5歳の娘にはなしたユイゴン。

ひかりの星の物語


それはとても美しい星でのできごとです。

夕方から雨が降りはじめ、

家の軒下には、2つのてるてるぼうずがかかっていました。
そうです。明日はひかりちゃんの幼稚園の遠足がある日です。
きょうの天気予報では、

「あすは雨。ところにより雷雨があるでしょう。降水確率は100%です。」
という予報でした。
だからひかりちゃんは2つのてるてるぼうずに一生懸命お祈りしたのでした。
2つのてるてるぼうずのうち1つは昔ながらの白い布にピンポン玉をくるんで

にっこり笑っているもので

ひかりちゃんは『てるてるぼうずのお父さん』と呼んでいました。
もう一つのてるてるぼうずは、お父さんよりちょっと小さくて、着ている服も

その日の天気によって色が変わる不思議な特殊繊維でできたものでした。

晴れの日なら黄色、くもりは青、 雨なら赤に変わるのでした。

ひかりちゃんは『てるてるぼうずくん』と呼んでいました。


なかなか寝付けないひかりちゃんは何度も何度も寝床から抜け出して、

てるてるぼうずさんたちにお願いするのですが、てるてるぼうずくんの服が、

ずーっと赤のままなのを見てがっかりしては帰ってきました。

てるてるぼうずのお父さんは久しぶりの大役に大ハッスル。

ひかりちゃんの望みを何とかかなえてあげようと

一睡もせずに気合いを入れていました。


 「かぁーーーー。トぁーーー。どおりゃーーーー
おのれ雨のやつ、なかなか手ごわい。
とおーーーりゃあーーーーー。

わしのおじいちゃんなどは台風も気合一つで吹き飛ばしとったもんじゃ。

とあーーーー。

おい、てるてるぼうず。おまえも協力せんか。」


と息子のてるてるぼうずくんに命令するのですが
てるてるぼうずくんはそんな昔ながらのお父さんのやり方には批判的で、


 「あんな非科学的なことばかりしているからてるてるぼうず界は落ちぶれていくんだ。もっと時代のトレンドにあわせて、てるてるぼうずも変わらなきゃならないんだ。」


と全く無視するのでした。
それどころかてるてるぼうずくんは、明日の天気予報を気象台に電話で聞いて
その天気によって服の色を変えるというトレンディボーイでした。
だから明日は雨だと聞いて赤い服を着たまま早々と眠ってしまったのでした。
それでもてるてるぼうずのお父さんは諦めません。
雨音は次第に激しくなり、風も強くなり、やがて雷まで鳴り始めました。
「ゴロゴロゴロゴロゴロ。ドドーーーン。」
さすがのお父さんも少しひるみましたが、それでもひかりちゃんの顔を

思い浮かべてがんばるのでした。

てるてるぼうずのお父さんの迫力に、いったい何が起こったのかと、昔からのお父さんの親友であるみっかぼうずのおじさんときんかんぼうずのおじさんが駆けつけました。


 「いったいどうしたんだ。てるてるぼうずのお父さん。」

 「おう。みっかぼうずにきんかんぼうず。明日はひかりちゃんの幼稚園の遠足なんじゃ。 絶対雨をやませなきゃならんのじゃ。協力してくれ。」


 「うーん。そういわれてもワシらにはそんな力はないからなー。」


しばらく2人は考えて、


 「よし。それでは、このひかりの星の全てるてるぼうず界の人たちを起こしてお願いしてみよう。」


そういってみっかぼうずのおじさんときんかんぼうずのおじさんは激しい雨の中を走っていきました。そして、家の軒下にぶら下がっているてるてるぼうずをかたっぱしから起こして、


