゃんは店に戻ってきた。つるももになって。エステシャンだったんだね、たぶん。休憩時間がやたらに不規則っていうのは暇な時は長く休むということだったのかな。そういえば、おしゃれなのに爪は伸ばしてなかったものね。店に戻って来たのはスカウトに、30(才)もだいぶ回ったから新しい店に移籍すると条件が悪くなるので元の店に戻った方が良いと言われたそうだ。しかし自分の稼ぎからマージンをとられるスカウトといつまでも付き合い続けるなんておかしいと思った。

店に通うにはお金が必要で、当然ながら、そんなに頻繁にももちゃんに会えるわけではない。しかしある日、ラインで向こうから連絡があり、新宿で会いたいという。ももちゃんが友達と何回か使ったことがあるという歌舞伎町の焼肉店で食事をしながら話を聞いた。母親が若年性痴呆と双極性障害(いわゆる躁うつ病)の気があり介護施設に入っていて妹夫婦と自分で費用を折半しているという。以前は兄夫婦が母親の面倒を見ているといっていたが、兄夫婦はどこかに行ってしまったようだ。話に整合性がとれないが、お金に困っているのはわかった。てんかんの状態も悪くどの薬を飲んでもコントロールできないレベルなのだそうだ。

本筋から離れるが・・・Youtubeで見たことがあるが、重度のてんかん患者は数分に一度発作を起こす場合もあるという。唯一の薬は医療用大麻でかなり改善した、というプログラムを見たことがある。しかし日本では当然大麻は違法である。

風俗嬢と店の外で会ういわゆる店外については、いろいろ言われていて、食事代を払う、プレゼントをあげる、お金を払う、などをするとされている。店に遊びに行ったつもりで、と交通費代わりにと1万円を渡した。焼肉屋の支払いは2人分で1万円を軽く超えた。比較的高級店の部類に入ると思うが(女性の)友達と本当に来たことがあるのだろうか、と思った。ももちゃんは、やっぱりタクシーで帰っていった。去り際、タクシーの窓越しに手を振っていた。

風俗嬢は孤独な人が多い・・・というのが俺の印象だ。親兄弟と仲が良くそれをアピールする嬢もいるが、一般の人に比べると割合的には少ないような気がする。ももちゃんも、お金の件もあって家族がバラバラだと言っていた。力になってあげたいが何もできない。でも気休めで、できることはするよ、と俺は言っていた。それを本気にしたのだろう、5万円貸して欲しいと連絡がきた。風俗嬢は頼る人がいないこと多い。特にお金の面は。家族と仲が良い嬢ですらお金のことは別、ということで親に頼らず風俗を始めるきっかけになった、という話を良く聞く。

5万円の借金申し込み・・・思いっきり怪しいと思った。5万円位、最悪、サラ金で借りれば良いのだ。銀行だって与信枠とキャッシングの設定をしておけば何十万単位のお金が安易ではないかと思うくらい簡単に借りられる。しかし俺は、貸すことにして店で5万円手渡した。あげるつもりだから返さなくても良いよ、と言った。俺は性善説に立った考え方をすることがあり、仮に5万円を踏み倒しても心に残り、今後の人生でももちゃのなんらかの歯止めになるのではないかという思いからだ。

しかし間髪を入れず20万円貸して欲しいと言ってきた。これにはさすがに迷った。しかしこの頃になるとももちゃんに対し何か不思議な愛情のような感情が心の中にあることに気づいていた。しかし恐らくこれは錯覚で、これだけしたんだから裏切られたくない、裏切られたとすれば自分が、間違っていたことになる、だからまたする、という心理なのだと今なら思う。負けても負けても取り返せると言い聞かせてパチンコにつぎ込んだり、もうどう考えても騙されているとしか思えない女性が聞く耳を持たず悪い男性に貢ぐようなものかもしれない。

