そばにいてくれる、ということ。
体調が整わない日の方が多く、不本意ながらも仕事を辞めて専業主婦となり、もう10年以上になる。
外で仕事をしていないと自分の存在意義を見失い、自分の存在価値が無いような気すらして、自分で自分を責める日が続いた。
医師の力も借り、自分で食事や運動など、いろいろと努力した。
その甲斐あってか、ようやく近頃は体調が良い日の方が多くなった。
「働きたいなあ」
もう自分を責めることはなくなった。
なくなった、と思っていただけで、まだ少し外で仕事をしていない自分を肩身の狭い思いで抱えていると気付いた。
しかし、履歴書を送れど、10年以上も働いていないとなかなか採用されない。
焦りは募る。
パートなのに、履歴書送付しただけで、不採用の通知も何回か受け取った。
一方、面接までようやくこぎつけたものもあると、久しぶりに社会に出る不安と家事との両立ができるかどうかと悩むようになった。
「ねえ、まろんちゃん、どう思う? おかあさん、このお仕事したいんだけど」
いつもそばにいてくれる猫のまろん。夫とよりも一緒に過ごす時間が長い。
「やってみれば?」
と言っているようにも見えるし、
「どうかなあ」
と言っているようにも見える。
まろんは、生後一か月ほどでうちに来た。拾われた猫ちゃん。
前に飼っていた猫が亡くなって、途方にくれていたころだった。
まろんは、季節の変わり目によく体調を崩す。
嘔吐、食欲不振、下痢。
また、ちょっとした物音にものすごくびっくりする。
外に連れて出ようものなら、壊れてしまうんじゃないかと思うくらいブルブルと震える。
一年に一回の予防接種のための通院も大変だ。
そんなまろん。
私が仕事をしようとすると、嘔吐が頻発する。
「やっぱり、お仕事できないかな?」
まろんちゃん、おかあさんが昨日も具合悪くてお薬飲んでいたのを知ってるのね。
いつもそばにいてくれて、見てくれているんだね。
ありがとう。
そんなに体を張って、おかあさんに伝えなくてもいいよ。
もっと元気になるまで、おかあさんはお仕事をしないって決めたよ。
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