キャプテンごめんなさい

これは僕が中学1年、冬の出来事、ほんの出来心。


バレー部の練習でロードという、いわゆるランニングをしていたときのことです。

中学校を出て、住宅地を抜けながら学校の周りを走る全長2.5kmのランニング。

当時のダメ部員、やる気のない2人組の僕とヤンマー本くんは2.5kmをほぼ(喋りながら)歩いていた。

残り500m、最後の坂(心臓破りの坂)手前に差し掛かったとき、前方から顔を真っ赤にした(猛り狂った)先輩キャプテンが坂を駆け下りてくる。



たった2.5kmなのに30分たっても帰ってこない。

しびれを切らしたキャプテンは、我々を迎え(怒鳴り飛ばし)に飛んできた。



「何やってんだお前らーーー!」



あまりの迫力に、つい僕は「足を挫きました」と嘘をついてしまい、左足を引きずり始めた。今から思うと「中学生日記」バリの大根演技。

相棒のヤンマー本くんも「俺は心配で一緒に付き添っていました」と劇団ひまわりバリの演技で乗ってくる。

日頃から「閻魔上等」を口癖にしているので、我々の口からは湯水のごとく嘘が出るんです。


ほんとに人のいいキャプテンは我らを疑ったことを悔い、後輩の怪我、キャプテンとしての対応などなど、軽く錯乱状態に陥り、一瞬真っ赤な顔が青ざめたかと思うと、また真っ赤になって、


「だ、だ、…大丈夫か? あ、あ、歩けるか?」


と半べそで尋ねてくる(ほんとにいい人)。


僕 「(けろりと)はい、歩けます」

と言った言葉を聞きもせずに、キャプテンはしゃがみこんで僕に背中を向ける。



キャプテン 「おんぶするから乗れ!」



…って乗れませんよ。だって嘘だもん…



僕 「い、いいです、あ、歩けま…」

キャプテン 「(くいぎみに)いいから乗れ!」


あまりの剣幕にビビり、逃げ口上がでない…怖いよ


ヤンマー本くん 「乗ってけよ、無理すんなよ」

と僕をキャプテンの背中に誘う(この野郎は調子いい)



よろけて背中に乗ってしまうと、キャプテンは猛ダッシュで心臓破りの坂を駆け上がり、登りきった後に待ち受ける30段の階段を1段飛ばしで駆け上がり、校門に突っ込む。


校門前で待機していた他のバレー部員、下校途中の生徒諸君、近所の鈴木さん(町内会のドブ掃除だけは張り切る人)が僕らに注目している。


僕 「あ、ありがとうご…???」


スピードが落ちない。手綱でもあれば「どう、どう」と抑えたいところだ。

ポカンとしているバレー部員達の前を通り過ぎて、そのまま(の勢いで)校舎に直行。



向かった先は…




…保健室だった。


終わった…


我々は(僕は不本意ながら)入室。


保健の先生 「どうしたの?!(退屈な日がな1日に飛び込んできた急患に少しうれしそう)」



キャプテン 「(涙声で)こいつ、あ、足を…く、挫いちゃって…」(ほんとにいい人)



ただならぬ気配にテンションの上がった保健の先生が、そばにいた保健室登校の生徒諸君に対して(気の毒なことに)指示し始める。


「あなたは職員室に行って氷を貰ってきて!君はそこのバケツに水を入れてきて!」

最後に余った女子生徒に対して

「あなたは…、そうね、このシップを頂戴!」

と、腕を伸ばせば届く距離にあるシップをわざわざ、保健室登校の女子生徒にとらせる。



なるほど、全員参加型か…

対人恐怖症、コミュニケーション下手の人たちへの社会への取っ掛かり、困難を共有して「協力」によって解決し、「達成感」を引き出し、人助けによって社会に足を踏み入れるきっかけにするその手腕。保健の先生、あんた立派だよ。



ただね…でもね、真実が明るみになった時にはね…彼らの努力はね…水泡に帰すのよ。


そして制裁を加えられる対象は?皆の怒りを一身に受けるのは?


……僕




そして先生の決定的な一言

「じゃあ、足を見せて」


僕 「…」



保健の先生 「早く出しなさい!」


僕 「……」




キャプテン 「(急に背後から大声で)早く見せろよ!」


ビクッ!
キャプテンの押しに弱い僕は「ええい、ままよ!」と足を出す。


なんでもない足を見ながら


先生 「うーん、腫れてるわね」



……奇跡?それともミラクル?
ここはただの「藪」としておこう。



エンコの1つも飛ばさなきゃと覚悟を決めていたのに、この展開。

神様っているんですね。

こんな悪い僕を助けるなんて…


………



…ほんとにいるのかな?こんな悪い僕が助かるなんて。



2分も経たない内に、緊急臨時特別私設保健係りたちが、それぞれの得物を持って、おずおずと僕の周りに集まる。

真冬にバケツいっぱいの冷えっひえの氷水。


当然のことながら、このクソバケツに足を入れなければならない。



かなり渋っていると

保健の先生「はやく入れなさい!」

間髪いれずに

キャプテン「さっさと入れろ!」

すさまじい波状攻撃に軽い心身喪失状態に陥る…あらがう術もなく「入水」。

し、死ぬほど冷たい!


…罰だな、やっぱ神様はいるんだな、悪い子にはお仕置きをするんだな。


バケツに足を突っ込む僕を尻目に、キャプテンは安心して保健室からフェードアウト。



懲役30分の刑期を終えて、僕も釈放。
「お世話になりやした」


キャプテン、並びに保健室登校の諸君、本当にごめんなさい。
保健の先生、なんて言うか…ありがとう


みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。