お母さん(4歳)

父がいない3人での生活。
それは思いのほか寂しいものではありませんでした。
母は僕たちに沢山の愛をくれました。
”お母さん…大好き”心からそう思ったのと同時に、
”こんなに優しいお母さんをなんで殴るんだろう…お父さんは…”
と子供ながらに疑問に思えて仕方がありませんでした。


別居してから2週間位経った頃、母へ1本の電話がありました。
電話の相手は父。

電話を終えた母は言いました。
『お父さんと父と会うことになったから、一緒に来てくれる?』と。
"もうお父さんとなんて会わなくていいのに…お母さんを叩くお父さんなんて嫌いだよ…。"

父との待ち合わせ場所は、駅近くにある公園の噴水前。



すでに父は待っていました。
そして、母の顔を見た次の瞬間、父は母へ猛突進し、いきなり母を蹴り倒しました。
母が倒れるなり馬乗りになり、殴る父。

あまりにも一瞬の出来事で呆然と立ち尽くす僕たち兄弟。

弟は隣で泣いていました。

やがて、なんとか父を振り払った母は、逃げるようにその場を去りました。
残された僕と弟は、父に引き取られました。


母との3人での暮らしが天国なら、

父との3人での暮らしは地獄の始まり。

父と暮らし始めて数日経ったある日、父は言いました。
「お母さんは、今日からお母さんじゃなくなった」

父と母は、離婚をしたのです。
あの時、逃げるように去って行った後ろ姿が、僕達が見た母の最後の姿。

母と会うことは二度とありませんでした。

そして僕と弟は保育園に入園しました。
「お母さんが、お母さんじゃなくなった」
その言葉の意味が理解できなかった僕は、
それでもいつかお母さんに会えると信じていました。

いつか帰ってきてくれるものだと思っていました。

ある日、いつも通り寝ていたらふと涙が止まらなくなりました。

そして布団の中で絞り出すように言いました。
「お母さん…会いたいよ…。」
その時、初めて思いました。


もうお母さんには会えないのだと。

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。