はじまりの、おわり(3)


いつか、ふたりで会いたいね

ゆっくり話がしたいね
温泉でくつろいで癒されたいね
なにか美味しいもの、食べに行きたいね

そんな言葉が普通にあり


お互いに、美しく撮れた
セルフポートレート

セミヌードだったり
局部は見えないように
上手く隠して撮れた芸術的な一枚を

送り合うように、なっても


わたしは、やましい事はない

だって、指一本、触れ合ってないから


こんなことを本気で、真面目に

言い訳、出来ていた



まだ大丈夫、肉体的に一線は越えてない

まだ大丈夫、これくらいなら
まだ、もうちょっと、ギリギリまで
近付けるところまで、行けるところまで、

この線を、越えないように、、

つま先立ちで必死に踏ん張り
土俵際に残るかのように、、


二人の間にあったのは
そんな言葉で抑えつけた

どうにもならないほどの、性欲、愛欲

触れ合いたい、見たい、繋がりたい

だったと思う



抑えきれないのは、当人達が
いちばんわかっていて


持て余すほどの、エネルギーが
半径1メートル以内の距離にいると

熱いくらい
溢れかえっている

ふとした時に狭い場所ですれ違うなど

思わず身体が近くにある時

大袈裟ではなく本当に
 
引き合う引力に、抗う力を
わざわざ、発揮しないと

くっついてしまいそうで

なんなんだろう、これは、と


それはきっと私だけの一方的な感覚ではなく

お互い、同時に、感じていたのだと思う

仕事の合間、行き帰り道、
休みの日、寝る前、寝起き、、

気を抜いて、ひとりの世界に没頭出来る時は

常に彼が私の中に居て
彼の中に私が居た、だろう

私が性的な妄想をする時は
おそらく彼にも体感があり
彼が妄想する時は、逆もまた然り


イマジネーションだけで、性的な快感が

体の中を走る

イクことをよく知らない私の体なのに


彼のエネルギーが体の中を走る時

快感が、脳裏まで突き抜け

動悸が高鳴り、呼吸は早まり

腰が自然に震える程で
子宮も膣も、震えていた

自分の体にも触れていなにのに

想像だけで、こんなに気持ちいいなら

体を重ねたら、どんな事になるんだろう


そればかりが、私を埋めつくし

すごいなわたし
すごい想像力だなと
呆れて笑えるくらいだ



いい加減、そろそろ会おう、

会いたいな。と


かなりの、プライドを捨てて言ってみても



俺たち、会ったらバレると思うんだよね、、


という、彼の言葉に、すべては
うやむやに、流されていた


そうね、これだけ、ウキウキを隠せず
一線を越えなくても、これなんだから

もし、越えたら、、

想像するだけで、怖いのは
抑えつけているものの大きさを
わたしも彼もわかっていて

これは、蓋を開けたら
元の生活には戻れないだろう、、という怖れ


パンドラの箱のようだ



俺が異動になったら、ふたりで会おう


はいはい、わかった
もうそれ、まったく信じられないわ
会う会う詐欺って呼ぶわ、と

ふざけてみたところで

はははと笑うだけで、否定も肯定もしない。


保身、なんだよね
ここでバレたら、社会的に支障があるから

あなたの人生の余白の中で、
どうにかこっそり
いいとこ取りだけ、楽しめればいいのね、、

出世もしなきゃいけないし
立場的に、女遊びのイメージは致命傷だし
結婚を控えてる恋人もいるしね。


いかにも、とも思える、社会的な理由

苛立ちと、なんなのそれと言う呆れと

その煮えきらなさに、


どうせ、私のことは
片手間に遊べたらいいなくらいの
所詮、セ フ レ 目的なのよね、

こんな、取り柄もない
ただのパートの女ひとりに
人生潰されたくはないわよね

どうせ、私なんか、、


醜い感情がドロドロと
相手のことを批判して


意気地無しのクセに
人妻に手を出そうなんて
どんだけ、エロだけなの、
能天気な、いい加減な
甘ちゃんなんだなー!
私はこんなに苦しいのに!
家庭がありながら こんな思いに身をよじるのは
苦しくてたまらないのに!!

これでもかこれでもか

自分も相手も否定し始めたらキリがない


会いたいけど会わない
でも、キレイに撮れたら写真送ろう

それまでの私の中の

エロいだけの女だと思われたくない
ただの遊びじゃない本気の恋をしたい

そんなちっぽけなプライドも

知りたくてたまらないんだ

そんな言葉で

あっという間に剥がされて

恥ずかしい欲望だけが剥き出しになる


あなたが求めるから、そうするのよ

本当は、こんな女じゃないのに
あなたが求めるから、喜ばせるために

だから本気で私を大事にしてよ


自分だって一歩も動けないのに、
家庭から離れるつもりはないのに

欲しがってばかりの

ぜんぶ人のせいの、醜い、私



この恋が楽しいのか、苦しいのか、

それすらも、わからないくらい

彼と向き合うと、自分が正気ではいられない

それまで必死に保ってきた
プライドという仮面が、保てない

立っていられない、苦しい

どんなに自分を脱ぎ捨てて 
醜さがドロドロ出てきたって

抱きしめてもくれないし、
社会的なプライドを捨てることもしてくれない

もうやだ、やめたい 
なのに、壊れそうなくらい
彼を求めていて

気づくと片手にいつもスマホ

夫の居ない夜は
ずっと彼の写真を眺め

交わした短い言葉を暗記するほど読み返し
言葉の裏側になにか
なにか、もっと、あるんじゃないか、、

慰めても相変わらず不感症の体を持て余し

狂おしいほど抱かれたくて

そんな自分を持て余し
苦しいのに泣くに泣けない


ただ、触れたくて、

暴れたいくらいに、相手を求める

内側から猛り狂うような欲求を

抑えることだけに、生きるエネルギーを
費やしていた




そんななか、ある日曜日


この日が、この婚姻生活の中で
苦しみを抱えながらも、

まだ平和な、穏やかな、最後の一日

そして
ひたすら深い暗い闇のような穴の中へ
沈んでいく、はじまりの一日




家族で何でもない休日を過ごしていた
夕方


夫が私のスマホを片手に

印籠をかざす、あのシーンのように

私の目の前に現れ



これ、何?

お前の様子がおかしいと思ってたら

やっぱり男、いたんだな






彼の、裸の写真が映し出された

スマホの画面を凝視しながら


すべての音が止まり
感情も思考も止まり


動くことも、奪うことも出来ず


立ち尽くした


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