夫の背中
大学を卒業して、就職。
週末は寝だめと恋人とのデート。
結婚するまでずっと実家暮らしをしていたので、私は自分に向き合うことを一切してこなかった。
本すらほとんど読まなかった。
31歳で結婚し、体調不良を機に退職。
毎朝、夫を送り出すと12時間以上は一人で過ごすことになった。
猛烈に孤独感と焦燥感が襲った。焦って、人が集まるところに出かけてみたが、無理をしていたようで、苦しくなった。
試行錯誤し、専業主婦歴14年目。
ようやく自分に向き合えるようになったと思う。
自分がやっていること。
自分が思っていること。
「これでいいのかなあ」と思ってばかりだったが、今は、
「自分が知っていれば、いい」
「自分が納得できれば、いい」
と、ようやく思えるようになった。
誰かにいつも聞いて欲しい。見ていて欲しい。こんなことがあった、あんな人にあった。
欲しい、欲しい、ばかりで、周りは、特に一番身近な家族のことがよく見えてなかった。
長い時間かかったけれど、不本意な退職は自分に向き合うことを知るためには必要なことだった。
寡黙な夫の背中がそう教えてくれたような気がする。
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