巣鴨の喫茶店で20万円を渡した。これはあげるのではなく貸すことにするが、返ってこない覚悟はしているよ、返ってこなかったら、まあ、恨むわな。と伝えた。店の出勤ペースから考えても20万円の一括返済はきついはずだから月5万円ずつかえすようお願いした。ももちゃんは、5万はキツイけどがんばる、と言っていた。お金に困っているのだろうからと俺の支払いで近所のスーパーで食品の買い物をした。俺は何だか楽しかった。まだ所帯持ちだったころ嫁さんと子供と良くスーパーで買い物したっけ・・・。食事でもどう、と誘ったが、さっさとタクシーで帰ってしまった。こちらは車外に立って見送っているのに、手を振るどころかこちらを見ることもなしに走り去った。後から考えればお金を調達するという用事が済んだので長居はしたくない、と思ったのだと思う。

このころインターネット掲示板では、例のもう一人の投稿者が悪口とまでは言わないがももちゃんを嘲笑するような内容の投稿をしていた。お金を借りているのは俺一人ではないな、それに店の客(複数)から借金している状況から考えれば銀行のキャッシングやサラ金からも借りている可能性が高く借金は大きな額になっているのだろうと思った。

ももちゃんは店にほとんど出勤しなくなった。借金に追われてもっと割の良い店に移ったのかもしれないと思った。もしかしたらこのまま飛んでしまうのかも。25万円は痛いが仕方がない。俺は命さえとられなければ、全てのお金の損は勉強代だと思っている。まあ、勉強代が凄い額すぎて自ら命をたってしまい、結局、勉強代じゃなくなる場合もあるようだが。

ももちゃんも25万円もあきらめようと思い始めた矢先、ももちゃんからお金を返したいから銀行の口座番号を知らせて欲しいと連絡が来た。そして本当に5万円が振り込まれた。俺は嬉しかった。返す気があったのだ、と(しかし今では、信用させてさらにお金を引き出すための餌だったのだろうと思っている)。

数日おいてまた借金の申し入れがあった。あるだけでいいからお願い、というものだった。俺はももちゃんは頭の良い娘だから理解してもらえるだろうと期待し、返済は無理だろうが(複数の借金を)整理しろ、少なくとも友人、店などから借りた借金は返して、サラ金なり銀行なりにまとめろ、とアドバイスした。更に今のままだと人からの信頼を失ってしまうことが一番怖いことだと念押した。ももちゃんの話が本当なら、てんかんで休んでばかりだとはいえまだ昼間の定職に就いているはずでサラ金の審査も通るはずだ。また俺の性善説癖がでたらしい。とにかく人(個人)に迷惑をかけたらいけないし、それは自分も心が痛むことだということを理解して欲しいと思った。

こんな考え方で進めようとすると、貸手を整理するための回転資金が必要なはずだから、それにいくら必要か、と聞いた。すると30万円だという(後で考えると俺が短期間で用意できるギリギリの額を言ってきたように思う)。新橋で会うことになった。待ち合わせの大型電気店の前に、ももちゃんは薄いピンク色で袖の部分がファーになっているコートを着てきた。相変わらず、いつも違う服を着ている。会ったらすぐに30万円を受け取りそのまま立ち去ろうとする。俺が、お茶位飲まないの、と声を荒げると、すぐ浦和に借金返しにいかないとならないから、という。借金返済のために借金しているのだ。俺は生活を立て直すための回転資金としてお金を用意したのであって他人の借金返済のために用意したのではない。これでは借金が膨らんでいくだけだ。これじゃ事前の話と全く違う、ぺてん師じゃないか、と強い調子で言った。ももちゃんのくちびるがはっきりわかる程、ふるえていた。怒りもあるだろうが薬の影響でだいぶいっちゃってるな、と思った(てんかん治療には精神領域の治療に使われる薬品と同じ薬品が用いられることが多いようで服用量によっては副作用が出るんではないかと俺は思ったのだ)。ペテン師呼ばわりされてまで借りないわよ、といってお金を突き返えしてきた。