 「気合いを入れてほしい。」 とお願いしてまわりました。


 「よおーし。それじゃ。久しぶりにやってみるか。」


と、ひかりの星のてるてるぼうずたちが次々に起き上がり、気合いを入れてくれはじめました。


 「とおーーーー。たあーーーー。」


そして、ひかりの星中の全てるてるぼうずたちの心が一つになって
その激しい雨に立ち向かったその時



 「やあーーーー。どおりゃあああああ。


 渾身の願いを込めた気合いの声が、一瞬美しいハーモニーとなってこだましたかと思うと黄金色に輝く光の柱が轟いて天空を突き刺しました。

翌朝、「チュン。チュンチュン。」というすずめの鳴き声でひかりちゃんは目を覚ましました。 目をこすりながらふとんの中からそーっと庭を見ると、そこには太陽の光をいっぱいに浴びた チューリップの花が咲いて、その葉っぱや茎に透明な水玉がキラキラ輝いていました。


 「おとうさん。おとうさん。晴れたよ。晴れたよ。」


と言って飛び起きて、窓をいっぱいに開けました。
そこにはびしょぬれになったてるてるぼうずのお父さんと、赤い服を着たままのてるてるぼうずくんが軒下にぶら下がっていました。ひかりちゃんは何度も何度もお礼を言って、お弁当を作ってくれているお母さんのところへ走っていきました。


 「てるてるぼうずさんたちががんばってくれたわ。お母さん。」


 「よかったわね。」


と言ってお母さんはてるてるぼうずのお父さんにウインクしました。
てるてるぼうずのお父さんはちょっと照れくさそうにしていたけれども、クルッと向きを変えて庭にきてくれていた、みっかぼうずのおじさんときんかんぼうずのおじさんに「ありがとう。」と満面の笑みを浮かべてお礼を言いました。


 空にはいつのまにか美しい七色の虹が
きょう、ひかりちゃんが遠足に行く千坊山の山の向こうまで輝いていました。


  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

ひかりは「よかった。」と言ってすぐに寝息を立てはじめた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

今から、23年前1995年、私が35歳、娘ひかりが5歳の時に、私はB型肝炎にかかってしまいました。

昭和バブルの時代に、旅行会社で宣伝の仕事をしていた私は、忙しいながらも、

トレンディーで充実した生活を送っていました。毎日、増え続ける仕事を断れずに、

「とりあえずやってみます。」

と、なんでもかんでもこなしているうちに、自分のキャパシティを超え、しだいに体がだるくなりはじめ、顔色が黒くなり、夏の繁忙期を超えたあたりから、歩くこともつらい状態になりました。

病院に行くと、B型肝炎(急性増悪)と診断されました。

肝機能を表す数値AST(GOT)が、普通の人では30以下なのですが、私の場合1200にも跳ね上がってしまい、即日入院ということになってしまったのです。このままの状態が続くと、劇症肝炎、肝硬変、肝臓ガンへと急速に進行する危険性があるとのことでした。後で知ったのですが、生まれた時から私は肝炎ウィルスを持つキャリアでしたが、過労により、免疫力が急速に低下して発症したのであろうということでした。


1カ月の入院を経て、病状は安定し、久しぶりの自宅で療養をしていると、

娘のひかりがやってきて、寝る前のお話をしてほしいというのです。

彼女はテレビで毎日怖いニュースばかり聞いてしまい、怖い夢を見てしまうので、

明るいお話を聞いてからでないと眠れない。といいます。

いつも絵本を読んで寝かしつけるのは妻の役割ですが、

入院中娘が私のために、毎日病気が治るようにお祈りしてくれていたことを聞いて、その思いに応えなければ、と胸が熱くなりました。

その時、即興で創ったおはなしが、ひかりの星の物語です。

私がいなくなっても。私はあなたの幸せを祈り続けている。そういう思いで。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2018年4月9日。ひかり27歳、私58歳。

彼女は結婚します。

彼女の祈りの力で、今日まで生きてこれたことを心から感謝しています。

私がどのようにしてB型肝炎の病気を克服したか、

その奇跡の軌跡の話は、のちに譲るとして、

ひかり結婚おめでとう。


ひとコレ

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