東京に行って失ったものと得たもの・その4

前編: 東京に行って失ったものと得たもの・その3
後編: 東京に行って失ったものと得たもの・その5
 その後、平日は毎日くたくた、土日は疲れた体を休めるために寝てばかり、という生活が3年間続くこととなる。せっかく、東京という場にいるにもかかわらず、東京の生活を満喫することもできず、会社の業績のために何もかも失ってしまったように感じた。
 前述のとおり、私の立場は、親会社の営業との窓口ということもあり、営業所の営業マンと話をすることが多かった。これら営業マンとは生産物の納期についてばかり話をするのであるが、利害が最も大きくからむ話である。無理難題を突きつけられたり、約束した納期を守れないと罵声を浴びせられたりして、この面でも精神的に疲弊させられた。
 一方、それら営業マンは日中は外回りをしているため、実際の実務は、業務担当の女性事務員であり、これら女性事務員らとも話をする機会は多かった。
 その中で、ある営業所の女性事務員Tさんのことが気になるようになった。このTさんとは直接お目にかかった機会はあまり無かったが、電話のやり取りの中で、一人の女性として気になる存在となっていったのである。
 そして、あるとき私は、悩んでいるだけでは進まない。一度、思い切って話をしてみようと決意した。そして、思い切ってそのTさんに、仕事を通じてあなたのことが気になるようになり、私とお付き合いしてもらえないか、という内容の手紙を出したのである。
 手紙を出してしばらく後、Tさんから返事が来た。この間も、Tさんとは仕事では電話のやり取りをしていたが、電話では手紙のことは一切言わなかった。返事では、Tさんいわく、今現在付き合っている人がおり、あなた(私のこと)の申し出にはお答えいたしかねる、というものであった。
 半ば予想されていたこととはいえ、この結果は残念ではあった。が、逆にあきらめがついてよかったのではないかとも思った。仕事上、このTさんとは生産物の納期等をめぐって激論を交わしたことも何度もあり、そのような際には、私の感情や私の嫌な面もこのTさんに見せてしまったこととなる。
 そういう状況において、Tさんにしてみれば、この私からのいきなりの交際の申し出は承諾できないというのも当然の結果であったろう。このことは失恋とまでは言えないし、それほど大したことでもないが、これはこれで自分にとって勉強となった。

続きのストーリーはこちら!

東京に行って失ったものと得たもの・その5

みんなの読んで良かった!