【近大ノマド】会社を辞めた僕が大学でノマド生活を始めた起業の記録

「中西さん死相が見えていましたよ」

久しぶりに会った僕を見て、起業仲間にいわれた言葉だった。

枝のように細くなった二の腕。
顔色は青白く、目元に薄黒いクマが広がっている。
肌はボロボロで手入れの形跡はない。
色あせたシャツとズボンを身にまとう。

これが起業したばかりの僕の姿だ。
3ヶ月前までは会社員だった面影はすでになくなっていた。

収入はほぼゼロ。
急速に減っていく貯金。
唯一削れるのは食費くらい。

朝ごはんに5本入り98円のバナナを買うか迷うくらいのレベルだったので、常に空腹だった。
身体は明らかな栄養不足。
それでも朝から夜まで12時間も働いたこともある。

当時の僕が生きていた唯一の原動力は

自由になりたい!

という渇望だけだった。

サラリーマン生活に幸せはなかった

会社員3年目の5月、僕はサラリーマン生活に終わりを告げた。
会社で働いてみてわかったこと。
それは、

僕は会社で幸せになれる人間ではない

のがハッキリしたことだった。

最終出社日の翌日、僕は東大阪のアパートに移り住んだ。
築70年を超える古民家。
アンティーク調の建物が醸し出す雰囲気と、個性的な大家がいるため、近くの大学生から「魔女屋敷」と呼ばれていた。

僕は大家と個人的に知り合いになり、会社を辞める代わりに住まわせてもらうことにした。

近大ノマド生活のはじまり

収入はほとんどなかった。
サラリーマン時代に貯めた資金が底をつく前に、ビジネスを軌道に乗せる必要がある。

収益の目処が立つまでは、徹底的な節約生活。
カフェやコワーキングスペースはお金がかかる。
1円も無駄にしたくなかった。

だったら大学のキャンパスで仕事をすればいいじゃないか

僕は大家よりママチャリを借り、近くの近畿大学へ通う生活をはじめた。

当時の年齢は26歳。
大学院生に見られなくもない。

カフェテリアや屋外のベンチなど、空いているスペースを見つけては作業をしていた。

努力さえすれば報われると思っていた

起業して本気で頑張れば、収益は右肩上がりに伸びていく。
僕はそう信じていた。

しかし、現実は甘くなかった。
起業して3ヶ月は家賃すら払えない。

収入がゼロという日々が続いた。

さすがに起業2ヶ月目の月収が189円だったときは、目の前が真っ暗になった。
収益をチェックしたのは大学キャンパスにあるフリースペースで仕事をしていたとき。

夜9時を回っていたので、周りに学生は誰もいない。
発狂して現実から逃げ出したい気持ちを抑えるのに必死だった。

「189円なんて子どものお小遣いレベルじゃないか!」
「コンビニバイトでも1時間働けば800円ももらえるのに!」
「僕は毎日朝から夜まで働いて全然お金を稼ぐことができない!」

自分は誰よりも努力している!
と思っているのに成果が付いてこない。

俺は努力しているんだ!

なんて大声で叫んでも、誰も信じてはくれないだろう。
周りの目には、「毎日10時間以上働きながら月189円しか稼げないダメ人間」としか映らないのだから。

このまま結果が出なかったら人生終わる

起業は己との戦いといっていい。
急速に収入が減っていくプレッシャーに押しつぶされそうになる。

このまま成果が出なかったら・・・
という不安、恐怖で作業の手が止まる。

そういうときは無理やりにでもキーボードを叩いて、少しでも前に進もうとあがく。

会社員には2度と戻りたくなかった。
サラリーマン生活の延長線上に僕の思い描く人生はない。

成功して自由を手に入れるか?
失敗して破滅か?

が僕の人生に残された選択肢だった。

冷蔵庫に入っていた大家の差し入れ

ある夜、いつものように大学で仕事を終え、ママチャリでアパートへ戻ったときのことだった。
何気なく冷蔵庫を開けてみると、身に覚えのないものが置いてあった。

1日の食費600円で生活していた、僕自身では絶対に買わないものだ。
起業してから数ヶ月、こういうものはしばらく食べていなかった。

手書きのメモが添え書きされていた。

「勇介、鯛のアラ」

鯛のアラ???
大家の差し入れであることは、そのぶっきらぼうな書き方からすぐにわかった。
けれど、なぜ?

すでに夜の9時を回っていたが、翌日だと痛んでしまう。
とりあえず、僕はありがたく鯛のアラをいただくことにした。

鍋に水を張り、ガスコンロに火をかける。
具材は鯛のアラ。
それと飾りで付いていた千切り大根。
魚の血で汚れていない部分は全て鍋に入れた。

醤油で簡単に味を整え、鯛のアラ汁の完成。

一口すすると出汁の効いたスープが身にしみた。

アラ汁を食べているとき、大家がやってきた。
地鎮祭があり、供え物に鯛が出たそうだ。
身は出席者が食べたらしいが、アラはどうせ捨てられるので持って帰ってくれたらしい。

鯛は『目が出る』って縁起物なんやで

大家がいつものように、脈絡もなく言った。
そして、去って行った。

僕はこの瞬間、自分の力で生きているのではなく、誰かに生かされていることを悟る。

自分が成功することで喜ぶ人がいるはず!

