心を大切にすること



いまから、十数年前

私は、初めて、転職というものを経験した。

前職からは、まったく分野の違う仕事で、事務系からドライバーへの転身だった。

この業界を選んだ理由は、正直なところ、勤務時間の都合だった。


 新しい仕事は、24時間業務であったが、シフト制で、朝早くから働けば、その分夕方も
 やり方次第で、早く終えることができる。
 平日休みというのも好都合だった。
 昔から携わっていた、地域活動との両立も
 時間との闘いで行き詰っていたところだ。
 そこに、この条件は、とてもありがたいものだった。

 しかし、転職は、思っていたよりも甘くはない。
 面接での印象と実際の入社日以降の会社の印象は、違っていた。
 面接では、終始、穏やか、静かだと感じていたが、
 実際は、

「ずいぶんと活発な体育会系だった」


 厳しい上下関係、礼儀、あいさつ、元受け・中受け業者への接し方、お客様への接し方など、
「目的地へ安全に、お客様をお運びする」だけでなく、

「お客様から感謝される」ような仕事とは、どのようなものかを時には、
 厳しく叩き込まれたような 気がする。
 
 業務内容は、おおざっぱにいえば、セレモニー会場から、公共施設、自宅などへの配送だ。

 でも、当時は、苦しいことばかりに思えたが、振り返ると学んだことは、小さくないと思える。


 先輩社員と同行での仕事先でのことだ。
 たまたま、2つの現場が、近い時間帯で発生したことがあった。

「どちらかのお客様を 後回しにしなければならない」


 その時に、何を基準に判断するか。

 「お前ならどうする。お金のかかった式典、最低料金のみの式典、

 どちらを優先する?」


 先輩は、私に問いかけた。

 私たちの仕事は、人生のいずれかの時期に必ずだれもが、向き合うもの。
 その為のセレモニーの一角を担っている。

 だから、セレモニーへの予算のかけ具合は、千差万別。
 でも、その人にとっては、大切なセレモニーであることに変わりはない。

 実際、この時、どのような動きをとったかは、詳細に覚えてはいない。

 もちろん、待たせてしまったお客様にも、絶対に悟られないようにしなければならない。

 
 それは、仕事の要領ということばかりでなく、

 「お客様への真心を込めた仕事の姿勢」

 なのだと後に痛感した。

 
 私たちがお客様と触れ合うのは、通常、30分から1時間程度。
 それでも、対応を一つ間違えば、お客様の心に一生ぬぐいがたい、
 不快感を残してしまうことになる。

 社会のありとあらゆるところ、様々な仕事がある。
 普段、気がつきもしないところで、たくさんの人の、たくさんの心に支えられている。


 仕事をする以上、多くの収入を得ることは、大切なことかもしれない。
 そのために、大きな仕事をして、大きな利益をあげることばかり、考えてしまうかもしれない。

 しかし、仕事には、それを超える大事な何かがあることを
 この時に教えられたのである。

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