俺はちょっと考えたいが、すぐ浦和に行くんだろ、と言った。すると、なら、近所の病院に行ってくるから、その間、新橋のどっかで考えてて、と言ってももちゃんは、その場を立ち去っていった。新橋で待ち合わせの理由がそれまでわからなかったが、このあたりが昼間の彼女の生活圏だったのだ。俺がももちゃんがエステシャンなのでおはないかと思う理由のもう一つにこのあたりにはエステ店が多いということがある。

お金を借りる方が貸す方に待っててと頼むのも不思議な感じはしたが、この辺りまでくると、普通の生活をしていたらめったない経験だから面白そうだという好奇心も芽生えてきていた。病院が終わってももちゃんとまた会ったが、お金は渡さず、駅まで一緒に行くことにした。お金を持っている分こちらが強いからももちゃんも従わざるを得ない。改札を通りホームまで行ったが、話ははっきりとしない。そこに京浜東北線がホームに入ってきた。ももちゃんは、返済の延期をするにしても、貸主に直接言いに行くから、浦和には行くという。ちょっと待って、もう少し話そう、と引き留めている間に発車の音楽が鳴り始めた。俺は反射的に締まるドアの中に入った。ももちゃんはホームに残されたままだ。俺自身30万円の人質をもって逃走するのは初めてだったし何だか壮大な鬼ごっこみたいで高揚した。これで追っかけてこなければももちゃんはそれほどお金が欲しい訳ではないということになるので、それが一番良いと思った。

しかし立て続けに何本もラインが入る。中身は、今、どこなの。とお金は貸してくれるのか。の2点だ。これは重症でお金がどうしても必要なんだなと思った。だったら少し、いつもの憂さ晴らしをしてやれ、と思い、catch me if you canと送信してやった。映画や曲のタイトルにもなった英語の定型のフレーズで、つかまえてみやがれ、とか、つかまらないよーん。といった感じの意味になる。

結局、赤羽で落ち合った。俺はさんざん遊んでもう満足だったので30万円をももちゃんに渡した。お金を持ったももちゃんはエスカレーターでホームに上がっていったが、こちらを振り返って一瞥することもなかった。この時点で俺は全額返ってくることはないだろうと思った。

その後、ももちゃんは店に出なくなりやがて店のホームページからも在籍が外された。ラインは通じていたので世間話をたまにした。しかし半年後、ラインも途絶えた。

俺は勤務場所が変わり西新宿方面になった。散歩で近所を探検している時、ももちゃんと行った歌舞伎町の焼肉店がありその周りはホストクラブだらけだったことを発見した。俺はもともと新宿には詳しくなく、ももちゃんと焼肉店にいった当時は、店の立地についてよく理解していなかったのだ。

インターネットや銀行で調べたところ、過去、5万円だけももちゃんから俺に返済された時使用された振り込み元の電話番号は、銀行で調べればわかるという。しかしそれを開示するか否かはその口座の持ち主の承諾が必要だそうだ。俺はダメ元で銀行に頼んでみると相手方が開示を承諾したということで相手方の電話番号を銀行から教えてもらうことができた。

昼の12時頃電話をかけた。修羅場はいくつも経験しているはずなのに緊張が高まる。しかし電話に出たのは若い男だった。今、帰ってきたところだが夜の7時前に電話して欲しい、と言われた。夜の7時前に再び電話するとどの娘の話をしているのかわからない、という感じだったが、まとめるとももちゃんに頼まれて自分の口座から送金した、とのことだった。あまり要領を得ているとはいえない受け答え、夜の仕事をしている、雑用をたのまれていることから、あまりぱっとしないホストのような印象を受けた。

てんかんという病気の話はまるっきり嘘ではないにしても借金の使い道は主としてホストだったんだろうなあと思っている。もしかしたら痣のいくつかはツケ払えか、借金返せとホストから暴力を受けたものかもしれない。

50万円分の価値があったかはわからないが、面白い体験(冒険)をしたので俺的には満足している。そして今も懲りずに風俗店に通って、場合によっては店外をして何か面白いことが起きないかと期待している。









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