僕は起業してから、周りとの縁を切っていた。
大学時代の友人とも疎遠になっていたし、会社員時代の人間とも会う気がしなかった。

人生の底辺であがいている、みすぼらしい自分の姿を見せるのは気が引けたからだ。
数ヶ月も働いているのに、食べることすらままならない状態。

「やっぱり起業なんてしなかったらよかったのに」

という哀れみの眼差しを浴びるのが怖かった。

夢半ばでくたばってしまっても、誰も気にも留めないだろう。
そもそも誰も僕という存在を知らないのだから。

けれど、僕はなんとか成功したいと思った。
僕の成功を喜んでくれる、まだ見ぬ人たちのために

壁にぶち当たっては突き抜ける

どんなに苦しくても、
どんなに現実から逃げ出したくても、

僕に残された道は、前に進むことだけだった。

自分には叶えたい夢がある。
だから起業した。

なのに、こんなところでくたばってたまるか!!!

少しずつ成果が出てくると、僕は取り憑かれたように働いた。
仕事のスピードが上がると、壁にぶち当たるペースも速くなっていく。

ハードル走のように5メートル感覚でガラスの壁があって、傷だらけになりながら壁を打ち破っていくイメージ。
壁をぶち破ってはぶつかって。

いくつ壁を突破すればゴールにたどり着くのだろうか?
身体はすでにボロボロなのに、手は休まず動き続けている。

ゴールへ向かって自然に引っ張り上げられていく感覚だった。

日付が変わった瞬間に

季節は冬に差しかかろうとしていた。
大学キャンパスで作業をしていると、身体が冷えてきて手先の感覚が鈍くなる。
室内でもダウンジャケットを着用するようになっていた。

明け方と夜は、特に冷え込んだ。
寒さで作業に集中できないので、アパートのリビングに置いてあるコタツで作業するようになる。

ある夜のことだった。
いつものようにコタツで夜の作業を終わらせる。
月末の収益をチェックしてみた。

「もう少しなんだけどな」

来月もこの調子で頑張れば目標金額に届くかもしれない。
そう思っていたら、時刻が深夜12時を周り、翌月になった。

ふと報酬画面を更新してみると、目を疑うことが起こる。
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

数字を何回計算し直してみたが間違いない。

売上が目標に達していたのだ。

僕にとって歴史的瞬間だった。
誰かに伝えたくて、隣の部屋にいた大家にパソコンの画面を見せた。

すごい!

と大家はひとこと言った。
大家はパソコンをほとんど使わないので、僕のしていることを理解しているとは思わない。

けれど、僕が大家の部屋から出ていったあとに、

勇介がな、パソコンで稼げるようになったんやって!

と、大家の友人との電話ではなしているのが聞こえた。

理想の生活は叶うもの

僕はその後もコツコツと仕事を続けて、ネットで徐々に安定した収入を生み出せるようになった。
彼女ができたのをキッカケに、タイに移り住むことにも。

起業当時に書き残していた目標がある。

・いつでも好きなときに、好きな場所に行ける
・いつでも好きなときに、好きな仕事ができる
・いつでも好きなときに、好きな仲間といれる
・いつでも好きなときに、美味しいものが食べられる

今の自分に照らし合わせると、全てを実現した生活を送っていた。

僕は自分の人生を手に入れた。
けれど、あくまでスタートラインに過ぎない。

実現したい事業がある。
自分のストーリーを伝えることで、変わるかもしれない人生もある。

一度きりの人生だから

あなたは何度人生を生きることができますか?
スーパーマリオじゃないんだから、僕らの人生は一度きりなんです。

一度きりの人生だから、自分にとって最高を手に入れてみようじゃないか!

自分の理想の人生を目指すのって、簡単ではないよ。

人生は残酷にもあなたを奈落の底に落とすかもしれない。
思いもよらないところから救いの手を差し伸べてくることもある。

けれど、必死に求めてあがき続けると人生が美しさを見せてくれる。
良いとか、悪いとかじゃなくて、ライフ・イズ・ビューティフル(Life is beautiful)と心から思えるように。

あなたが手に入れたい最高の人生は何ですか?

ストーリーの語り手

中西 勇介

社会人3年目で会社を辞め、個人で起業する。
ウェブメディア運営で場所、時間にとらわれず安定して収益を稼ぐ仕組みを確立。
バンコクに移住して1年が経ちました。
自分の創りたい世界へ向けて、日々コツコツ進んでいます。

公式サイト:
Co-creator(https://co-creator.jp

Facebook:
https://www.facebook.com/cocreatorjp

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