これは 火事場のバカぢから ?

カンカンカンカン

ある日の午後8時ごろだっただろうか、私は自転車を降りて踏切で電車が通り過ぎていくのを待っていた。

一人のおばあさんが手押し車を押しながらヨタヨタとやってきた。その手押し車はカートの上の部分が平らで座れるようになっているタイプのもので、そこによっこらしょ、と腰を下ろし、それを椅子の様に使っていた。

「足が悪くてねえ、立っているのもしんどくてねえ、困ったもんだわあ」

「そうやって、座れるといいですね」


やがて、電車は通り過ぎ、遮断機が上がる。おばあさんと軽く頭を下げあって、私は自転車に乗る。線路を通過し、私は線路を背中にスイスイと漕いで行く。


カンカンカンカン


また、線路の警報機が鳴る。自転車をパッと降り、後ろを振り返ると、


ゆっくり歩いているおばあさんはまだ線路の中みたい!!!


辺りは暗くて誰も気づかない、というか夜中でもないのに、おばあさんと私しかいない!!!


どうしよう!私はおばあさんを抱きかかえて走れる?とにかく、道を戻る。


間に合わない!?


そこに現れた謎の


スーパーマン!!!


は、いない。この世界でピンチな時にスーパーマンはほとんど現れることは無い。


いきなりお姫様や王子様が現れて、人生をバラ色に変えてくれることも無い。


夢と希望でいっぱいの なんとかランド は、日常では無い。


もちろん、踏切を渡った後で、こんな事を考えていたわけでは無い。



どうしよう


しかし、



走った!!!!!




足悪いって言ってた



おばあさんが!!!!!


手押し車も引いたまま、走る!


めっちゃ速い


走る走る


ゴ—————————ル!!!



彼女はオリンピック短距離選手のごとく線路を駆け抜けた。


そして、おばあさんはその後何事も無かったかのようにヨタヨタと手押し車を押し続けた。


なんだかキツネに抓まれたような不思議な気分で、「大丈夫でしたか?」とか声も掛けられず、


私も何事も無かったかのように、いつもの現実に戻るべく自転車を漕いだ。


とにかく、本当に無事で何よりでした。



海原たい子

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