日本一高いところ(標高3,400メートル)で遭難して、自分だけ助かろうと必死になったが、やっぱり天罰が下った話

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X日午前、富士山を登山していた20代の男性4人が9合目付近で

雪が固まって滑りやすくなるアイスバーンのため身動きできなくなりました。

全員がヘリコプターで救助され、けがはありませんでした。 

救助されたのは、東京と神奈川県に住む20歳から25歳までの大学生3人と

アルバイト店員の男性5人のグループです。 

5日午前10時40分過ぎ、「男性4人で富士山を登山中、

凍傷およびアイスバーン状態のため、9合目付近で身動きが取れなくなった」と

グループの1人から携帯電話で警察に通報がありました。 

これを受けて出動した県の防災ヘリコプターが午後1時から午後2時までに

標高およそ3400メートルのところにいた4人を救助しました。 


4人にけがはありませんでした。 

4人はアルバイト仲間で5日午前4時半ごろ、

富士山の5合目から頂上を目指しましたが、途中で登山道を外れてしまったということです。 

4人は登山専用の靴をはいていなかったほか、

ジーパンやジャンパーなどの軽装で、冬山登山の装備はしていなかった。

警察に対し「無防備、無計画 な登山でご迷惑をかけ申し訳ございません」と

話しているということです。

警察は、

この時期の富士山は6合目近くまで雪に覆われて非常に危険なのでと呼びかけています。 

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それは寒い寒い冬の始まりを告げるような日でした。 

バイト先の先輩Aが富士山に誘ってくれたのは2日前。

僕たちB・C・Dは深夜一時にコンビ二に集合しました。

まず少し遅い夜飯を食べ、コンビニに向かい際、

「もしも遭難したときのためにチョコレートは買ってこうな(笑)」という話題で盛り上がり

それぞれチョコレートを、Bはそれに加えおにぎりを買いました。 


これが、後に賢明な判断となるとは、まだ誰も知る由もありませんでした。 


Aを除く三人が富士未体験なので気分は上々、

山手線ゲームなどをしつつ山梨は富士を目指しました。

午前4時30分、富士五合目到着。

あたりにはほぼひと気がなく、ひんやりと冷たい空気だけがやたら身にしみました。

頂上への道がまったくわからず、

あたりを歩き回ると{富士ハイキングコース近道}という看板を見つけました。 


しかし、いけどもいけども森の中、一向は先の見えない道のりに辟易としていました。

左をみれば確かに富士は見える、

けれども道を進めば進むほど、それは遠ざかって行きました。


幾分か過ぎた頃、ようやくひらけた通りにでました。

道を見上げれば富士の天辺まで一直線、意気揚々と四人は走っていきました。 


四人は「山」をなめていました。 


一時間は経過したころ、最初は30度くらいであった斜面も

しだいに5、60度くらいの角度を誇るようになりました。

ハイキングコースにしてはあまりにも険しい道だ、

そうは思いながらも、四人はかたくなに突き進んでいきました。


朝日が昇り始めたころには二足歩行できないくらいの山道になっていました。。。 


「これハイキングコースじゃないですよね?」Cは不安気に言いました。 

「当たり前だろ」「こんなハイキングコースあってたまるか」BとDは罵倒しました。

このとき、既に四人が四人、不安に駆られていたと思います。 


戻ろうと思い、後方を見ましたが、途方もない距離を登ったようで、

平地ははるかかなたに置き去りに。


「頑張って頂上までいってハイキングコースで帰ろう」

四人は意見を一致させ、再び登り始めました。

見上げてみれば、初めははるか彼方にみえた雪原地帯までもう少し。


四人のなかで一番ひ弱に見えるCでしたが、彼のポテンシャルは凄かった。

三人を引き離し、グングン進んでいきました。

三人が手で必死に岩に喰らいついて登っている中、Cの二足歩行は圧巻でした。 


斜面は段々とそびえ立つようにせりあがり、いくつもの岩壁が視界を遮りました。 

険しい険しい道を行き、

登山開始から四時間はすぎたころ、

ようやく白い白い銀世界に到達することができました。 



やがて空気が薄くなり始め、

風が轟々と音をたて、私たちの体をいっそう冷たく包み込んできました。

手足はふるえ、体力の底が見えてくるような感覚におそわれました。 

目は常にチカチカしています。



「ちょっと休憩しよう」そんな言葉が頻繁に交わされるようになり、

ついには五分登っては五分休むというような状況になりました。 


「俺たちが一気に5人いなくなったらバイトのシフトやばいな。。。」といった冗談も

現実味を増してきました。 


大量に買ってきたチョコレートも残りわずかになってきたころ

四人の口数は少なくなってきました。 

「レスキューよんだほうがよくない?」Dは言います。

けれども上を見上げれば頂上まであと少し。みな無言のうちに歩を進めました。 


いよいよ体温も落ちるとこまで落ち、休憩するたびに眠気に襲われるようになったころ、

Bの様子は、目に見えて変化していました。

さきほどまではガタガタ揺れていた体の動きはピタリと止まり、

唇はやけに青ざめ「ダイジョブ」の一言しか話さなくなりました。 



自然はより冷酷に、より鋭く、四人に迫ってきました。

これは本当に危ない、Dは思いました。

「よしきた俺だけでも助かろう」 


このような極限状態で、人間の真価は問われます。 


三人を突き放し、Dは猛然と天辺を目指しました。後続がまったく見えなくなった頃、

当初頂上だと思っていた場所に、到着することができました。

けれどもたどり着いてみれば、その奥になおも富士はそびえます。

「いったいどこまで行けば頂上なんだ」一人でつぶやきながら、

何度も何度も下からみれば天辺だと思える場所に登り詰めます。

気の遠くなるような時間でした。

単独行動にでてから60分くらいたったころ

大声をだしても後続から返事がないことに気づきました。 


不安に駆られ、

命がけで少しづつ山を下ると、ようやく3人と合流することができました。

3人は大きな岩場でヨコになっていました。


Bの体色はきれいな「青」でした。


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