終末期の支援

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次話: 終末期の支援②

の人に見送られて、お別れをすることになる。退所する場合であっても、多くの場合は金銭的な理由が多い。そして、御家族の方が…

 

「施設に不満」

 

がある場合も多い。しかし、結局、介護施設も医療機関も法律により運営されているのだ。したがって、大きな差が発生するとは…

 

「考えにくい」

 

私もいくつか、施設や医療機関を知っているが、どこも、同じような体制だ。なぜなら、介護保険法や医療法により…

 

「運営」

 

されているからだ。私は、病室から笑顔で手を振る医師や看護師をみて、介護と医療の違いについて実感していた。医療の世界では、結果として…

 

「死亡」

 

することがある。しかし、介護の世界では、高齢化を扱っているために、「亡くなる」ことを前提としているのだ。やはり介護は…

 

「ドラマ」

 

になりにくいのだろう。特に現代日本では、死が「タブー視」されているために、なおさらだ。私は、Aさんと一緒に病院の職員に手を振りながら…

 

「内心」

 

このようなことを思っていた。そして、施設がAさんの…

 

「最後の場所」

 

となったのだ…

 

私は、自動車のハッチを開けた。そして、Aさんを車内に入れた。車椅子が固定していることを、確認すると、エンジンをかけて、

 

 

アクセルを踏み込んだ。…

 

 

車内では、Aさんは、ウトウトしていた。医師の話では、病院でも、傾眠状態だったらしい。Aさんは、夢を見ているようだった。時々、…

 

「スヤスヤ」

 

という寝息が聞こえてきた。今日はいい天気だった。雲ひとつ無かった。太陽が心地よい。季節は、いつの間にか、秋になっていた。最近、夜勤が多かったので…

 

「季節感」

 

が全くなかった。…

 

「…もう、夏が終わっていたのか…」

 

私は一人でつぶやいた。空には、秋の空が広がっていた。…施設に到着すると、暖かく皆が出迎えてくれた。そして、施設長に状況を報告する。病院からの…

 

「医療情報」

 

や、薬剤なども施設長に手渡した。Aさんは、他の職員によって、早急にベッドに移された。車椅子からベッドに移乗するときでも…

 

「起きることなく」

 

スヤスヤと眠っていた。山田もAさんの居室にきていた。山田は違うユニットに配属されていた。しかし、どうしてもAさんのことが心配で様子を伺いに…

 

「来ていた」

 

のだった。山田は、私の姿を見ると、話しかけてきた。…

 

「それで、Aさんの状態は、どうなんだ?」

 

山田以外にも職員が複数いた。皆、深刻そうな表情をしていた。私は、皆に口頭で医師から伝えられた情報を…

 

「申し送り」

 

した。そして、室内が重たい空気になってしまった。山田は皆を励ますように、わざと元気そうに皆に言った。…

 

「…やるだけの…ことをやろう」

 

皆は、山田の言葉を聞くと、うなずいた。そして、皆、持ち場に帰っていった。山田と私は二人きりになった。そして、山田は口を開いた。…

 

「俺が、ここに就職してから、もう、3年が経つ。最初は3日で辞めようと思ったよ。でも、Aさんの支援をしたときに、ありがとう。って、言葉をかけられたんだよ。…それで、現在まで頑張ってこられたんだ」

 

私は山田の言葉を聞いて、驚いた。山田は人に弱みを見せるのが、嫌いなタイプだった。そして、少しヤンキー風に見える為に、就職当時、先輩からの…

 

「風当たり」

 

が強かったのだ。しかし、山田は、そのような窮地を、得意の「お笑い」で切り抜けていたのだ。そのために、私も山田は…

 

「ストレスを感じないタイプ」

 

である。と現在まで、思っていたのだ。しかし、山田の心の底にも葛藤があったのだ。私は、そのことについて初めて知った。


 

そして、山田に勇気を与えたのは…

 

Aさんの言葉」

 

だったのだ…

 

Aさんは、自然と相手に安心感を与える事ができるタイプだった。娘さんを見ると、Aさんは、元気なときは家族や周囲の人から…

 

「愛されていた」

 

ということがよくわかる。もし、Aさんがいなければ、山田は本当に介護の仕事を3日で辞めていたかもしれない。もし、そのような状態になっていたら…

 

「山田の人生」

 

も大きく異なっていただろう。山田と私は、ヘルパー研修からの付き合いだ。共に同じ講座を受講した。同年代ということもあり、意気投合した。ヘルパー研修は…

 

「講師」

 

の話をレポートにする作業がメインだった。私は、介護のことなど、全くのド素人だったので、最初は…

 

「特養」

 

という、言葉など聞いたこともなかった。周囲に高齢者もいなかった為に、介護や医療については知識が0の状態だった。恥ずかしい話、私は…

 

「デイサービス」

 

という言葉を知らなかったのだ。デイサービスとは、「コンビニの名称」だと思っていた。それほど、介護の世界とは…

 

「縁がなかったのだ」


 

正直、介護と医療の区別もできていなかった。介護と医療の分野は、自分の人生で一番、「無関係」な分野である。と思っていた。しかし、人間の…

 

「運命」

 

とは、不思議なものだ。私の場合は、祖父の介護がきっかけで、この分野に興味をもつようになった。しかし、知識が全くなかった為に…

 

「とりあえず」

 

介護ヘルパーの講座に申し込んだのだ。最初は介護職員になるつもりはなかったのだ、しかし、運命の…

 

「糸」

 

に引っ張られるように、この世界に飛び込んだのだ。私は、このように、未経験で実務経験無しだったから、最初は、先輩から何度も…

 

「注意」

 

を受けたものだ。しかし、3年間は頑張る。そして「介護福祉士」の資格を取得する。という目標があったから、頑張ってこられたのだ。しかし、最初は…

 

「失敗」

 

ばかりだった。今でも記憶しているのは、入浴介助中に利用者を転倒させてしまったことだ。入浴中の事故は…

 

「死亡事故」

 

につながる恐れもある。当然、厳重注意を受けた。正直、「辞めよう」と思ったこともある。しかし、どうしても…

 

「知りたい」


 

という知識欲のほうが、大きかったのだ。そして、1年目がすぎる頃には、段々と仕事にも慣れてきた。山田も同じような思いだったのだろう。山田は…

 

「母子家庭」

 

で育ったらしい。そして、中学生の頃から、仕事で忙しい母親にかわって、祖母の介護をしていたらしい。そのために、声掛けが上手だった。しかし、1人になると寂しそうに…

 

「むせるまで」

 

タバコをふかしていた。やはり、色々と苦労があったのだろう。山田の母親は、現在、体を壊して静養しているらしい。利用者さんも、職員も、それぞれ…

 

「いろいろな思い」

 

を抱えて、生活をしているのだ。それが「介護施設」という場所なのだ。厳しい人生を生き抜いてきた人生の先輩達の…

 

「終着駅」

 

という趣もある。私も、最初の駆け出しの頃は、利用者さんから、助けてもらったことがある。介護というのは、一方通行でなくて利用者さんと職員の…

 

「助け合い」

 

が基本となるのだ、Aさんも、入所当時は認知症も進行していなかった。そのため、食器の配膳、洗濯物の取り込みなど手伝ってもらったものだ。Aさんと一緒に…

 

「ふかし芋」

 

をつくったこともある。正直、家事が不得手な私よりも、Aさんのほうが、調理や洗濯物だたみ、は上手だった。何度か、そのことについて利用者や先輩から…

 

「からかわれた」

 

ことがある。今では良い思い出た。しかし、Aさんは現在、ベッドに横たわっている…

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終末期の支援②

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