我が家の「飛ばないトトロ」

私の母は「我が家の太陽」的な存在である。快活で笑い声がデカい。


なのに目立つ事(学校なら学級委員、飲み会なら幹事等の立ち位置) を嫌悪、拒絶する。身体はトトロのようにでっぷりとしており、語らずとも大胆に主張しているのにだ。


いつか母はこう言った。「おっかさ、あんた達みたいに落ち込めないんだ。なんでなんだべ」
耳を疑ったが本人は至って真剣のようだ。「落ち込めない事が悩み」らしい。


よく「母は強し」なんて言葉を聞くけど、子供を四人も育てていれば、いちいち一喜一憂していられないのかもしれない。そんな母の口癖は「おっか痩せねげなぁ。見て、おっかの腹!」だ。「なる(私の名前)なら自殺するな」と付け加えてガハハと豪快に笑う。
この言葉通り母は丸々とした体形をしていて、腹は雪見大福のように白い。女子特有の「かわいい~」で触りたくなる程だ。


母はたまに明らかに自分よりもふくよかな女性を見ては「おっかとどっちが太い?」と私や姉に尋ねる。
私は真面目なトーンで答える。
「おっかの場合は小柄だし太ってもコンパクトなんだよ。あの女性は背も大きいし太れば太るほど迫力を増す感じ。だからそもそも種類が違うと思う」

母は「?」な表情を浮かべつつ深くは考えない。そう。母は分からない事を分からないままにして、疑問を口に出す行為に満足するのだ。答えの正確さなど求めない。
そんな母。カフェの店員さんに「カフェテラ下さい」と言うややこしい母。


自分が年を重ねるにつれて母に対する気持ちが変化していく。好きから怒りへ。怒りから同情へ。同情から愛らしいへ。なんでいつも笑顔?なんでいつも珈琲を飲み干さない?


決して賢いとは言えない母だけど、私にとって母は偉大だ。なぜなら「落ち込めないことに悩む」という何とも理解に苦しむその精神構造が私にはない素質であり呆れる程に無敵だからだ。

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